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鬼手仏心の経営
~強さと善さの同時追求~

アルケア株式会社
代表取締役社長 鈴木 訓夫氏

1955年、アルケアは医療福祉の分野で社会貢献することを使命に創業した。以来、出発点としてきた言葉がある。鬼手仏心 ―「鬼手(右手に持ったメス)が真の仏心によって活かされるとき、仏心は鬼手によって永遠の輝きを放つ」という創業者の愛したこの言葉は、医の倫理を諭す言葉でもあり、アルケアという企業の根幹を支えてきた言葉でもある。そして、今、大きな時代の変化の中で、企業は強さ(鬼手)だけではなく良さ(仏心)が求められている。そうした企業でなければ、持続的成長はできないのではないか。

経営とは二律背反のマネージ

では、「強くて良い会社」とは、どんな会社であろうか。
1.顧客(社会)にとって良い会社、2.企業(組織)そのものとして善い会社、3.そこで働く社員(個人)にとって良い会社・・・この3つの条件が寄り合わさったとき、その会社は、社会性の高い優しさ(顧客志向)と、生産性の高い強靭さ(革新志向)、人間性豊かな感性(人間主体)を兼ね備えた「強くて良い会社」と言えるのではないか。しかし、強さと良さは必ずしも両立しない。これをいかにバランスさせるかが経営の要諦である。そもそも経営とは二律背反のマネージであり、これを超克するのが「鬼手仏心」の経営だと我々は考えている。実際、社会・企業・個人はすべてクロスしながら、バランスをとっている。量と質、効率と効果、管理と創造、機能体と共同体、私と公・・・こうしたぶつかり合いによって生じるゆらぎをいかにマネージするか。バランスを制御して、ぶれない経営を行うには、支点となる座標軸が必要となる。

ここで、仏様の姿を思い描いていただきたい。右手に持ったメス(残酷な強さ。金、利益の追求)を持ち、左手に仏心(心、人間性の追求)を持っている。このバランスをどうとるか。アメリカのブッタはどんな形をしているのか。日本のブッタの形はどうなのか。そして、自社のブッタの形はどうなのか。自分のブッタの形はどうか。それを、考えてみる。我々は、この座標軸を仏心(人のため)にミニマム51%、鬼手(自分のため)にマキシマム49%のところに置くように努めている。さらに、当社では「ベスト経営基準指標」をつくって、高付加価値で、人中心のバランスのとれた、自主・独立の経営を行うための考え方を指標に入れ込んでいる。これによって、豊かになり幸福になるのが企業ではないかと思う。

人による人のための経営

「人による人のための経営」を実現するには、組織と個人の利益ニーズを統合しなければならない。我々は総人件費を含めた業績連動型の賞与を15年間実施しており、「純限界利益」(人件費以外の固定費を除いた限界利益)という目標(付加価値のパイ)を企業と社員が共有している。そして、「明日の飯の創造」のために新規技術・市場開発に取り組む。人は、will(意志)、can(可能性)、must(責任)の3つを拡げながら、その重複領域であるアイデンティティを形成していく。我々は、このアイデンティティのベストフィットを人事の基本方針に掲げている。従来の人事システムは、組織中心であったが、個人と組織の両方を起点にしようというのが我々の考え方だ。人財力は能力とやる気の掛算で決まる。どれほど能力があってもやる気がゼロなら、人財力はゼロになる。だから、やる気の継続は人事の重要なミッションとなる。社員にとっての良い会社とは、良い報酬、良い仕事、良い仲間、良い社風があることだ。組織は人事システム、人財開発、社風開発でこれに応える。

鬼手が人を活かすなら、仏心はいのちを活かす。時代は今、いのちを活かすときに入っているのではないか。ブータンの国王は、"グロス・ナショナル・ハピネス"というメッセージを世界に発した。まさに、これが世界の企業のあり方であってほしいと思う。そんなより良い社会の大河の一滴となれればこんなに嬉しいことはない。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.36 からの転載です。

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