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研究開発部門のNew Normalを探る「ポスト COVID-19」調査-速報版

日本能率協会コンサルティング(JMAC)は、「研究開発部門」「技術部門」に特化した「COVID-19」の影響調査を実施しました。部門特有の影響にも注目が集まる中、企業のR&Dはどの方向へ向かうのか。まずは今の状況と今後の課題を企業のみなさまと共有できるようにアンケートを実施しました。

New Normalでは研究開発のあり方は変わると半数以上が回答、リモートワークへの準備はできていた企業が多数ありましたが、一方で実験や試作業務のリモートワークは難しい状態にあることがわかりました。以下、得られた回答の全体概要を「速報版」として公開いたします。


ポストCOVID-19に向けた研究開発部門の課題と対応(速報版)

1.COVID-19拡大前から6割以上の企業がリモートワークを準備・実施。中でも医薬系企業は一歩進んでいた

研究開発部門では、COVID-19拡大前から63.6%の企業がリモートワークについて実行段階(「試行段階」から「かなりの業務で実務展開」)にあった(図1)。

とくに医薬系企業ではCOVID-19以前からのリモートワーク準備が進んでおり、COVID-19下での出社率も他の業界より低かった(図2)。背景としては研究所と本社・工場などが分散しWEB上での会議の必然性が高いことや、グローバルな企業提携・再編などが活発だったことなどが考えられる。一方で、他業界での取り組みの遅れや課題が目立つ結果となった。

図1 COVID-19感染拡大前のリモートワークの状況(業種別)

図2 COVID-19感染拡大後の平均出社率(業種別)

2.リモートワークが難しい業務はやはり実験・評価業務。しかし実態は企業によって大きな差があった

出社が必要な業務の1位は「実験・評価業務」(92.2%)、次いで「試作業務」(66.2%)と実物を扱う業務が上位を占めた(図3)。

また試作・実験業務における実際の出社率は62.6%であったが(図2)、試作・実験業務の出社率の分布は80%~99%と40%~60%で2山のピークがあり(図4)、企業によって対応が分かれていたことがわかった。

自由回答の「取り組みの工夫」では、「中断できないものを優先して実施」、「輪番制も含めた3密防止」、「解析、報告書などは在宅にて実施」など、各企業で工夫を重ねている状況がわかった。

図3 リモートワークが難しく出社が必要な業務

図4 COVID-19感染拡大後の出社率分布(職種別)

3.リモートワークで職場への影響が大きかったのは組立系業種だった

リモートワークによる職場への影響は、影響あり(「影響はある」から「大きな影響がある」まで)の比率が全体平均で55.8%だったが、この比率は組立系では68.0%に達し最大となった(図5)。

組立系は試作・実験業務の出社比率が他の業種より高かったものの、それでも市場低迷、部品調達の停滞、現場でのソーシャルディスタンス確保などの課題により、かなりの影響が残ったと考えられる。

リモートワークによる職場への影響内容としての上位は、「業務の遅延」、「外部とのコミュニケーション」、「コミュニケーションスピード」であり、全体の約半数が該当すると答えた(図6)。

図5 現在のリモートワークによる職場への影響(業種別)

図6 現在のリモートワークによる影響内容

4.一方今回のリモートワークにより「良かった」や「良くなること」にも気づいた。企業はこれを変革のチャンスにつなげる必要がある

■リモートワークを実施して「良かったこと」「よくなる可能性があること」(自由意見)

【共通的業務について】

  • 通勤時間がなくなり時間に余裕ができた
  • 会議の数や出席者を減らしても問題なかった
  • 出張の必要性がなくなり、コスト削減が可能
  • 顧客や社外ともWEBで会議できることがわかった

【R&D業務について】

  • 報告書作成などはリモートワークの方が集中できる
  • ペーパーレスが進むとエビデンスが電子的に残る
  • 業務が複数メンバーで補完できることに気づけた
  • 学会などがWEB開催となり、情報が取れるようになった

5.今後の研究開発のあり方に半数以上が「変わる」と回答。今後の本質的課題は人づくりや組織づくり

今後の研究開発のあり方の変化としては、変わる可能性がある(「一部変わる」から「大きく変わる」まで)と回答した比率が全体の51.9%と5割を超える結果となった(図7)。変わる可能性があるとの回答が一番低かったのはプロセス系企業で、44.4%と他よりやや低かった。

出勤制限が解除された後に取り組むべき重要課題では、「会議や出張の在り方」61.0%、「新しい勤務形態のあり方」53.2%、「リモートワークの環境整備」「密にならない職場環境づくり」45.5%と勤務形態の変化があげられた一方で、「プロジェクト・業務の優先順位」48.1%、「BCP(事業継続計画)の強化」44.2%などR&D業務の内容に踏み込む項目も含まれた(図8)。組立系で最も高かったのは「プロジェクト・業務の優先順位の見直し」とプロジェクト業務そのものを見直すことが重要課題との結果となった。

今後リモートワークを効率的に進めるための課題は、出社率高群では「リモートワーク機器・インフラの整備」、次に「人事評価方法の工夫」とインフラや仕組みの整備課題であった。一方で出社率低群では「社員指導やOJT」、次に「チームの一体感醸成」と人材や組織に関する課題だった(図9)。今後本質的課題となるのは、人づくりや組織づくりの課題といえそうである。

図7 緊急事態制限解除後の研究開発のあり方の変化

図8 出勤制限解除後の職場で取り組むべき重要課題

図9 今後リモートワークを効率的に進めていくための課題(出社率水準別)

■アンケートの概要
  • 製造業のR&D部門、技術部門のマネジャーを中心に、メールにてWEBアンケートを依頼
  • 実施時期:2020年6月1日~6月11日の10日間
  • 有効回答数:77
■内容について

本アンケートに関する報告会をWEBで実施します。視聴ご希望の方、内容問い合わせについては、下記へお願いいたします。
アンケート事務局:ビジネスイノベーション本部 間野
event_consult@jmac.co.jp

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