コンサルタントの視点 「品質企画・戦略機能の強化のための組織づくりとは?」
JMAC第2回「品質保証実態調査」(2013年)によると、品質保証部門の業務に占める品質保証企画関連業務の比率が第1回調査(2009年)に比べ、微増傾向にあることがわかった。
実際のコンサルティングの場面においても、品質ビジョンや品質中期計画、品質KPIの策定など、企画・戦略業務に関するコンサルティングのニーズは高まっているように思う。
しかしながら、品質保証部門の中には依然として、検査やクレーム対応といった業務に日々、追われているところも多い。
組織名称は「品質企画部門」、組織の重要な機能は企画・戦略機能と謳っている場合であっても、その実態は品質保証部門の庶務担当であることも珍しくない。
企画・戦略業務とは自社の目指したい品質のあり方を明確にし、その実現に向けた戦略、計画、施策を立てることである。
従って、経営層の想いだけでなく、品質保証担当一人ひとりがその想いを理解し、自らの言葉で従業員に伝えられなければならない。経営層の意向のままに組織を作り、人を集めたような状況では上手く行かない。
組織体制や業務を性急に見直す前に、現行の品質保証部門が中心となり、品質に対する経営層の想いを品質ビジョンとして策定、発信することが企画・戦略業務の第一歩と考える。
策定した品質ビジョンの実現にあたり、現行の品質保証部門の体制や業務の中で対応できるかを判断し、必要であれば、組織の体制やミッション、機能、業務を見直しても遅くはない。
品質保証組織のあり方を再構築する場合、設計段階と実行段階において次のことに気をつけたい。
設計段階においては、品質ビジョンをもとに、部門のミッションや機能を再定義、明文化した上で、具体的な業務内容に落とし込む。次に、その実行のためのスキルを明確にし、その要件を満たした人材を集めたり、育てられるような環境を作る。
実行段階においては、品質保証部門以外の関係部門の協力
を得ながら、品質ビジョンの実現に向けた各部門の取組内容を企画、計画、展開する必要がある。
品質保証部門は企画・戦略の立案のみ行い、あとは関係部門にお任せといった一方的な関係では品質ビジョンを実現することは難しい。
関係部門の実行力を高めるためには、品質保証部門が現場にとってお役立ち感のある存在となり、信頼関係を築くことが鍵と考える。
例えば、品質問題が発生したとき、製造現場が要因解析や対策立案に困っていれば支援する。現場の問題解決力の向上に寄与できれば、現場の信頼感を得られることになる。
また、現場の実態や困りごとに対する理解が深まるため、さらなる品質革新に向けた、現場にとっても納得感のある企画・戦略の策定に繋げられる。皆様の会社の品質保証部門は品質ビジョンの実現に十分な組織となっているだろうか。
編集部より
今号から、「品質」を専門領域とする若手のコンサルタントの執筆もご紹介させていただくことになりました。
よろしくお願いします。
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