第11回 【荷待ち時間の短縮】朝の出荷遅れをなくし、配送トラックの出発時間を2時間早める方法とは?
調達・物流・SCM


事例企業は食品材料を扱い、主にパン屋向けに商品の配送を行っている企業である。同社では、全体の費用に対し配送費が約30%を占めていたため、効率のよい配送経路の再設計に取り組んだ。新たな運行計画は完成したものの、その運用には配送の出発時間を朝9時に設定する必要があった。
しかし、当時の倉庫現場は、この9時出発を守れる状態になかった。前日中にピッキング作業を完了できておらず、当日の朝に社員が早出して手伝っても、作業完了は午前11時までずれ込んでいた。加えて、配送当日の朝に届く注文のピッキングも、朝の作業に上乗せされていた。
早出による応援では間に合わなかったことから、本事例では朝の作業に人を足すのではなく、朝の作業そのものを減らす方針をとった。具体的には、「当日注文の前倒し」「作業改善」「前日ピッキング完了化」の三つに取り組み、配送スタート時間を2時間前倒しして出荷遅延の解消を図った。
現場で起きていた大きな問題は、配送当日の朝に届く当日注文の多さと、伝票の二重確認や仮置きの繰り返しといった庫内の重複作業によって、出庫作業に長時間を要し、前日中にピッキングが終わらなかったことである。
この作業遅延を引き起こしている要因を明らかにするため、二つの視点から実態分析を実施した。
月間の注文数、約1,600件を時間帯別に集計した結果、前日18時までに69.8%、前日20時までに79.3%の注文が集まる一方で、残りの約2割にあたる330件が当日の朝に届いていることが判明した。当日注文は前日中にピッキングできないため、そのまま朝の作業となる。この当日注文の多さが、朝のピッキング作業を圧迫する直接的な要因となっていた。
| 注文時間 | 15時まで | 18時まで | 20時まで | 翌朝 9時まで |
翌朝 11時まで |
翌朝 11時以降 |
合計 |
| 注文件数 | 511件 | 604件 | 153件 | 107件 | 163件 | 60件 | 1,600件 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 累積比率 | 32.0% | 69.8% | 79.3% | 86.0% | 96.3% | 100.0% | - |
投入工数を物量で割り、ピッキング1件当たりの作業工数を出庫・積込・入庫・事務の工程別に算出した結果、出庫作業が1件当たり42.8秒と最も大きく、投入工数全体の約4割を占めていることが明らかになった。そこで出庫作業の手順をさらに細かく分解し、現場の動きを観察したところ、二つの重複作業が見つかった。
一つは伝票確認の二重化である。棚出しと箱詰めを別々の工程としていたため、同じ伝票の確認作業が二度発生していた。
もう一つは仮置きの繰り返しである。当時は棚出しを商品別に、箱詰めを配送店舗別に行っていた。そのため、棚出しした商品を一度パレットに仮置きし、店舗別に並べ替えてから箱詰めする必要があった。仮置きは箱詰め後と運搬後にも発生しており、合計3回の仮置きとその間の運搬が、移動距離を長くしていた。
分析で明らかになった二つの要因に対し、当日注文には「当日注文の前倒し」で、庫内の重複作業には「ピッキング方式の改善」で対処した。そのうえで、前日に移った物量を前日中に処理可能かを「必要工数の検証」で確かめ、前日ピッキング完了化の人員計画を作成した。当日注文を前日に前倒しすれば朝の作業は減るが、その分の物量は前日の夕方以降に集中するため、「当日注文の前倒し」「ピッキング方式の改善」「必要工数の検証」の三つをセットで進める必要があった。
当日注文を前日に移すことが、朝の作業を減らす出発点である。ただし、注文時間の変更は顧客に注文の習慣を変えてもらう取り組みであり、顧客との窓口である営業部門を巻き込まなければ進まない。そこで、次の二つの活動を営業部門と連携して実施した。
第一に、前日注文への切り替え交渉である。営業担当者が、当日注文を出している顧客の中から前日注文に切り替えられる可能性のある顧客をリストアップし、個別に交渉を徹底した。
第二に、前日夕刻の受注コールである。営業の業務担当者が前日の夕方に顧客へ電話し、翌日分の注文内容を確認して確定させた。これにより、従来は翌朝に届いていた注文が前日夕方の時点で確定し、前日中にピッキングできる注文の件数を拡大した。
前日に移った物量を投入工数を増やさずに処理するため、前述の二つの重複作業を解消した。
一つ目は伝票確認の一本化である。棚出しと箱詰めを別々に行う手順を廃止し、同時並行で行う手順へ変更した。作業を統合したことで、二度行っていた伝票確認作業が一度で済み、確認作業の時間を約50%削減した。
二つ目は仮置き工程の廃止である。ワゴン車に配送先のグループ単位で箱をあらかじめセットし、棚出しした商品をその場で箱に入れる手順に変えた。店舗別に並べ替えるための仮置きが不要になり、パレットへの仮置きを完全に廃止した結果、運搬の移動距離を約50%短縮した。
当日注文の前倒しにより、ピッキング作業は前日の夕方から夜間に集中する。9時出発を実現するには、この物量を翌朝9時までに処理しきれる人員配置が必要である。一方で、単純に人を増やせば投入工数が膨らみ、前日作業化の費用が効果を上回りかねない。そこで、時間帯ごとに必要な工数を算出し、それに見合う人員を過不足なく配置する計画を立てた。
具体的には、算出した1件当たりの作業工数に時間帯ごとの物量を掛けて必要工数を求め、計画上の人員配置から算出した投入工数と、時間帯ごとの累計で比較した。下図のとおり、9時時点で投入工数の累計が必要工数の累計を上回り、9時までの全オーダーに対応可能であることを確認したうえで、前日ピッキング完了化へ移行した。
当日注文の前倒しと作業改善により、ピッキング作業のリードタイムが大幅に短縮され、前日ピッキング完了で朝9時の配送スタートが実現した。
また、倉庫での作業完了をトラックが待つ状態が解消され、再設計した運行計画どおりの定時運行が可能な輸送体制を確立できた。朝の作業が減ったことで、社員の早出時間も約1時間削減された。
当日注文の前倒しは自社だけでは完結せず、顧客に注文の習慣を変えてもらう必要がある。顧客への丁寧な説明が欠かせないため、物流部門の改善活動にとどめず、営業部門を巻き込んだ全社的な活動として進めることが前提となる。
また、前日作業化により作業コストが増すため、それをカバーする売上が必要となる。この取り組みを全社課題として捉え、経営陣が主導し、物流部門と営業部門が連携した協力体制を築くことが成功条件となる
本事例は、倉庫内の作業遅延に対して、当日注文の多さと伝票二重確認や仮置きといった作業手順に原因があることを明らかにし改善した事例である。当日注文を前日に前倒し、重複作業を省き、前倒しした物量を前日中に処理可能な人員計画を数字で確かめることで、配送の出発時間を計画どおりに前倒しし、トラックを倉庫で待たせない運行体制を実現できる。
自社の物流に同様の構造が当てはまると感じた場合は、まず注文が届く時間帯と庫内作業の工数を定量的に把握することが第一歩となる。
![]()
dXコンサルティング事業本部
コンサルタント
物流事業会社にて、現場管理・予実管理・配車計画作成に従事。
JMAC入社後、製造業・卸業を対象にSCM改革や倉庫診断テーマで支援している。
自立・自走できる組織へ
信頼と実績のJMACが、貴社の現状と課題をヒアリングし、解決策をご提案します。