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経営層が見ている品質 「攻めの品質 高品質を武器に」

JQMQvol.19 201504.pdf

 JMA主催「ものづくり総合大会」 (2015年2月22日、23日)では各企業の皆様に品質についてもご講演頂いた。品質の共通メッセージは「攻めの品質 高品質を武器に」。各企業に共通した点として以下5点が挙げられる。事例もあわせて紹介したい。

(筆者は品質テーマのコーディネーションを担当しました。)

 ①品質を軸とした事業の各戦略への織り込み5/31

 自社の考える品質をわかり易く定義した上で、事業モデルに組み込み、事業競争力の根幹に位置づけている。例えば、A社は品質保証を最低限の品質保証+価値向上と定義し、その価値を考えるための組織を作り上げている。B社は品質を軸として調達戦略、サプライチェーン戦略、生産技術戦略へと展開している。

 ②品質に関する技術力そのものの向上

 A社では人間の感覚を科学的(定量化)に捉えることに努めている。これはものづくり技術そのものを向上、差別化できると思われる。B社では新機構などの考案に際し、品質工学を積極的に活用し、重要な機能因子を明確にすることにより、差別化を進めている。

 ③お客様との積極的なコミュニケーション

 A社、B社、C社では、クレームを含めたお客様からの声を積極的に把握、活用している。こうした情報はシステムの活用により、組織内で共有されている。

 ④従業員との積極的なコミュニケーション

 品質を最優先事項に位置づけ、外部、ライン部門、経営層がその事実を共有している。A社では、単なる情報共有を越え、他部署同士の協業によりNG事例集やマニュアルを整備し、それらを活用しながら、深いコミュニケーションを取っている。

 ⑤堅牢な企業文化と組織づくり

 A社では、企業理念として品質を掲げることで、最優先事項に位置づけている。B社では、理念教育を根底に置いた上で、社是社訓の中で組織の考え方や動き方を示している。これは品質方針としての役割も果たしている。C社では、経営会議の最初の検討議題に品質を置いている。

 品質は、ネガティブなことの方が定量的に把握しやすいため、組織内の管理対象として展開される傾向にある。今回の講演では、品質という概念の持っている「競争力を上げる」といった側面に注目している姿勢を強く感じた。特に、品質を軸として事業の各戦略に織り込むほか、技術力そのものを高めること、お客様や従業員とのコミュニケーションを積極的に取るといったことは経営層による旗振り、後押しが重要である。今回の講演においても、経営努力として、堅牢な企業文化を作り上げ、組織を動かしていることへの自信と強さを見て取れた。ぜひ、経営層の皆様にご検討いただきたい。            

コンサルタントプロフィール

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シニア・コンサルタント 松田 将寿

早稲田大学大学院修士課程国際法専攻修了後、1994年にJMAC入社。
製造業を中心に24年の経験(生産領域コンサルティング12年、戦略領域コンサルティング12年)を持ち、国内外(外は現地企業・大学なども含む)、大企業~中小企業など幅広く支援を行っている。
品質カテゴリーに関しては、経営・事業戦略への組込み、経営体質作り(改善・改革の骨格)として捉えて支援している他、品質マネジメントシステム、品質保証・品質管理の側面から組織・機能連携、外注戦略、業務改革なども支援している。

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