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「自由闊達」を経営力の基盤とする
~オープンでフラットな組織が強さを生み出す~

株式会社アルバック
代表取締役社長 諏訪 秀則氏

1952年の設立以来、アルバックは真空の極限を追求しながら、真空技術およびその周辺技術を総合利用することで、産業と科学の発展への貢献を目指してきた。半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)などの製造装置においては、最先端の製造プロセスの重要要素である製品群をつねに提供している。時代の変化とお客さまのニーズをしっかりと受容し、あらゆる産業に、最先端テクノロジーで貢献する研究開発型ソリューション企業であり続けることを目指している。それを支える基盤となっているのが、経営方針の一つとして挙げている「自由闊達な組織」である。

迅速な意思決定を生む組織風土

自由闊達とは、自由勝手ではない。当然、職務としての裁量権は決まっているし、公正で透明性の高い企業経営をよりいっそう推進するための「企業倫理行動基準」を全社員に配布し、携帯を義務付けている。その上で、われわれは、組織の中での制限をできるだけなくし、上下の距離感を極力排除しているのである。

役員室があるのは会長と社長だけで、専務以下の役員はそれぞれ担当部署に席を置き、ビジネスの現実を日々、体感している。当然、会長室も社長室もつねにオープンドアである。また、社長といえども社用車はなく、私は社員とともに毎朝バス通勤をしている。ちなみに、バスの中で私が立っていても、席を譲ろうとする社員はいない。社長も社員も同じである、上におもねることをよしとしない、そうした雰囲気があることを私はとても嬉しく思う。

営業活動報告書は、社内EメールのCCメールで、上司だけでなく社長や担当役員にまで送られてくる。報告Eメールを送らなかったことで叱責をかうことはあっても、しょうもないメール送ったことを非難されることはない。議論の場に、新入社員も出席していいし、役員と議論をかわすこともできる。実際、役員会議では、起案した担当者が出席し、説明を行う。可能な限り話を聞いて、丁寧に議論し、結論は先送りしない。大事なことは、上司が部下に対して、つねにまじめに接していくことだ。役員会議は深夜に及ぶことも少なくないが、会議のための根回しや事前準備が不要なので、プロセス全体で見ればはるかに効率がいい。

こうして日々のコミュニケーションができてくると、あらゆる意思決定が速くなる。投資、開発、商談において、クイック・デシジョンが求められることは多い。そのとき、他社より先んじることができるのは、現場と経営の距離感の近さと、日々の意思決定の中で必要な議論を尽くしているからである。

絶対に「ノー」と言わない

加えて、アルバックには、「やりません」とは言わない、という不文律がある。見積り段階では赤字になりそうな仕事でも、「できない」とは言わない。コストダウンして黒字にすることを考える。たとえ赤字であっても正当性があればゴーを出す。できそうもないことほど、大きなチャンスと捉えるのである。開発についても同様である。「やってはいけない」とは言わない。つねに前に進むように結論付け、事業として会社として許容できるなら続けていく。そうすると、やめることはほとんどなくなる。

こうした社風が評価され、2008年版「働きがいのある会社ランキング」ベスト10に選ばれた。中でも、「公正」という評価要素ではトップをいただいた。定時で帰る社員はほとんどおらず、仕事に束縛される時間は長い。福利厚生施設も充実しているわけでもない。そうした中で、働きがいを感じてくれる社員を私は誇りに思う。

FPD市場の拡大とともに、アルバックは4期連続増収増益を続け、売上は当面の目標である4000億円が視野に入ってきた。今後、太陽電池向けビジネスの伸びを見据えて、1兆円までの道筋を探し出していくのが、社長という職務にある私の役割であろうと考えている。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.28 からの転載です。

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