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第4回 【荷待ち時間の短縮】入荷作業の遅延を招く不要な伝票を削減し、荷待ち時間を解消するやり方とは?

コラム

2026.08.18

【事例で解説】物流効率化の実践アプローチ

横展開が期待できる企業・拠点

  • 過去のシステム仕様を継続して運用している企業
  • 多品種商材の検品工数に悩む流通拠点
  • 事務処理に起因するボトルネックの解消を目指す荷主企業

本事例から読み解く物流改善の3つの考え方

国の新しい物流の指針である荷主向け判断基準では、運転者の荷待ち時間や荷役等時間の短縮に向けた措置を講ずることが努力義務として求められている。本事例では、事務部門と現場、さらには経理部門が連携し、以下3つの考え方を適用することで入荷業務の遅延を解消した。

考え方1:現状の業務に疑問を持つ

 業務の方法が変わっているにもかかわらず、システムの初期設定を一律で継続しているケースは少なくない。現在の正確な必要枚数を業務ごとに確認することが効率化の第一歩となる。

考え方2:情報の用途や処理方法に合わせて書式を最適化する

 すべての書類に同じ書式を求めない。例えば、目視が必要な現場用と、確認が主となる経理用とで分ける。今回の場合は必要な情報量を維持しつつ、行数を増やした効率的な配置に変更することで印刷時間を劇的に短縮した。

考え方3:関係部門と話し合い、段階的に進める

 帳票類の削減は他部門からの反発を招きやすい。最初から必要だと思い込まず、具体的な用途や保管期間を丁寧に確認し、合意を得ながら段階的に部数を減らしていく手順が実効性を高める。

本事例の目的:入荷の滞留が常態化する共同配送センターでの荷待ち時間解消

 今回の事例の企業は、輸入雑貨品を取り扱う配送センターを運営している。この拠点では、商品が入荷する際に入荷明細が複数部出力される運用となっていた。しかし、商品のその後の行き先によっては、明細が1部しか必要でない商品も数多く存在していた。

また、この入荷明細は現場での検収と検査業務に使用されており、目視での確認のしやすさが優先されていたため、1ページに数十行しか表示できない余白の多い書式が採用されていた。これらの理由から、大量の入荷明細を数時間以上かけて印刷していた。結果、入荷業務そのものが遅延することがたびたび発生していた。入荷の遅延は、トラックドライバーの荷待ち、または荷役の時間を長引かせる原因となっていた。

 これらの入荷明細は印刷後に、該当する商品分類や区分ごとに仕分けをし、その後該当のボックスに入れる必要があり、多くの工数を割いていた。
これらの背景に対して、本プロジェクトは事務業務工数の削減、入荷処理遅延の防止、および紙の削減を目的として開始された。

問題点:紙伝票の目視突き合わせと記載ミスに伴う入荷処理の停滞

 問題を正確に把握するため、本事例の企業では3つの分析手法を用いた。

1つ目:事務工程分析によるシステム要件と業務要件の確認

以下の4点が明らかとなった。

  • 既存の印刷部数は現在の業務に対して過剰であり、実際にはより少ない枚数で業務を回すことが可能である。
  • 物流センターで検収後に店舗へ直送する商品は計3部が必要である。
  • センターに在庫する商品はセンター保管用と経理保管用の2部が必要である。
  • システム上は行き先を区別する仕様になっておらず、すべて一律の部数となっている。

改善前

改善前

2つ目:日報分析による現状の印刷量の把握

以下の2点が明らかとなった。

  • 平均出力枚数は1日あたり数千枚に達していた。
  • 印刷された伝票のうち全体の30%程度は実作業で使用されず、破棄されている。

3つ目:稼働分析の1種であり作業者の行動を観測

業務量を割り出す手法であるワークサンプリングを用いて、業務量の把握を行った。

  • 伝票の出力処理、印刷失敗時のフォロー、内容のチェック、仕分けなどの事務作業に対して、1日あたり0.8人の工数が消費されていることが数値として確認された。

   


以上3つの分析結果から以下3点が判明した。

  • 現在不要となっている仕様を引き継いでいる
  • 商品の動きごとに層別を行っていないため、不必要な入荷明細の発行を行っている
  • その結果、発行する入荷明細数千枚のうち30%が廃棄となっている。入荷明細の管理業務に1日あたり0.8人の工数が消費されている。

改善のポイント:事前出荷情報のデジタル連携と受領処理の効率化

分析で判明した無駄の早期解消のため、本事例の企業では改善策を2つのステップに分けた。

第1ステップ:印刷部数の見直し

全体部数を変更し、全商品に対して帳票を1部ずつ削減した。これにより、即座に紙の無駄と印刷時間を軽減した。

第2ステップ:出力方法とフォーマットの修正

入荷や出荷の対象ごとに部数を変更できる設定条件をシステムに採用した。これにより行き先別にシステムが自動で発行部数を判別する仕組みを構築した。

さらに、センター在庫対象商品の伝票2部のうちの1部について、経理部門と用途を確認し、最終的にこの1部を出力しない運用へ変更した。

また、現場の検収方式をバーコードによる方式へ変更した時点で、経理上のみに必要な伝票はフォーマットを変更した。行間を詰めるベタ打ち方式を採用し、出力枚数と時間を減らした。

改善後

改善前

効果:荷待ち時間の劇的解消とペーパーレス化による管理コストの大幅低減

段階的な改善を実施した結果、業務の効率化において明確な効果が表れた。

指標 改善前 改善後
事務作業工数 0.8人 / 日

0.2人 / 日(▲75%)

帳票の印刷枚数 数千枚 / 日 数百枚 / 日(▲60%)
出力待ちによる処理遅延

頻発

0件

 対象ごとに伝票の部数を自動変更する設定を行い、さらにフォーマットを行間を詰めるベタ打ち方式へ変更したことで、無駄な印刷時間と仕分け作業が解消され、結果として事務作業工数が75%減少し、出力待ちによる処理遅延が完全にゼロになるという効果が出た。伝票を待つ時間がなくなったことで、到着した貨物自動車はすぐに荷下ろしを開始できるようになった。これは、国の物流ガイドラインが荷主企業に対して努力義務として定めている、運転者の荷待ち時間および荷役等時間の短縮という要請に沿うような成果となっているのではないだろうか。

実施上の留意点

 本事例にとどまらず、改善活動には、「はじめから必要なはずと考えないで、疑問をもって活動していくこと」が重要だ。読者の皆様が入社したころには、すでに出来上がっているものがあるため、それがロジカルに組み立てられていると思い込んでいることが多い。しかし実際は、部分最適が積み重なり、バラバラなものがただ寄せ集まっているだけで、整合性を持って正しく組み上がっているわけではないケースがよくある。  帳票類の削減は、一般的に受け入れづらいことが多いが、疑問をもって活動を行い、該当する部門に対して詳しく必要な用途や保管期間などを一つずつ確認していくことが重要である。

まとめ

 「当たり前」を疑うことが、現場の課題を解決する第一歩となる。本事例では、長年の慣習となっていた不要な伝票発行を見直した。結果として、事務工数や紙の無駄を削減しただけでなく、入荷処理の遅延をゼロにするという波及効果を生み出している。部門間の調整を経て形骸化したルールを正す本手法は、自社の生産性を高めると同時に、トラックドライバーの待機時間短縮という社会的要請にも応える有効なアプローチである。自社の物流プロセスにも形骸化したルールが潜んでいないか、まずは身近な帳票類から見直してみてはいかがだろうか。

   

本コラムはJMACの支援事例をもとにコンサルタントが執筆したものです。

横山 陽平

dXコンサルティング事業本部
コンサルタント

入社以降、事業戦略のアップデートや消費者調査に基づくブランドポートフォリオ再編などのテーマから物流拠点の生産性向上や現場実務と財務情報の同期化を図る在庫管理プロセスの再構築などのテーマに取り組んでいる。

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