第5回 【荷待ち時間の短縮】【荷役時間の短縮】顧客との共同改善による配送方法見直しの方法とは?
調達・物流・SCM


日用雑貨メーカーのA社では、全国の卸問屋向けに商品の配送を行っている。
近年、業界全体において前日受注・翌日午前配達という短いリードタイムでの納品体制が標準化したことに加え、納品先である卸問屋各社が自社倉庫の在庫削減方針を強化したため、発注の多頻度小口化が生じている。その結果、配送車両の運行効率や積載率が著しく低下し、運送コストの上昇が自社業績を圧迫していた。
そこでA社は自社内での配送ルート見直しだけでなく、納品先との協働による配送サービスレベルの再構築に着手した。
プロジェクトの発足に伴い、A社が直面していた物流阻害要因を解明するため、全納品先を対象とした配送時間分析および配送サービスレベル・配送ロットサイズ実態把握調査を実施した。
配送時間分析の結果、各納品先において、トラック1台あたり15分から1時間に及ぶ慢性的な荷待ち・荷役等時間が発生していることが判明した。
荷待ち時間の発生要因を分析したところ、午前配送への時間集中と、ケース単位の手作業による荷卸しという2つの構造的問題が浮き彫りとなった。
各卸問屋が午前着指定を一律に要求するため、朝の特定時間帯に多数の配送車両が集中し、手作業での荷卸しがトラック1台あたりの荷役時間を大幅に延ばして後続車両の荷待ち時間を増幅させていた。
さらに、配送サービスレベルおよび配送ロットサイズの実態調査データを整理した定量的実態は以下の通りである。
実態調査から、通例として午前中に配送を行っていたものの、実際に午前指定が必要とされていた納入先は半数にとどまり、残り半数は調整可能な状態であったことが明らかになった。
また、1パレットの半分未満の小口配送が全体の70%以上を占めていた。
必要性の低い午前配送と極小ロット配送の双方がボトルネックとなり、車両の運行を午前中に1回配送して終了する非効率な1回転運行に固定化させていたことが問題の真因と特定された。
問題点に対し、A社は納品先との面談を行い、共同改善策として、配送時間の変更と納入業者在庫管理方式(VMI)の導入という2つの施策を推進した。
A社は顧客に対し、待機時間の少ない朝一や、午前便帰車後、2回転目での配送が可能な午後への移行を提案した。
提案時は一方的な条件変更を避け、顧客の入出庫スケジュールや在庫引当タイミングを考慮した上で提案を行い、合意を獲得した。
卸問屋内にある自社商品の在庫をA社側が管理・補充するモデルへ転換し、安全在庫水準と出庫予測に基づいた計画的出荷を確立した。
これにより、極小化していた納入ロットをまとめ、荷姿をケースからパレットへ変更することができ、手作業による荷下ろしからフォークリフトでの荷下ろしに変更された。
VMI導入に伴う納品先の在庫資産の負担増については、顧客へ以下2つの選択肢を用意した。
これらの結果として荷待ち・荷役等時間が削減された。
配送時間の変更とVMIによる荷姿パレット化を複合的に実施した結果、A社の配送網において効率化が達成された。
改善成果として、配送車両の運行回転率は従来の1日1回転から1日2回転となった。1回転目で朝一番や午前中の納品を終えた車両が帰車し、午後から2回目の配送へ向かうダイヤが確立されたことで、必要車両台数が大幅に削減された。これに伴い、配送ルートの最適化が進み、配送単価の削減を達成した。
| 評価項目 | 改善前(従来体制) | 改善前(従来体制) | 改善のインパクト・成果 |
| 配送車両の運行回転率 | 1日1回転 (午前中納品のみ) |
1日2回転 (朝一・午前・午後分散) |
稼働効率が倍増 |
| 配送単価 (物流コスト) |
基準値 (100%) |
20%削減 (80%) |
物流費総額の削減 |
| 荷卸し作業時間 ・待機時間 |
15分~1時間/台 |
フォークリフト一括荷卸し | 車両滞留の解消と荷役時間削減 |
| 小口配送割合 (1/2パレット未満) |
70%超 (小ロット多数) |
自社在庫管理方式導入によるパレット統合 | 納品ロットの適正化と 積載率向上 |
以下の2点に留意して、改革を実行することが重要である。
営業担当者は顧客へのサービスレベル維持を優先し、配送条件の変更を敬遠することもある。
全顧客への一律適用を急ぐのではなく、物流部門と営業部門が密に連携し、協力が得られやすい顧客を選定した上で着手するなど、社内の合意形成を図ることが必要である。
在庫管理が不要になることや、在庫切れリスクの低下、受入時の作業省力化などの定量的・定性的メリットを提示する。運用時は試験運用を行い、取引先の不安を解消した上で変更を行う。
自社の物流部門、営業部門など異なる部門間、および顧客、取引先との間で相互にメリットを得られる構造を共有することが、プロジェクトを安定的に着地させるために重要である。
本事例では、日用雑貨メーカーのA社が顧客との協働により納入時間の変更と荷姿のパレット化を実現し、配送回転率の倍増と配送単価削減を両立させた。
この取り組みは、荷待ち・荷役等時間の短縮という課題に対する実効性のある解決策を示している。
ドライバー不足と物流コストが高騰する環境下においては、自社だけでの物流改善から脱却し、営業部門や顧客を含むサプライチェーン全体のパートナーと協働した総合的な課題解決を推進していくことが求められる。
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dXコンサルティング事業本部
コンサルタント
入社以降、営業~調達、生産管理、現場の生産性向上に至るまでのサプライチェーン領域におけるコンサルティングに従事している。直近では、営業・製造・物流の各部門を横断する業務プロセス改革を支援し、間接業務の効率化とともに、現場の生産性向上を狙った改革をおこなっている。
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