働きがい向上のヒント
第1回 職場のマネジメントはデジタル?アナログ?
- 人事制度・組織活性化
田中 良憲
エンゲージメント、働きがいは従来から全ての企業・組織にとって重要なテーマであり、特に近年は「働き手不足」の観点からもその重要性は増すばかりである。
日本では1980年代広汎から「従業員満足」という考え方が拡がってきたが、JMACでもその頃から「従業員と組織の健全な関係」づくりを目指してコンサルティング支援を重ねてきた。
本連載では、「働きがいのヒント」と題して、コンサルティングの現場や職業人としての体験からの気づきを発信していく。堅苦しい議論ではなく身近な視点で働きがいやエンゲーメントを考えるきっかけになれば幸いである。
あるオフィスで見た光景
新型コロナウイルスが流行する前、とあるIT企業から「システム開発の投入時間が見えない」「時間の見える化によってムダを無くしたい」と相談を受け、業務量の見える化と改善のお手伝いをした。
初めてオフィスに伺い、指定されたデスクで分析作業を行っているうちに正午になった。すると突然ラインのリーダー社員が立ち上がり、大きな声で「はい、朝礼やりまーす」と声がけをした。すると、周辺の社員は全員立ち上がり、マグネットを用いたグラフが表示されているホワイトボードに集まった。間髪いれず「おはようございます。昨日からの重要案件はXX件で。このようにそれぞれAさん、Bさんに割り振られています。進捗はどうですか?他に重たいものはある?」テキパキと確認しつつ、専用の案件管理システムでもわかるはずの案件の作業状況を、わざわざボード上のマグネットを使って状況を再現していった。
その企業は断続的にシステム開発を進めるため、朝~夕方勤務と、夕方~深夜勤務という二交代制勤務を取っており、メンバー全員が顔を合わせることがないため、朝礼と夕礼で引き継ぐ対象の情報共有と見える化を図っていたである。案件管理システムを使えば状況はわかるはずだが、重要情報を社員メンバーにプッシュするためにあえてホワイトボードを使って、アナログで取り組んでいた。同社は歴史としてはまだまだ浅い会社だったが、見える化による業務マネジメントには長けていると感じた。
アナログからデジタルへの移行の壁
われわれも以前はあえてホワイトボードや模造紙を使った仕事の量、課題の見える化をお客様におすすめしていた。しかし、コロナ渦で職場の接触を極度に落とした結果、こういった方法は中断せざるを得ない状況となり、またコロナ以降もテレワーク・在宅勤務が定着化した今、これらの方法の復活は積極的に活用しにくいと考えている。
考え方をTeamsやGoogle等のツールに反映して情報共有することは可能である。しかし伝統的な大企業の職場では、「いや、うちはそういうのは向かないので」と、初めからチャレンジしない管理者の方が多く、結果、割り振られた仕事をタコつぼ的にこなす社員が多くなっている印象を持っている。
「本来、何を管理し、改善するのか?」管理の本質を理解していれば、アナログ・デジタルかかわらず、ツールをうまく使って管理できるはずだ。本質がわからない組織は、デジタルツールが高度化・高機能化しても使いこなすことはできない。
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