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第84回 「営業マネージャーの会議リードの仕方(2) ~討議とトラブル脱出策~」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

討議の進め方

1.プレゼンテーションの仕方
討議を始めるにあたって、まず最初に行うべきことは、参加全員の会議に臨む気構えを揃えることです。そのために、1.会議の目的、2.議事と進め方、3.議事内容 を説明しておきます。
「情報徹底会議」では、メンバーに伝えるべき情報そのものに関する説明になりますが、その場合も、この情報伝達で期待していること(情報の背景)を説明してから、内容に移ります。そして、情報内容は、5W1Hの角度から構造的な説明を行います。 「討議決定会議」では、目的(なぜこの討議が必要なのか)と方法(討議の視点や範囲、討議ステップ、時間配分など)について、説明しておきます。

2.質問の仕方
メンバーに疑問点を出させ、相互の意見交換を活発にするために、質問をうまくすることが大切です。質問する時には、次のようなことに注意します。

・質問は一度に一つ
 ・・・あれもこれもでは、質問された方が戸惑う

・質問は手短に
 ・・・ダラダラ質問はダラダラ回答のもと。質問する方も要点を整理して、わかりやすく行う

・キーフレーズを織り込んで
 ・・・意見・考えを求めるのか、情報提供を求めるのか、質問を求めるのかをはっきりして、相手に示す

・状況に応じた質問を
 ・・・討議が今どういう状況にあるのかをつかんで、以下のように質問の仕方を変える

 a.全体質問 (全員に向かって投げかける質問)
  ・誰かが発言するまで、少なくとも1分間は待つ
  ・微笑みながら一人ひとりを見回して、発言を促す

 b.指名質問 (発言促進をねらって、誰かを指名する質問)
  ・討議の効率を高めるのに効果的
  ・無差別に指名するのでは逆効果
  ・有効な発言をしてくれそうな人と、事前に打ち合わせておくことも必要

 c.リレー質問 (発言者の意見を他メンバーにつないでいく質問)
  ・討議を活発にする方法として最適  (例)「Aさん、Bさんの意見についてどう思いますか」
  ・討議のポイントがずれないように注意し、ひと段落したら中間まとめをする

3.発言促進の仕方
討議メンバーの中には、発言の少ない人も見受けられます。このような人に発言を促すことも、会議リーダーの重要な役割です。 発言が少ない原因として、1.緊張している、2.無口で内気な性格、3.リーダーや討議そのものに不信感をもっている、4.討議内容が理解できない、などが考えられます。このような人に対しては、それぞれ対処法を考える必要があります。

・緊張している人には、発言しやすい雰囲気づくりを
 ・・・会議に入る前に雑談や冗談を言って、和やかな雰囲気を
 ・・・発言してもらうように、事前に頼んでおく
 ・・・会議リーダーは、明るく好意的な態度で、全員に話しかける

・無口な人、内気な人には、指名質問を
 ・・・無口な人、内気な人には、「他の人が気づかない良い意見」の持ち主が多いので、指名質問をして気長に待つ

・不信感を持つ人には、会議後個別にじっくりと
 ・・・不信感を持っている人は、当面そっとして様子を見、何が不満なのか推測する。冗談など言ったときに笑ったら、指名質問して意見を聞く
 ・・・本質的な不信感を持っている人には、会議終了後1対1で、じっくり話をすることが必要

4.結論のまとめ方
討議により発言が出つくしたら、リーダーは会議の結論をまとめます。

・結論は、できるだけ短く簡潔に
・課題に対する解決策は、行動に結びつける「誰が、何を、いつまでに」が入っているかチェックし、メンバー全員に確認する

会議トラブルから脱出するには

1.ダラダラ発言脱出策
討議メンバーの長時間発言は、ねらいを曖昧にさせ、場をシラケさせます。会議の生産性を阻害しかねません。1回の発言は、1分以内、長くても3分以内にするよう、討議を始める前に確認しておきます。しかし、リーダーとして、「もうわかりました。そろそろ切り上げてください」という発言をするのは極力避け、他の対策を考え実行する必要があります。

【脱出策1】 長時間発言の型を見極める
長時間発言と言っても、意識的に行っている場合と、無意識に行っている場合とでは、対処の仕方が違ってきます。発言者がどちらのタイプか、よく見極める必要があります。
・意識型・・・自分の考えを主張したい、他人に注目されたい など
・無意識型・・・修飾語が多く間延びする、自分の発言に陶酔し例え話が多い など

【脱出策2‐(1)】 意識型対策
こういう人に対しては、潜在的に会議を自説主張の場と考えている人が多いので、はっきりと「途中で失礼ですが、手短にお願いします」と指摘します。

【脱出策2‐(2)】 無意識型対策
こういうタイプは、本人は一生懸命なのですが、考えがまとまらない人が多いので、ホワイトボードなどに要点を書くのを手伝うとよいでしょう。そして、本筋から外れた話が多くなったら、やんわりと釘をさし、「途中ですが、Aさんに何かご意見はありませんか」と言って、他の人に移します。

2.感情的反対論脱出策
討議が熱を帯びてくると、メンバーの中には、感情的になって反対する人も出てきます。そのような時に、リーダーも同じように感情論で発言をすると、ますます会議の場が混乱してしまいます。常に、冷静な気持ちで対することが必要です。以下の対処法を活用して、脱出を図ってください。

・肯定法・・・「その通りですね。だから、こうすれば必ず・・・・」
・否定法・・・「まあ、そうおっしゃいますが、ひとつよろしくお願いいたします・・・・」
・黙殺法・・・「アハハハ・・・・・、ところで、話が違いますが・・・・」
・質問法・・・「失礼ですが、なぜそう思われるのか説明してください・・・」
・立証法・・・質問で説明、例え話で説得

3.反対論の基本的態度
感情論以外の反対論が出た時は、議題の本筋に対する反対論なのか、枝葉末節のことなのかを判断し、区別して対処する必要があります。枝葉末節の問題に対する反対論の場合は、棚上げにし、「その問題については、別の機会にまわしましょう」と言って、本論にもどします。しかし、本題に関する反対論の場合は、たとえ結果が出かかっていたとしても、再度討議にかけることも検討してみます。その時は、メンバーに提案として投げかけてみましょう。

(シニア・コンサルタント 笠井 和弥)

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