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第45回 「CS(Customer Satisfaction 顧客満足)の基本的考え方とこれからの方向③」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

CS向上活動 は、自社の商品・サービスを提供すべき顧客を明確にし、その顧客の求める価値を発見し、提供 可能な体制に改める活動です。

そのため企業の仕事のスタイルを以下のように改めることが重要です。

① 顧客側から徹底的に仕事を見直し、改善・改革を行う。

② 顧客の声・評価(満足度)を踏まえCS向上課題を設定し、解決に向けた取組み活動を実践する。
その結果を改めて評価していただくという顧客とのコミュニケーションサイクルを採り入れながら継続する。

③ 一部の担当者や部署だけで推進されるものではなく、トップから第一線まで部門を越えた組織的な活動を 展開する。

ただ単に、アンケート調査を行い、顧客の評価傾向を把握し、個別部門や第一線部門によって取組むという活動は、CS 活動ではありません。
定期的に顧客と対話の機会を持ち、顧客の声に対する応えをどの部門・担当が推進して いくのかを明確にしなければなりません。
まだまだ、CSを単なる"お題目活動"、手段として理解し、「やった ふりを」している企業が多いのです。
CS活動は、マーケティング活動そのものであり、企業経営の考え方です。
この点でモデルとなるソフトバンクの取組みを紹介します。

孫社長は、Twitterを活用し、顧客の声を企業がどう理解したのか社長自らの声として発信することで見える ようにしています。
また、顧客の方からも孫社長が言ったことがどう理解されたのかを分かるようにしています。

CSを体質化するために

① 演出により、マインドの定着化を図る

CSは、すぐに効果が現れない取組みなので、全社員の意識が長続きするような働きかけや演出が必要です。
特にトップの考え方と発言・行動が重要なポイントです。
シティリゾートホテルとして特徴のあるフォーシーズンズホテルは、あらゆる場面を取り上げ、トップ自ら CSにつながる活動を行った社員を「褒める」ことでトップの関心を過剰なくらいに示しています。

② 仕掛け、教育トレーニングで対応力強化を図る

【ジョンソンの"Delighters(=お客さまを喜ばせる人)宣言"】
コールセンターのオペレーター一人ひとりが日頃、お客さまを喜ばせるために、「こういうことを考えています」 「こういうことをやるようにしています」など、努力事項を書くことで意識づけを図っています。
この取り組みは、社員が自分で考え、人に見せて発信することで、自ずと意識する仕掛けになっています。
また、顧客の社員に対する印象が、身振り、声の質や言葉の調子などで左右されるとのデータから、社員教育を 通じ、接客時のお辞儀の角度や立ち居振る舞い、声のトーンまで指導しています。

【千葉夷隅ゴルフクラブの連携対応】
房総半島の奥にあり、他のゴルフ場と比較すると立地・アクセスの優位性が低いハンディキャップを組織的な 顧客対応力で他ゴルフ場にない差別化を図っています。
ゴルフコースを回る顧客に対し、キャディが昼食の感想を尋ね、「あまり美味しくなかったよ」など低評価の場合 は、食堂にその情報を流し、顧客が精算する際、受付窓口担当者がお詫びする仕掛けを導入しています。
コースはキャディ、食堂は食堂スタッフ、窓口は受付担当者はというように、1日のあらゆる顧客接点で評価を 確認し、それを共有し、即座に対応する仕組みをつくっているのです。

③ モニタリングによるチェック体制を確立する

顧客評価を定期的にチェックし、即座に対応していくモニタリング制度を確立しておく必要があります。
上記のような取組みにより社員のモチベーションを高める働きかけ、仕組みづくりをしていかないと、顧客は 満足したけれど、社員の方は、ただ疲れてしまったという状態になってしまいます。

CSの新しい方向

CSを、企業の中に体質化させるだけでなく、成果を実感するためには、以下のような点に留意をすることが 重要となります。

① 業績へのインパクトを考える

顧客満足度に大きく影響することを着実に実践することが大事なことは言うまでもありませんが、顧客満足度に貢献する要素の中で、自社の業績への反映度合いは同じではありません。

下図の自動車ディーラーの整備の例で見ると、代車提供や車両の引取・納車は、顧客の満足度は高いが、自社業績への 直接貢献度はそれほど高くありません。
一方、整備時間の短縮は、顧客満足度も高く、業績向上にも直結して います。
どうすれば顧客満足度だけでなく業績貢献にも繋がる取組みになるか分析し、打ち手を考える必要が あります。
(下図参照)

mk45_1.jpg

② 顧客を区分し、資源配分にメリハリをつける

全ての顧客を満足させることは難しいことです。
誰に満足していただきたいのかを見定め商品やサービスを提供 することが重要です。
顧客をマスで捉えるのではなく、核とすべき顧客に焦点を当て、各顧客の意思決定構造 などもきちんと押さえた上で、個別にCSCS向上要因を掘り下げる体制を構築すべきです。

③ コア・ニーズとフリンジ・ニーズを見極める:

顧客満足を獲得するため、顧客が最低限求めるコア・ニーズは何かを見極めておくことが重要です。
このニーズを満たさないと確実に顧客が自社から離脱してしまいます。
ただ、コア・ニーズが提供できていれば 顧客満足を獲得できるわけではありません。

そこで、コア・ニーズにプラスしたニーズのうち他商品・サービス と差がつくフリンジ・ニーズに着目し、それを満たすことが重要です。
例えば、加工食品など一般消費財では、商品の品質、価格などはコア・ニーズであり、それを徹底的に満たす ことが不可欠です。
しかし、それだけでは顧客満足は得られず、商品調理情報や健康情報の提供度合いにより 満足度が左右されるのです。
二度とその店は利用しないでしょう。文句さえ言わないという最悪の評価を示します。

④ 提供すべきサービスレベルを定量的に設定する。

満足度は、相対的に評価されるため、常に、競合商品・サービスとどの程度まで差別化しなければいけないのかを見定めることが必要です。また、提供するサービスレベルを維持するためには、費用がかかります。 提供レベルが過剰にならないよう核顧客毎にどこまでを目指すのかを明確にしておくことです。

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