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第2回 同業種による共同物流(その1)

同業種による共同物流の問題点、物流事業者として価値を生み出すポイントをパターンごとに整理してみた。今回は以下の3パターンを概説する。

パターン1:同一企業内での共同化  情報インフラ整備がカギ

 同一企業でも事業部が異なる場合、事業部門をまたいでの共同物流が簡単に行えないことがある。たとえば、荷姿がA事業部ではパレットで、B事業部ではバラの場合、積載基準が標準化されていないと別々の車両手配となってしまう。
 また、生産物流(工場間物流)と販売物流(顧客納品物流)は、そもそも車両を手配するタイミングや管理する情報システムが異なるため、同一エリアへの輸配送であっても、やはり別手配となってしまう。
 ここに、物流事業者としての大きなチャンスが存在する。大企業では工場単位・物流センター単位で別々に配車を行っている場合が多いので、上記のような複数の出荷情報を物流事業者が上手に統合することで、実質的な共同物流を荷主に提供することが可能となる。荷主が気がつかないあるいは諦めている領域に対して、付加価値サービスを提供することは、荷主との取引を拡大・継続化するための大きな要因となる。
 このような改善に当たって重要なことは、「このエリアからの出荷を当社に全部任せてください。そうすれば輸送単価を下げられます」といった曖昧な提案ではなく、荷主の物流課題を的確に指摘したうえで、効果を定量的に試算し、その効果の配分も含めて荷主に提案することである。
 実施に当たっての阻害要因は、荷主側での出荷関連の情報インフラ未整備である。ゆえに物流事業者サイドでの事務工数が大きくなる、あるいは荷主の事業部ごとに担当を貼りつける体制が必要になることが多い。それでも総コストは下げられるかもしれないが、当然のことながら情報インフラの整備を積極的に推進することが肝要である。

パターン2:共同輸送  荷量の変化に注意

 同業種の共同物流の中でも実施のハードルがもっとも低く、以前から実施されている事例も多いのが、帰り便の融通であろう。ある荷主が関東工場から関西物流センターまでの輸送契約を行っており、その帰り便に他荷主の逆方向の輸送を紹介する、あるいは定期共同運行するといった方法である。その荷主が属する業界のサプライチェーンへの影響が比較的小さいため、最近の共同物流に関するプレスリリースの大半を占めている。しかし、荷主が相互にメリットを享受・拡大しているケースはあまり多くなく、荷主が仕掛けても発展性に乏しいというのが実態であろう。
 また、同一方面への輸送を、複数荷主が相積みするという共同輸送も存在する。この場合、荷量が安定していれば効果も出る。しか荷量が変動する場合には、かえって割高になる場合も発生する。
 いずれにしても、安定した荷量を確保したい物流事業者にとってはありがたい提案ではある。このパターンでの物流事業者の付加価値創出は、日々の量変動に対して、適切な輸送方法(貸切、従量制、路線便など)を荷主に提示できるかにある。多くの物流事業者が、「荷主とのパートナーシップ」をうたっているが、ここまで徹底した対応を行っている物流事業者は非常に少ない。

パターン3:調達輸送の共同化  査定購買・企画購買の力が必要

 同業種の共同物流で、今後伸びてくると思われるのが、調達輸送の共同化である。すでに自動車業界で広く普及しているように、購入メーカーが複数の供給メーカーに対して引取物流(ミルクラン方式)を行い、適切な中間地点で一時保管と加工・荷揃えを行い、購入メーカーの生産ラインに対して同期してキットを納入するような場合である。
 不況で販売量が増えないという状況下でメーカーが指向しているのは、徹底した在庫削減と欠品防止の相反するねらいを同時に実現することにある。そのために、生産リードタイムを極限まで短縮し、必要な原材料・部品を生産と同期して調達し、受注生産に限りなく近いものづくりを行おうとしている。受注生産に近づくほど、購入量が小ロット化し、かつラインへ同期納入させなくてはならない。これを単純に実施すると、購入単価が上昇してしまうことになる。その対応策が購入メーカーが主導する引取物流なのである。もちろん、取引ベンダーの集約もセットで進めることになる。
 引取物流を推進するときの第1の課題は、調達原価の適切な査定である。ここでのポイントは、単純に輸送コストを査定するだけではなく、荷役・保管・管理も含めたベンダー物流コストのABC的な査定を徹底的に実施することにある。さらに製造コストにまで踏み込み、ロット変更の影響度の測定と、その対応策の支援までもが必要となってくる。査定購買・企画購買の力がないと実施は難しい。
 第2の課題は、取引ベンダーを集約しても発生する物量波動への対応である。自動車業界ほどには高度な仕組みを必要としない場合、メーカーの拠点間輸送の帰り便で引取物流を行うような動きは多く出始めている。適合するルートを見いだすのは比較的簡単だが、車建て可能な物量は限定されるであろう。やはり変動に対して適切な配車計画を組む仕組みが必要となる。メーカーが本腰を入れてこのような仕組みをTMS(配車計画システム)で組むにも、そもそも輸配送はもっともアウトソーシングが進んでいるため、そのノウハウもなければ、単独で投資する余力もない。ここでも物流事業者の価値を発揮できる。エリア配送とエリア集荷(引取物流)を組み合わせ、かつそのエリアから他エリアへの幹線輸送を連結させることで最大限の効果を発揮できる。しかし、残念ながらこの領域でも統合的な配車計画システムを導入し、使いこなしている物流事業者は少ないと言わざるを得ない。このような潮流への積極的な対応を期待したい。

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