成果を出す3つの提言 ~『生産技術者の未来実態調査』報告~
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JMAC
生産コンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
山本 真也 (やまもと しんや)
日本の製造業はイノベーションを起こしきれていないのではないか。
そこで、イノベーションのコアであるはずの「生産技術」に特化したアンケート調査を行い、その結果報告とJMACからの提言を行った。
回答企業プロファイル
● N数:207件
● 加工・組立系、プロセス系幅広く回答
● 売上規模も規模4分類で25%程度ずつの回答
● 全社における生産技術部門人数は3%未満がもっとも多い
● 業種分類で見ると装置系は「3%未満」がもっとも多く、約50%
● 加工・組立系が「3%〜5%」がもっとも多く約30%
● 業種間で差が生じている
競争力がある生産技術部門の要件を満たすために
日本の製造業の生産性研究を行っているJMACは「企業の持続的成長にはイノベーションが不可欠で、ものづくり機能の中核を担う生産技術部門がその核になる」と考えます。しかし、生産技術に特化したベンチマークはまだ少なく、課題把握や情報発信が難しいのが現状です。生産技術者の活躍は業績良化に貢献度が高いはずですが、現場では専門性に寄りすぎて、スループットで見ることができないなど、改善点は少なくありません。
JMACの調査では、業績が良い企業は「社内的に生産技術部門の認知度が高い」ことに強い相関があり、将来に向けた生産技術の開発を推進していることがわかりました。そこで生産部門に所属される方にアンケートを実施。その結果、競争力がある生産技術部門の要件として「ものづくり戦略」「生産技術部門の役割」 「生産技術部門の課題」 「人材育成」(下図)の4分類を導き出しました。しかし各要件には「財務目標やスローガンだけになっている」「数字が下流傾向」 「取り組み遅れの実態」などの課題が残ります。
生産技術部門の機能強化のためには長期視点の戦略や業務改善、人材育成などが不可欠。調査結果を踏まえ、JMACから3つの提言を行います。
生産技術部門の成果を測る4つの要素と3つの提言
提言1:ものづくりの構造変革を実現するための戦略を描け
構造改革と継続的改善の2つの要素で描いていく
提言1は、10年を超える長期視点(下図A)でのロードマップをつくること。そして、大きく抜本的に変えるドラスティックイノベーションのための「構造改革」(下図D)、コツコツと変化をさせていくインクリメンタルイノベーションのための「継続的改善」の2つに分け、それぞれを具体的に描いていきます。
構造改革に関しては何を変えるのか(下図C)、社会のニーズから設定し、組織が連携してコンカレント(複数業務を同時進行)に課題を解決していくこと(下図E)が求められます。そして、そのための人材教育、場づくり(下図G)が重要になるため、継続的改善も同時に行う必要があります。元の企業文化も大切にしながら、2本立てでロードマップを描くことが必須です。成果を出している企業では、20年先までロードマップを描いているところもあります。
提言2:生産技術部門の役割を変革せよ
多能力化、スコープ拡大、フロントローディングの3軸で変革を
提言2「生産技術部門の役割を変革」については、3つの変革が必要と考えます。
変革1は「将来課題の先取りと早期着手」。工数配分の見直しが必要で、現場の「多能力化」が求められます。「作業」+「改善」+「保全」+「工作」など、ひとり3役、4役を目指し、たとえばカーボンニュートラル技術開発など、将来的な仕事に役割を変えていくことです。
変革2は「点ではなく工程スループット(処理能力/生産高)にスコープ拡大」すること。ある工程やある技術だけの専門家だけでは変革は生まれず、たとえば調達から物流まで見ることができる人材を育て、役割を広げていくことが求められます。
変革3は「フロントローディング化」。コンカレントに製品と工程を一括するような、より上流に積極的に動いていくことが必要となります。
提言3:生産技術独自の育成システムを確立せよ
上位概念から人材育成も組み込んでプランニング
提言3は、「生産技術の人材育成について」。ものづくり戦略には人材育成が不可欠で、上位概念から人材育成も組み込んでプランニングすることが重要です(下図左列)。全体的なスキルを見ることができるデータベース(下図C)や、独自の教育体系(下図D)をつくり、ロードマップに展開していくこと(下図E)。データベースは問題解決や協力要請に活用でき、ロードマップの作成は採用力のアップにつながります。さらに、ノウハウの蓄積や活用などの「情報サポート」(下図G)、人事評価など「評価サポート」(下図F)の連携も必要であると考えます。
経営側は「チャレンジの場」「失敗を許容する場」を提供することが重要で、マネジメント変革(下図A・B)も求められます。その結果、エンゲージメントの向上、成長へとつながるようなゴール感を持てるシステムの確立が必要になるでしょう。
※本稿はJMAC発行の『Business Insights』77号からの転載です。
※本稿は2024年3月22日(金)に開催した「JMA主催 ものづくりフォーラム」における山本真也の講演を再構成したものです。
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