第6回 【積載効率の向上】長距離輸送で積載効率を高め、物流費を削減する方法とは?
調達・物流・SCM


事例企業は食品材料の製造と販売を行う企業である。製造拠点は関東と関西にあり、それぞれ全国の市場を東西に二分して製品を供給している。今回対象としたのは、関東の工場に隣接する物流センターから東北エリアへの輸送である。
東北エリアは、輸送距離が長く、物量が少ないため、物流費が割高になっていた。
本事例では、この東北エリアの物流構造を抜本的に見直し、既存の輸送ルートと拠点の役割を再設計することで、物流費の削減を図った。
現場で起きていた最も大きな問題は、需要の少ない地域に対して在庫拠点を細かく配置し物量を分散させていたことである。
当時、事例企業は関東の物流センターから、東北にあるA支店とB支店へそれぞれ別々の経路で製品を輸送していた。事前調査として運行効率分析と費用分析を実施した結果、車両の積載効率と重量あたりの物流費に大きなバラつきがあることが明らかになった。
具体的には、関東の物流センターからA支店へ向かう専用車両において、月の平均積載効率は約60%であった。車両の空間に大きな余裕を残したまま長距離を走る状態が定常化しており、割高な輸送費を払い続けている状態だった。
また、東北にある2つの支店の両方で在庫を保管していたことで、倉庫の保管費が二重に発生していた。物量が分散することは輸送車両の確保を困難にし、積載効率の低迷を招く根本的な原因となる。
前段で挙げた問題点を解決するため、各拠点の役割を見直し、拠点を統合して輸送ネットワークの全体像を再構築した。
具体的には、関東の物流センターからA支店への直送を廃止し、B支店に集約することで積載効率を最大化した。集約された荷物のうちA支店向けのものは、B支店からA支店への輸送経路で運ぶというものである。このように物量と拠点を一箇所に集約することで積載効率のバラつきを解消し、物流費の最適化を行った。
在庫の集約はサービス水準の低下と隣り合わせである。A支店から在庫をなくす以上、顧客への納期を維持する仕組みをあわせて組み込まなければ、この改善は成立しない。
本事例では、幹線輸送と地域配送の同期化により顧客へのサービス水準を維持しながら、在庫集約による積載効率の向上と物流費の削減を行った。
具体的な取り組みは以下の3つである。
A支店が持っていた在庫機能をB支店へ統合した。従来は2つの支店に分散していた在庫を1つの支店に集約した。既存のA支店は倉庫と事務所の切り離しが難しかったため、事務所を近隣の賃貸物件へ移転し、B支店からの便を受け入れるための積替え専用の空間を確保した。B支店の倉庫は、ロケーションの見直しと在庫基準の再設定により、増加する物量を受け入れられる状態を整えた。
B支店からA支店へ向かう新しい輸送ネットワークの構築を行った。改善案を組み立てるための選択肢として、他の物流事業者の運行状況や経路情報を集める運行ネットワーク情報収集を実施した。その結果をもとに、他社の荷物を運んでB支店から関東方面へ戻る車両の帰り便を活用し、B支店からA支店への新しい輸送経路を確立した。
在庫を持たないA支店で納期を維持する役割を担うのが、幹線輸送と地域配送の同期化である。A支店では、B支店からの輸送便の到着時刻に合わせて地域配送の出発時刻を設定する仕組みを導入した。
輸送便の到着直後に荷物を小型の配送車へ積み替えるクロスドッキング方式により、在庫を持たずに商品を届ける体制を実現した。
関東の物流センターからB支店への物量集約化による運賃料率の見直しをした。
A支店へ直送していた物量がB支店行きに加算されたことで、幹線輸送の量が大幅に増加した。この輸送実績をもとに運送会社と交渉を行い、より有利な料率への見直しを実施した。
さらに、混載便の契約から専用車両による輸送へ切り替え、積載効率をさらに高めることによる輸送費の削減も検討している。
これらの取り組みは、国の定める新しい物流の基準の方向性とも一致する。新しい基準では、荷主に対して「運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量を増加させること」が求められている。今回の事例のように、拠点機能を見直して物量を集約する手法は、この積載効率の向上等に関する規定を満たす有効な手段である。
上記の施策を行ったことで拠点機能の重複と積載効率の低迷が解消し、保管費と輸送費の両面で確実な削減効果が出た。
A支店の倉庫機能を廃止して施設を移転したことにより、年間の保管費を大幅に削減できた。
関東の物流センターからB支店への物量を集約した結果、まとまった荷物を安定して供給できるようになり、運送会社との交渉を通じて運賃料率を引き下げることに成功した。B支店からA支店への横持ち輸送費が発生したものの、A支店の倉庫機能廃止による保管費の削減がこれを上回り、東北エリア全体の物流費は低下した。
| 改善項目 | 従来の手法 | 改善後の手法 | 効果の要因 |
| 在庫拠点 | A支店とB支店の二箇所に分散 | B支店の一箇所へ在庫を集約 | 倉庫機能の廃止と拠点役割の再定義 |
|---|---|---|---|
| 幹線輸送 | 関東からA支店およびB支店へ個別に輸送 | 関東からB支店へ物量をまとめて一括輸送 | 物量集約による積載効率の向上 |
| 輸送運賃 | 積載空間に空きが多く割高な状態 | 有利な料率での契約へ見直し | まとまった輸送実績を条件とした運賃交渉 |
| 地域配送 | A支店の倉庫から個別に商品を出荷 | B支店からの到着に合わせて小型車へ即座に積替え | 他社車両の帰り便の活用と配送作業の同期 |
A支店向けの物量が加わって幹線輸送の量が増えたことで、運送会社から定期的な輸送便の確保が容易になった。補充のタイミングが安定した結果、B支店で保有する安全在庫を減らすことにも成功している。
A支店から在庫をなくし、すべての荷物をB支店経由で供給する体制へ変更することは、受注から納品までのリードタイムが延びるリスクを伴う。
そのため、改善案を検討する段階で、営業拠点への到着時刻や拠点からの配送出発時刻を検証し、納期に関する前提条件を明確にすることが必須である。
そのうえで新しい体制へ移行する際は、A支店の顧客に対する納期面でのサービス水準が低下しないよう、日々の運行状況のモニタリングを徹底した。拠点の機能を見直す際は、物流費の削減だけに目を向けず、切り替え後も配送品質を維持できているかを確認し続けることが重要である。
本事例は、長距離で物量が少ない領域の物流について、拠点の役割を根本から見直すことで積載効率の課題を解決した事例である。在庫を一つの拠点に集約し、他社車両の帰り便の活用とクロスドッキング方式を組み合わせることで、効率的な輸送ネットワークを構築した。自社の実態に基づいた運行の分析と経路の再構築は、国の定める新しい物流の基準を満たし、物流費を抑えた持続可能な事業体制を作るための1つの手法である。
自社の物流に同様の構造が当てはまると感じた場合は、まず輸送の運行実態と費用を定量的に把握することが第一歩となる。
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dXコンサルティング事業本部
コンサルタント
物流事業会社にて、現場管理・予実管理・配車計画作成に従事。
JMAC入社後、製造業・卸業を対象にSCM改革や倉庫診断テーマで支援している。
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