第14回 【荷役時間の短縮】 卸売業の物流センターにおける入荷遅延を解消し現場の作業効率を高める手順とは?
調達・物流・SCM


日用雑貨や電気製品などの卸売業を営むA社では、3階建ての物流センターにて入荷作業を行っており、商品の受け入れは1階で行い、昇降機を用いて3階へ運搬した後に、検品と入庫を行う構造であった。取り扱う商品は、大量に届くものだけでなく、1つの製造業者から届く小物の複数品目も多く、これらを1つずつ手作業で確認する検査に多くの人手と時間を費やしていた。
さらに、物流センターには朝一番の時間帯に配送車両が集中する傾向があった。届く荷物の量が多すぎて一度に処理しきれず、結果として多くの車両を待たせてしまう事態が常態化していた。このように商品の確認作業や検査が遅れることで、緊急の処理が必要な商品が、当日の出荷作業に間に合わないという重大な支障をきたしていた。
そこで、受け入れ業務の生産性を高めることが急務となった。物流センター内での荷物の滞留を防ぎ、入荷から出荷までの流れをスムーズにすることで、緊急時の対応力も向上させることを目的にプロジェクトが開始された。
現場の状況を正しく把握するため、この物流センターでは工程ごとの人員配置や作業割合を調べる工程別分析と、荷物が届く時間帯ごとの量を数値化する時間帯別納入量分析を実施した。分析によって浮き彫りになった課題は、倉庫内の構造から生じる無駄な移動と、従業員の勤務体系と荷受け時間のミスマッチであった。
人員の配置を調べたところ、1階の受け入れと検収には10数名が配置されているのに対し、3階の検品と入庫には60~70名もの人員が集中していた。
そして、1階で行われている作業時間の30%が、運搬や不要な移動に占められている実態が判明した。この無駄な移動の中には、広い保管場所の中から目的の商品を歩いて探し出す時間や、受領用の伝票を出力するための情報端末が置かれた事務所まで往復する時間が含まれていた。
また、時間帯別の分析では、納入される荷物の量に極端な偏りがあることが確認された。早朝の時間帯に商品の搬入が集中していたのに対し、物流センターで働く従業員の勤務時間は午前9時から午後5時までに固定されていた。このため、最も荷物が多い早朝に受け入れを行う人員が極端に不足し、現場の処理能力を超えて車両を長時間待たせる最大の原因となっていた。
時間帯別の納入量分析グラフ
| フロア | 作業内容 | 担当人数 | 現場の課題 |
| 1階 | 受け入れ・検収 | 10数名 | 運搬や移動が全体の30%を占め、商品探索や情報端末への往復が発生している |
| 3階 | 検品・入庫 | 60-70名 | 少量で多品目の小物の確認作業に、多くの時間と人手を費やしている |
物流センター内での滞留を解消し、効率的な業務の流れを作るため、次の4つの施策を実施した。
朝一番に集中する車両を分散させるため、納入を行う製造業者ごとに物流センターへの到着時間を割り振る指定制度を導入した。これに合わせて、受け入れを担当する従業員の始業時間を早朝に変更し、時間帯ごとの荷物量に合わせた交代勤務体制を構築した。
過去の正確な納入実績を基準として、納品ミスが極めて少ない信頼できる製造業者を選定した。該当する取引先からの荷物については、全量検査を行わずにそのまま受け入れる保証検収を導入し、現場の確認作業を省略した。
単一の品目であり、荷役用の荷台であるパレット単位で入荷される大量の商品を対象に、取引先の製造業者に対して事前のラベル貼付を依頼した。この荷札に付された商品コードと数量を示す線状の識別符号をスキャナーで読み取るだけで、1階で受け入れ確認を完了させる仕組みとした。これにより、商品を3階へ運ぶことなく、1階から直接2階の保管場所へ運搬する流れを確立した。
当日中に優先して出荷すべき緊急の商品を自動的に区別できるよう、電子情報システムを改修した。受け入れ時にシステム上で即出荷と画面表示させ、該当する荷台に目立つ緊急用の荷札を貼る運用とした。これらの商品は、3階の検品場所を経由せず、1階に新設した優先出荷専用の区域へ直接運ぶ手順とした。
従来の入荷フローと平準化および簡素化された改善後の入荷フロー
4つの改善策を現場に定着させたことにより、配置人員の削減と、入荷業務の迅速化を実現することが出来た。
具体的な数値効果として、1階の受け入れおよび検収作業に必要な人員は10数名から20%程度の労働力削減を達成した。
また、3階で行われていた検品や入庫の作業人員は60~70名から10%程度の省人化を実現した。
業務運営における効果としては、緊急の出荷が必要な商品に対する対応力が向上した。
従来は作業の遅れから翌日以降に持ち越されることもあった格納作業について、当日中にすべての入荷分を完了させることが可能になった。
この成果は、国の推進するガイドラインが目標に掲げる、物流に関わる運転者の荷待ち時間の短縮や荷役等時間の短縮の方向性にも一致している。
以下に、改善前後の人員配置と得られた業務効率化の効果を示す。
| 項目 | 改善前 | 改善後 |
| 受け入れ・検収人員 | 10数名 |
20%程度削減 |
| 検品・入庫人員 | 60-70名 | 10%程度削減 |
| 緊急商品の出荷対応 | 翌日へ遅延あり | 対応時間短縮により、当日出荷が定着 |
| 入庫完了のスピード | 翌日への繰り越しあり | 当日中に全量完了 |
今回の物流改善活動を他の拠点や企業で導入し、確実に成功させるためには、以下の3点に留意する必要がある。
1点目は、取引先に対して事前に識別ラベルの貼付を依頼するなど、外部での対応に伴い一部で追加の費用が発生する点である。物流センター単体での支出増加を懸念するのではなく、受け入れ側で得られる確認作業の短縮や、人員削減による全体の便益を総合的に考慮して投資の判断を行うべきである。
2点目は、識別用のバーコードを用いた情報の照合や、緊急商品の識別をスムーズに行うために、既存の電子情報システムの変更が必須となる点である。システムの導入後に現場の作業者が混乱しないよう、あらかじめ業務の仕様を検討した上で、実務に適した使いやすい機能を設計することが求められる。
3点目は、商品の到着時間を指定することや、出荷元での事前ラベル貼付を依頼することは、取引先である製造業者との交渉が必要である点である。相手側の事情やシステムの対応状況を事前に十分調査した上で、お互いのメリットを共有しながら外部との調整を進めることが、取り組みを軌道に乗せる前提条件となる。
多層階の物流センターにおける入荷時の滞留を解消するには、車両の到着時間の分散と、手作業による検査を最小限に抑える仕組みの構築が有効である。
今回の事例では、到着時間を指定して従業員の交代勤務を導入することで早朝の混雑を平準化し、保証検収や緊急商品の優先ルート化によって、現場の不必要な移動を削減した。この取り組みを実施し、人員の効率的な配置と全量当日入庫の実現を目指してみてはいかがだろうか。
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dXコンサルティング事業本部
コンサルタント
入社以降、営業~調達、生産管理、現場の生産性向上に至るまでのサプライチェーン領域におけるコンサルティングに従事している。直近では、営業・製造・物流の各部門を横断する業務プロセス改革を支援し、間接業務の効率化とともに、現場の生産性向上を狙った改革をおこなっている。
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