第7回 【積載効率の向上】配車システム無しで、誰もが短時間で配車計画を作成し、積載効率を高める手法とは?
調達・物流・SCM


本事例の企業は、日用雑貨や食品を毎日配送する問屋の物流部門である。
物流部門ではトラックごとの積載効率を平準化する仕組みを模索していたが、配車システムを用いた高度なシステムは非常に高額であり、投資対効果が見合わず社内承認を得ることも困難であった。そこで同社は自社内で配車ルールを構築することを決意した。
プロジェクト推進にあたっては、「積載効率の向上」と「配車時間削減」を主要KPIとして設定した。
同社の配送体制は、全体の60%が自社の固定車両、残り40%が日によって変わる庸車で構成されていた。
庸車は自社への到着時間が前後1時間程度ばらつくことが多く、事前要求と異なる車格で到着することもしばしば生じていたため、不規則に到着する庸車に対しても、到着直後に配車を決定できるルールの確立も必要であった。
現場で発生していた主な問題点は、以下の2点である。
従来は運転手ごとに担当配送エリアを完全に固定化していたため、日々の物量増減に対して柔軟な車両割り振りができていなかった。物量が多い日にはドライバーの稼働時間が上限を超えたり、不要な2回転配送が発生する一方で、物量が少ない日にはトラックの積載率が低下し、全体の積載効率を押し下げていた。
配送先住所だけでは実際の運行ルートが判別しづらい点や、システム上の住所と実際の納品先が異なるといった現場独自の事情から、配車計画の作成は熟練のベテラン担当者による手作業に依存していた。さらに、納品先の店舗からは開店前の早朝納品を求める時間指定が集中しており、ルート作成の標準化を阻んでいた。
同社では、配車ルールを見直して物量変動を吸収する仕組みを作るとともに、固定車と庸車の積込手順を時間差で分ける工夫によって問題を解決した。
自社拠点から半径10km以内の近隣エリア、および各エリア(A~H)の境界線付近にある店舗を、特定のルートに固定せずどのトラックでも柔軟に割り当て可能な調整用エリア・調整用店舗として設定した。
各ルートの溢れた荷物や庸車の車格変更が発生した際、この調整用エリア・調整用店舗の荷物を追加・除外することで、積載量の調整を可能にした。
システムを使わずに配車を標準化するため、自動判定ロジックを作成した。
作成時には、出荷先別受注量、エリア情報、距離・時間・積込・積下データなどの帳票データを利用し、以下のような基準を組み込んだ。
到着特性の違いに応じ、以下のように固定車と庸車で積込手順を分けた。
到着時間が安定しているため、前述の判定ロジックを用いて事前に配送順と予定時間を計算し、出発時間に合わせて優先的に積み込ませた。
到着前に仮スケジュールを作成しておき、トラック到着時点の車格に合わせて確定・即時積み込みを行った。庸車配車においては多少距離が離れていても満載にすることを優先とした。
どのトラックに積むかが直前まで決まらない近隣・境界エリアの荷物は、あらかじめカゴ台車等に載せて荷揃え・待機させ、どのトラックが到着しても即座に積み込める体制を整えた。
物量が多く配送しきれない荷物が生じた際、配送先が各所に点在している場合は2回転目の配送、特定エリアに1台分まとまっている場合は臨時便を手配、という運用基準を設けた。
また、ルート最適化の障壁であった納品時間の指定を緩和するため、各エリアで開店前の早朝納品を認める店舗を1箇所に限定し、その他の店舗については自社から配送可能時間枠を提示して了解を得る交渉を行った。
今回の改善により、ベテラン以外の担当者でも配車業務ができるようになり、業務の属人化解消と配車計画作成時間の短縮を達成した。
また、庸車への満載優先ルールの適用や、境界エリアの柔軟な割り振りによって積載効率が向上した。不要な臨時車手配や非効率な2回転配送が削減されたことで、直接的な運送費用の圧縮にも繋がっている。
| 評価項目 | 改善前 | 改善後 | 改善効果 |
| 配車計画の作成時間 | ベテランが長時間かけて手作業で作成 | 誰でも短時間で作成可能(標準化) | 時間短縮と標準化の実現 |
|---|---|---|---|
| 車両の平均積載率 | 物量の変動により低迷 | 平均85%超を維持 | 8から12ポイントの向上 |
同様の手法を他現場へ横展開・定着させるにあたっては、以下の3点に留意する必要がある。
配送地域を分割する際は、市や区といった行政区画で単純に分けるのではなく、実際の河川や幹線道路などの通行の障壁となる地理的境界に基づいて分割することが重要である。
その上で、早朝納品を強く要望する店舗を中心に配送地域を設定することで、時間枠遵守とルートの最適化を両立させやすくなる。
「4tトラック=最大カゴ台車24台分」のように、現場で使用するカゴ台車やパレットなどの運搬資材の形状・サイズに応じた最大積載基準を判定ロジックにあらかじめ登録しておくことで、現場で積みきれないというトラブルを物理的に防ぐことができる。
算出精度の向上のため、トラックの平均走行速度は曜日や時間帯別の渋滞状況に応じて細かく使い分ける。エリアの渋滞データを蓄積してロジックに反映させることで、配送時間の予測精度が上がり、現場での遅延や混乱を未然に防ぐことができる。
本事例では、配車システムに頼るのではなく、既存の帳票データを活用した独自の判定ロジックとバッファエリアの設定により、熟練者に依存していた配車計画の作成時間を大幅に短縮しただけでなく、積載効率の向上や不要な配送の削減による運送コスト圧縮という成果を生み出している。
「高額なシステムを導入しなければ解決できない」ではなく、どうすれば解決できるかという意識が改善に結びついた。
現場の実態に即して運用ルールを整理する本手法は、自社の配送効率を高めると同時に、ドライバーの労働時間規制や物流2024年問題といった社会的要請にも応える有効なアプローチである。システム投資金額の壁に悩む前に、まずは身近な配送エリアや運用のルール化から見直してみてはいかがだろうか。
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dXコンサルティング事業本部
コンサルタント
前職の鉄鋼商社では自動車部品メーカーへの営業活動とデリバリー業務を行い、在庫管理や物流改善を経験。JMAC入社後、物流を中心にコンサルティング支援を行い、直近では物流効率化法への対応について支援を行っている。
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