サプライヤー戦略再構築のすすめ
調達・物流・SCM


2026年最初のコラムとして、「サバイバル」とは少々大げさかもしれないが、製造業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)やAIに関する取り組みはタイミングを逃すと大きなハンディキャップとなるのでは?と昨今思うことが多い。そのような思いから新春コラムとしてこのワードを使わせていただいた。
我々は多くの会社を訪問する特性がある仕事であるが、DXやAI活用について、投資差や運用差が2025年中盤から大きくなってきたように感じる。
「DX」という言葉が叫ばれて久しいが、多くの現場ではまだ「紙の書類をデジタル化した」「データをグラフで見られるようにした」といういわゆる「見える化」の段階に留まっていることは多い。加えて、「見える」ことは良いことであるが、「見えるだけ」の会社も散見される。
見えたあと、どのように改善するか、再発防止するか、それを月次から週次へ、そして日次、時々刻々という短い周期で早めに手を打ち、製造ラインやサプライチェーンで言えば、モノの流れを清流化し、在庫・滞留のないオペレーションを築き、資本効率を良化させて結果コストを下げるということを狙っていたはずである。
この事例では、いくつかの問題が存在するが組織の問題解決力や意思決定構造・各関連部門や個人の問題解決力などが機能せず発生していることが多い。これが先に述べた「運用差」である。これは、従業員である「人」の問題を解決するという改善する力が備わっているか?という会社組織としての自力の差がある。日常からデータや現状を見ながら改善している能力やそれが常態化していれば、DXの成果も創出しやすい。
一方でその能力が備わっていないと問題が見えるようになったが解決できない問題が在庫となり・停滞するという「見えるだけ」という状態になってしまう。これを考えると日ごろから改善や常態化している会社がDXでは結果的に大きな効果を生むことになると考える。
そういう観点みると、従業員が自主改善を行う日系企業がDXによるオペレーションレベルの改善は勝機となり継続的に競争領域とみている(DX→AI→自律的良化の時代までの当面は)。
また、AIに関して言えば、かつて現場でトラブルが起きればベテランマネージャーが「経験と勘」で指示を出し、物流が止まれば担当者が電話を掛けまくって調整していた。それの試行段階でありながら、調整後プランA・B・CがAIで出してくる。
あとは人間がどのような方針で最終選択するかという段階の会社も存在する。また、エンジニアリングチェーンにおいては、設計→生産という領域で3Dデータ(3次元モデル)から、通常Assy図(組立図)作成⇒部品展開を行い、2Dの部品図面を描き製作というところであるが、3DデータからAIを活用し、一気に部品図作図(一部公差などは人にて確認→その後、学習)を開発中の会社もある。
これが先の述べた「投資差」ということと考える。この投資差がなぜ起こるか?という個人的な見解としては、その事業や業務に関しての「将来像」や「世界観」を構築されていないことが共通項のように考える。経営層や上級管理職が将来どのような業務に変えていきたいか?当然、競合や環境変化を鑑みつつ検討していくことが大切であるが100%の正解はない。しかしながら、仮説先行そして目利きの力で将来を創ることが大切と考える。
2026年は私見ながら、勝ち筋ある新しい製造業の姿へある意味では再定義し、その実現準備をしっかり行っていく年とすることを勧めたい。
日本の製造業の強さは、力が落ちてきたとは言われつつも「人」だと考える。人が思考し改善、製品や業務のあり方をアーキテクチャから考える等々、生産現場から技術・研究スタッフまで、且つ組織を跨ぎ部門横断で知恵を出していくこと(社内の人的組織的知財活用)、この強さを活かしつつ、DXとAIを業務プロセスの中において、自然に高速回転で活用する世界を自分事として構想・設計していくことが大切と考える。
例えば、エンジニアリングチェーンで大まかに考えた場合、以下の活用が想定される。
先々はデータを用いながら、自律的なプロセスが進むようコグニティブ(自律型)プロセスやチェーンとなり、その仕組みのレベルアップやジャッジと創造を人が行うような知価業務にシフトすることが一つの目指す姿ではなかろうか。
同様のことは、サプライチェーンや工場全体や生産ラインについても検討できる。プロセスで考えると検討しやすい。
など検討していくことが肝要である。ちなみに各チェーンの考え方は、「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン(SMDガイドライン)」も参考になる(製造業のスマート化・デジタル化の促進を目的にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)・経済産業省から弊社で受託している(無料でダウンロード可能))。
前述した「運用差」の部分もそうであるが、こちらの構想や仕組みの向上などの課題設定できるのは人である。また、これらのプロセスにおいて問題が発生した場合も解決するのは人である(AIが手助けはしてくれるが)。
このようにAI・DXが活用されるようになり、それらを理解しつつも、もっと人はレベルの高い、課題設定や課題解決、そして問題解決が求められると考える。それを考えると人財の育成はリスキリング的な要素も含め終わることはなく企業の競争力であることは疑う余地がない。
また、「投資差」も前述したが、AIやDXに人財も含め、大胆に投資をしてはと考える。日経プライム企業の現預貯金残高は史上最高と言われ、日本企業の現預貯金残高は2013年約300兆円だったが、2023年には約900兆円とのことである。無駄な投資は良くないが未来を創る投資にはお金を張る投資上手になっていくことが今後の製造業に大切と考える。
2026年は、デジタルを単なる「掲示板」として使っている企業と、デジタルを「道具」かつ「自らの脳」として組織に統合した企業との間で、取り返しのつかない格差がつく年になるだろう。
不確実な未来を恐れる必要はない。テクノロジーを味方につけ、自律的に動く組織を作り上げたとき、その不確実性は、競合他社を引き離すための「絶好のチャンス」へと姿を変える。
大改革の道のりは険しいものだが、以下のステップが成功への筋道となる。
これらは我々JMACが伴走すべき役割でもあるが、まずは貴社内にて、この「新しい製造業の姿」を御一考いただきたいと切に願う。
未来への第一歩を、今年大きく踏みだす年ではないだろうか。
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取締役
大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業戦略・商品戦略・技術戦略・知財戦略を組合せた「マネできないものづくり戦略」を提唱し、次世代ものづくり/スマートファクトリー化推進のコンサルティングに従事している。
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