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第1回 店舗別のBCPマニュアルは作成しているか?〜本部が作った「全店共通マニュアル」が、現場を危機に晒す理由〜

コラム

2026.09.01

その店舗BCPは、極限状態の現場で機能するか?

   

近年、大規模地震や風水害等の災害により犠牲となられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
日本能率協会コンサルティング(JMAC)は、総合コンサルティングファームとして多くの企業の事業継続(BCP)支援に携わってきた知見に基づき、二度と悲劇を繰り返さないための教訓を広く産業界へ共有すべく本連載を企画しました。
なお、本連載の考察や提言は店舗ビジネスにおける一般的な課題を体系化したものであり、特定の事故や企業の責任追及を目的とするものではありません。

  


9月1日の「防災の日」を前に、多くの企業で防災体制やBCP(事業継続計画)の再点検が進められている。とくにスーパーマーケット、百貨店、外食チェーンなど、店舗ビジネスを展開する企業においてBCPの策定自体は一般的なものとなった。

しかし、膨大な時間をかけて作ったBCPが「混乱の最中にある現場で本当に機能するか」、そうと問われたとき、迷いなく頷ける企業はどのくらいあるだろうか。

多くの現場で起きているのは、本部が作った全店共通の分厚いマニュアルが事務所の棚で眠り、いざ災害が起きると「一次避難」まではできても、その後の再入館や営業再開の判断で現場がパニックに陥るという事態である。

なぜ既存の店舗BCPは機能しないのか。第1回となる本コラムでは、マニュアルの「個別最適化」について考えていく。

「全店一律マニュアル」からの脱却:店舗ごとの個別最適化

チェーン本部では、作業効率や統制のために「全店共通の防災マニュアル」を作成しがちである。しかし、実際の店舗環境は一店一様だ。

立地・設備

  • 沿岸部の津波リスク
  • 地下店舗か、高層階か
  • 路面店か、大型商業施設(館)へのテナント入居か

人員構成

  • 社員常駐か、時間帯によりアルバイトのみか
  • 単発(スキマバイト)のスタッフがいるか

客層

  • 高齢者が多い地域
  • ファミリー層中心
  • 外国人観光客が多いエリアなど

全社共通マニュアルでは、こうした店舗固有のリスクや条件を吸収できない。

たとえばJMACの防災訓練では、インバウンド客が多い店舗に対して「日本語が話せない外国人客役」を設定することがある。すると現場からは、「どの言語でどう案内すべきか」「パニックで店外へ飛び出してしまうのではないか」といった具体的な課題や対応策が自発的に立ち上がる。

全社の基本方針をベースとしつつ、立地・設備・人員体制・客層に応じた「店舗ごとの個別マニュアル」へ落とし込むことが、実効性を生む第一条件である。「自店舗の避難基準」「一次待機場所」「お客様の滞在スペース」などを具体化して初めて、現場に正しい危機感と判断力が生まれる。

「現場任せ」にしない。本部の真の役割とは

ここで注意すべきは、「各店舗の個別マニュアル作成を店長任せにしない」ことである。現場の社員だけで潜在リスクを正しく評価・把握(リスクアセスメント)することは極めて困難だ。

「本部側が各店舗のリスクアセスメントを主導し、店舗特性に合わせてカスタマイズした上で現場に落とし込む」——これこそが、有事に機能するBCPを構築するための本部の重要な役割である。

次回コラムでは、営業再開までのプロセス設計について解説する

熊谷 真

経営コンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント

入社以来、マーケティングおよび営業に関するテーマを一環して支援をしている。戦略立案からマネジメント改革、業務改革、組織風土改革などを通じて、企業の再成長局面におけるトランスフォーメーションを実現することをコンセプトに、多くの企業で成果を上げている。
現在では、DX推進・DX人材育成、人事制度改革、規定等の全社ガバナンス強化、BCP等のリスクマネジメント等幅広いテーマで全社改革を支援している。

まずはお気軽にご相談ください。

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