第13回 【積載効率の向上】顧客別の粗利に応じた配送サービスの見直しで、配送車両の台数を抑える方法とは?
調達・物流・SCM


事例企業は食品卸会社である。これまで、営業担当者が自分の担当顧客を回りながら商品を届けるルート営業による配送を行ってきた。営業担当者は配送に時間を取られて営業活動に専念できず、配送も担当者ごとに自分の顧客だけを回る形になるため、ほとんどの営業担当者が予定より早く帰着するなど、車両の稼働にも無駄があった。そこで営業と配送を分離し、配送ルートを見直すことにした。
しかし、営業担当者に配送ルートの見直しを検討させたところ、各担当者が自分の顧客をいずれも重要顧客として定期配送ルートに組み込んだため、現状よりも多くの配送車両が必要になるという試算結果となった。
本事例では、配送車両台数の削減と、利益貢献度の大きな顧客や今後の拡販重点顧客に対するサービスの充実を目的として、顧客ごとのサービス水準の見直しに取り組んだ。
現場で起きていた大きな問題は、顧客ごとの配送頻度を決める客観的な基準がなく、利益の少ない顧客にも週3回以上の多頻度配送を行っていたことである。配送回数が多く、それに合わせた台数の配送車両を抱えていた。
配送頻度は顧客に対するサービス水準そのものであるため、どの顧客の配送頻度を見直すかは、現状の利益貢献度と今後の拡販余地を基準に判断する必要がある。そこで、まず現状の利益貢献度について、ある支店の顧客419件を対象に、粗利額の大きい順に並べて累計構成比で区分するP-Q分析を行い、粗利額のランクごとに週あたりの配送頻度を集計した。
粗利額の累計上位80%分は、わずか12%の顧客で占められていた。一方、粗利額の累計で96%から100%にあたる末端の4%分には、全体の61%にあたる257件の顧客が分布していた。つまり、顧客数の大半は利益貢献度の小さな顧客であった。
週3回以上の配送を受けている顧客は全体の56%に達していた。粗利額の大きな顧客ほど配送頻度が高いという傾向は全体として見られたものの、一部に逆転が生じていた。粗利額の累計上位80%に入る顧客の中に、週2回しか配送していない顧客が5件あり、利益貢献度に対してサービス水準が低かった。反対に、粗利額の累計で91%以降の下位の顧客の中に、週4回以上の配送を受けている顧客が73件、全体の17%あり、利益貢献度に見合わない過剰なサービスとなっていた。
二つの分析を合わせると、利益貢献度の小さな多数の顧客に週3回、4回と配送しており、配送頻度を集約する余地が大きかった。配送回数を減らせば、それに合わせて抱えていた配送車両の台数も減らせる。
しかし、どの顧客にどこまでのサービスを提供すべきかの判断は営業担当者ごとに委ねられ、現状の利益貢献度も今後の拡販余地も区別されずに、すべての顧客が重要顧客として扱われていた。このため、社内の検討だけではこの状態を是正できなかった。
前段で挙げた問題点を解決するため、顧客層別管理を実施した。配送車両の台数を減らすには配送回数の集約が必要であり、どの顧客の配送頻度を見直すかを決める基準が欠かせない。顧客層別管理は、現状の粗利額と今後の粗利拡大余地という客観的な基準で顧客を層別し、層ごとに営業と配送の対応を変える取り組みである。粗利額や拡大余地の大きい重点ユーザーには専任営業とチャーター配送で対応を手厚くし、それ以外の顧客には配送頻度を収益性に見合った水準に緩和した。
つまり、営業担当者ごとの判断で決まっていた顧客ごとの配送頻度を、顧客の収益性と成長可能性に応じた水準に組み替えた。具体的には、「顧客層別基準の作成」「重点ユーザーへのサービス水準の引き上げ」「配送頻度の適正化」の順に取り組んだ。
第一に、層別の基準を作成した。すべての顧客を、縦軸に現状の粗利額、横軸に今後の粗利拡大余地を取った図の上で、重点ユーザー、一般ユーザー、廃止候補の三つに区分した。現状の粗利額が大きい顧客と、現状の粗利額は小さくても拡大余地が大きい顧客を重点ユーザーとし、拡大余地の大きさに応じてA、B、Cの3つに分類した。現状の粗利額、拡大余地ともに小さい顧客は廃止候補とし、その中間を一般ユーザーと区分した。
第二に、区分ごとに適用する営業方針と配送方式を設定した。顧客の層別化と配送基準の仕組みは図のとおりである。
この基準を4支店の顧客1,287件に当てはめた結果、重点ユーザーは139件で全体の約1割、一般ユーザーは804件で約6割、廃止候補は269件で約2割となった。残る75件は、廃止決定、直送、対象外の顧客である。
第一に、重点ユーザーには専任の営業担当者を配置した。営業と配送を分離することで、営業担当者は配送業務に時間を取られず、拡販に向けた営業活動に専念できる。
第二に、重点ユーザーへの配送は、営業担当者が配送するのではなく配送専用の車両で届けるチャーター配送に切り替えた。拡大余地の大きい区分Aは積極的に拡販、区分Bは拡販、区分Cは現状維持と、区分ごとの営業方針も明確にした。
第一に、重点ユーザー以外の顧客には、配送頻度を収益性に見合った水準に緩和して対応した。一般ユーザーのうち、粗利拡大余地のある区分Aはルート営業を続けて拡販を図り、拡大余地の小さい区分Bはチャーター配送に切り替えて現状維持とした。配送頻度を緩和した顧客の分だけ配送回数が減り、少ない台数で配送ルートを組めるようになる。
第二に、現状の粗利額も拡大余地も小さい廃止候補は、チャーターによる効率配送に切り替えるか、配送を廃止して取引を縮小する方針とした。
上記の施策を行ったことで、配送車両の台数は17台から13台へと4台、比率にして約2割減少した。
第一に、配送回数の集約によって必要な配送車両が減った。営業担当者の判断では増加見込みだった台数を、客観的な基準に基づいて削減できた。配送する物量が大きく変わらないまま台数が減れば、1台あたりの運ぶ量は増える。配送頻度の集約は、結果として積載効率の向上にもつながる。
第二に、重点ユーザーに対する営業体制が整った。専任営業の配置により、重点ユーザーに対するきめ細やかな営業活動が行えるようになり、売上と利益の向上に向けた体制が構築できた。
粗利の少ない顧客の中にも、チェーン展開をしている顧客など、配送頻度を変更できない顧客もある。層別基準に該当するからといって機械的に配送頻度を緩和するのではなく、個々の顧客の事情を十分に調査した上で判断することが、この改善を成立させる条件である。
また、配送頻度を緩和すれば、顧客が1回に受け取る量は増え、納品の間隔も延びる。配送頻度の見直しは、配送部門の工夫だけでは実現できず、顧客との合意を前提とする。既存顧客の配送頻度を緩和する場合は、顧客に対して十分な説明とお願いを行い、承諾を得ることが重要である。必要に応じて、自社のトップが顧客を訪問し協力を依頼することも効果的である。
本事例は、顧客層別管理によって顧客ごとの配送頻度を収益性と成長可能性に応じた水準に見直し、配送回数を集約して配送車両の台数を削減した事例である。重点ユーザーには対応を手厚くし、それ以外の顧客には配送頻度を緩和することで、配送車両を4台減らしながら拡販に向けた営業体制を整えた。
これらの取り組みは、国の定める新しい物流の基準の方向性とも一致する。新しい基準では、荷主に対して「運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量を増加させること」が求められている。今回の事例のように配送回数を集約して少ない車両台数で配送をまかなうことは、結果として一回の運送で運ぶ貨物を増やすことになる。顧客ごとの利益貢献度に応じて配送頻度を見直す手法は、この積載効率の向上に関する規定の方向に沿った有効な手段である。
自社の物流に同様の構造が当てはまると感じた場合は、まず顧客ごとの粗利額と配送頻度を定量的に把握することが第一歩となる。
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dXコンサルティング事業本部
コンサルタント
物流事業会社にて、現場管理・予実管理・配車計画作成に従事。
JMAC入社後、製造業・卸業を対象にSCM改革や倉庫診断テーマで支援している。
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