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こくみん共済 coop

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現場の「モヤモヤ」を「意欲」に変える!
新たなCXの創出

こくみん共済

消費生活協同組合法にもとづき、厚生労働省の認可を受けて設立された協同組合。民間の生命保険会社が取り扱う商品を「保険」と呼ぶのに対し、協同組合が行う保障事業は「共済」と呼ぶ。写真は代表理事で専務理事の髙橋忠雄さん(右)と常務理事の稲村浩史さん。手にしているのは公式キャラクターのぬいぐるみ


デジタル技術の活用によってCX(顧客体験)を高める重要性は、今やさまざまな業界が認識していることだろう。商品やサービスの差別化が難しくなってきた金融・保障業界ならなおさらだ。CXに加えEX(従業員体験)視点での業務改革に着手した、こくみん共済 coop の背景に迫った。

こくみん共済 coop の課題

CX・EXの改善/DXの推進/業務品質の向上

公式キャラクター

公式キャラクター「ピットくん」(左から3番目)ファミリー。いつまでもみんなが笑顔で暮らせますようにと願いながら「あんしんのタネ」をはこぶ優しい妖精という設定

団塊世代の定年退職を経て拡大戦略での「つまづき」

 こくみん共済 coopが業務改革に取り組むことになる転換点は2009年にさかのぼる。今から14年ほど前、保有契約件数は実質的なピークを迎え、そこから低下傾向にあるからだ。

 共済の契約者、つまり生活協同組合を構成する「組合員」は全国の労働組合や事業所を通じてたすけあいの輪を広げてきた。その性質上、団塊世代の定年退職によって既契約数が減少。それを新契約では補えず微減が続いた。そこで2014年度から創立60周年の2017年度までの中期経営政策では「事業の回復」を掲げ新契約を拡大させる方向へアクセルを踏んだ。ただこの拡大戦略はうまくいったとは言い難い。

 もともと共済は、労働組合や事業所を通じて「自発的に」申し込むため、募集経費がかからないという点で一般的な保険より優位性があった。低コスト経営によって、同程度の保障内容であれば保険よりも掛金を手頃に設定できるわけだ。だが積極的に新契約を拡大するとなれば、テレビCMなど広告宣伝費や人件費といったコストがかさむ。掛金と保障のバランスでの優位性が低下し、新契約拡大どころか既契約の流出が多くなった。

 そして次の2018年度から2021年度の中期経営政策では、拡大戦略から方向転換。「既存の組合員からの信用・信頼維持に努め、組合員との絆を太くすることに力を入れてきました」と、専務理事の髙橋忠雄さんはこれまでを振り返る。

代表理事で専務理事を務める髙橋忠雄さん

代表理事で専務理事を務める髙橋忠雄さん

時代に寄り添っていない「業務品質基準」の見直し

 保有契約件数がピークだった2009年、加入手続きや共済金の支払いなどを行う業務センターを中心に効率化が求められ、業務プロセスの改善が必要になった。ここで最初の「業務品質基準」が定められた。具体的には「共済金の請求書が提出されたら3日以内に支払う」といったように業務上、最低限必要な条件として基準を設定。この基準に沿って10年にわたって業務改善を進めてきたという経緯がある。

 ただ、組合員との関係の変革が必要とされるようになり、2009年に策定された業務品質基準だけでは足りない部分、時代にそぐわない部分が出てきた。そこで2020年4月に動き出したのが「お役立ち品質基準」(下図)策定のプロジェクト。内部業務の徹底した効率化だけでなく組合員への貢献を重視し、その貢献から職員が得られる働きがいの実現も図るための基準をつくる。 

将来の事業ビジョン

 業務革新推進室長として2009年の業務品質基準の策定にあたり、今回のお役立ち品質基準策定プロジェクトも推進する常務理事の稲村浩史さんは「かつてはプロダクトアウトの視点だった」と回顧する。

常務理事の稲村浩史さん

常務理事の稲村浩史さん


 需要のピークを迎えていた2000年代はじめは、その需要量に応えることが正義。商品開発やサービスを提供するうえで市場のニーズよりも量に耐えうる企業側の理論や計画を優先させる必要があった。

 「ですが量から質への転換を図っているいま必要なのは組合員に喜んでもらうこと、加入していて良かった、窓口に行って得られるものがあったと思ってもらえる基準。置き去りになっていたマーケットインの視点が大事なのです」(髙橋さん)

波風立てて変革を起こす
反論・議論できるコンサル

 プロジェクトチームとして稲村さんの下に集められたのは、品質管理部やお役立ちDX推進部などから7人(下写真)。なかでも品質管理部次長の遠矢英俊さんは、稲村さんとともにかつての業務品質基準の策定にも携わった。

プロジェクトチーム

プロジェクトメンバーの7人。前列左から浅見聡さん、脇田智仁さん、奥野裕和さん
後列左から嘉納真代さん、遠矢英俊さん、山崎慎司さん、十河由美さん


 「かつて必死につくったものを刷新することになった当初は、会議のたびに非常に苦しい思いをしました。少しホコリをかぶっているような基準がもちろんあるし、顧客目線の大切さもわかる。ですが、自分の子どもを否定されているような気分で……」(遠矢さん)

 既存の業務品質基準をベースに、「かぶっているホコリ」を取り、今の時代において足りない部分を加え新・業務品質基準にもできた。ただお役立ちDX推進部部長の浅見聡さんは次のように感じた。

 「たとえば共済金請求のとき、紙ベースではなくウェブからの請求の場合は3日ではなく即日支払いにするなどといった形で、基準値だけを新しくすることも考えました。ですがこれでは創造はできない」

 そこで2009年の業務品質基準策定時にも依頼した、JMACに声をかけた。なぜJMACだったのか。その理由は「反論・議論できるコンサル」だからだとプロジェクトチーム全員が声をそろえる。

 「コンサルタントの多くは提案メインで、こちらが言うことに添う発言しかしないことがほとんどだと思うんです。それがJMACの場合、違うと思えば違うと言う。メンバーだけだったら波風立てずにやり過ごしたかもしれないところも、議論が活発に行われたことで変革につながった気がしています」(浅見さん)

声が届かない本部に気持ちが離れていた現場

 マーケットインの未来思考視点でお役立ち品質基準をつくるのであれば、「組合員と接している現場若手職員の声を集める必要がある」とJMACは考えた。そこでウェブアンケートを作成し現場職員に送付。回答してほしいと依頼した。稲村さんは当初、「回答はどの程度戻って来るのか。うまくいくかどうか半信半疑でした」と言う。

 それもそのはず。拡大戦略によって気持ちが離れていたのは組合員だけではなかったからだ。最前線の現場で組合員と接する職員たちもまた、「声が届かない本部」にいらだちを募らせつつ、あきらめてもいた。実際、2017年夏に旧北日本事業本部から本部に戻ってきたばかりの髙橋さんは各地の労働組合や現場の職員と触れ合い、肌でそのあきらめの感情を実感したという。

 「各地をまわり率直に思っていることを言ってもらうと、『業務品質基準に沿ってやっていると、これは変えたほうがいいのではと思うことがあるが、変えてほしいと上に申し伝えても変わらない』と言うんです。現場のパイプが詰まっているな、なんとかしたいとそのころから考えていました」(髙橋さん)

アンケートで噴出した現場職員の熱い思い

 ふたを開けてみると、1200通送付したアンケートのうち9割を超える回答があった。

 「多くても6割程度の回答が戻ってくればいいほうで、DXを推進し効率化をもっと進めてほしいといった実務的な要望が中心だろうと想定していました。回答を一つひとつ読み進めていくとそうではない。加入手続き時にもっと確認機会を増やすことで安心感を提供したい、もっと組合員を理解し組合員に合う情報を提供したい、私たちの存在価値は共済金をお支払いするところにあるといった熱い思いがあふれていました。最初は仕事だから読まなければといった感じだったのが、アンケートと真剣に向き合ったと感じられる意見ばかりで途中から読み進める手が止まらなくなってしまいました」(遠矢さん)

 現場の熱い思いが吹き出した背景にはアンケート送付だけでなく、プロジェクトメンバーが現場をまわり「パイプの詰まり」を取り除いていった影響もあったようだ。当時お役立ちDX推進部次長で現在、事業推進統括部部長の脇田智仁さんは言う。

 「組合員目線でつくり変えたいと話をし始めると、現場職員の目の色が変わるのがわかりました。ぜひやってほしいという期待感をものすごく感じましたね。本部はその気持ちを受け止めます、新しい品質基準はみなさんがつくり上げるものなんですよと話しました」

 こうしてボトムアップで「実感いただきたいCXの重点取り組み」が99項目にまとめられた。たとえば「手続き前におよそ受け取れる共済金額がわかり、心づもりができて安心した」「事故直後や万一の際、不安になったときに緊張感を和らげてくれて、冷静な判断ができた」「地域で信頼できる業者などの情報提供をもらい、第一歩を安心して踏み出せた」など、とくに共済金請求の場面は詳細に書き込まれている。

 「99項目というのが、現場の声を積み上げてつくった証ですね。トップダウンならキリがいい100にしたかもしれません(笑)。現場の本気の言葉を引き出せた背景には、JMACのアンケートのつくり方にも仕掛けがありました。意見を出してほしいと問いかけるのではなく、感動体験を軸に質問を投げかけているんです。東日本大震災はじめ熊本地震や豪雨による被災などの支払い場面でのお役立ち体験を書いている人がたいへん多くいました。共済金請求の場面の重点項目が多くなっているのは必然です」(浅見さん)

 現場職員へのアンケートで、こくみん共済 coopのお役立ち品質基準プロジェクトは本格始動したばかり。これから本丸のCX調査・分析に入っていく(下図)。組合員に近い現場だけでなく、さまざまな業務のなかでCXの本質を理解してもらい変革を促すのはかなり大きなチャレンジだ。

将来の事業ビジョン

 「2022〜25年度の中期経営政策では、デジタル技術を取り入れた新しいたすけあいを創造・実践すると掲げています。この実現にお役立ち品質基準が大きく貢献するよう取り組んでいきます」(髙橋さん)


担当コンサルタントからのひと言

江渡康裕(えと やすひろ)
シニア・コンサルタント

CXという言葉を使う企業は多いものの、具体的に「CXのあり方」を描いている企業は限られているなか、業務品質からCXへの転換を決めた経営層、その意思決定を引き出したプロジェクトチームの取り組みは注目に値します。「議論ができるコンサルタント」との評価をいただいていますが、「専門家任せにしない、明確な意図と高い意欲を持つプロジェクトメンバー」が私たちコンサルタントチームの力を引き出したと考えています。今後もいただいたコンサルティングの機会を活かし、大胆かつ着実な変革の支援をしていきます。


※本稿はJMAC発行の『Business Insights』76号からの転載です。
※社名、役職名などは発行当時のものです。

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1991年に日本にCS経営を紹介・普及した草分けとして顧客満足を軸とした経営改革、事業競争力強化を実現します。顧客価値の創造、顧客との価値共創に向けて、徹底した顧客インサイト通じてB to C、B to B問わず、「らしさ」あふれるCXづくりの実現を支援します。マーケティングやCSは「明るく前向き」なテーマであり、多様性に富むコンサルタントチームが柔軟かつ着実なアプローチで取り組みの活性化を図ります。

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