お問い合わせ

ダイバーシティ・マネジメントが競争力強化の源泉となる
~日本企業が生き残っていくために~

NPO法人J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベィティブ・ネットワーク)
副理事長 佐々木順子

J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベィティブ・ネットワーク)は、企業におけるダイバーシティ(多様性)マネジメントの定着と推進を支援すべく、2007年にNPO法人として認可・設立された。J-Winの特徴は、企業と女性の両面から支援することにある。84社の会員企業の協賛を得て、総勢260名の幹部・幹部候補生となる女性社員をメンバーとして、様々な活動を続けている。J-Winは、①「企業がダイバーシティ・マネジメントを推進するための施策や事例の提供、コンサルティングなどによってこれを支援していく活動」、②「女性メンバーたちに勉強会やメンバー相互の業種を越えたネットワーキングなどの啓蒙・自己研鑽活動の機会を提供することにより、克服すべき課題の解決や必要なスキルの習得を支援する活動」の2本の柱を通じて、より多様な個性が活躍できる社会の実現に向けて、提言を行い、インパクトを与えることを目指している。

日本企業の"ガラスの天井"

ダイバーシティ・マネジメントとは、ご承知のとおり性別だけでなく、人種、国籍、年齢を問わず、あらゆる多様性をいかに取り入れ、活用していくか、ということだ。それには、まず自己を知ることが必要だ。自分の強みを知る。日本人としての成り立ち、歴史・文化を知る。そうして初めて他者との違いがわかり、敬意を払おうという気持ちがわいてくる。違いは障害ではなく、互いを高めるチャンスとなり、他者を理解しようという気持ちになっていく。そこに変化が生じ、小さな核融合を繰り返しながら、本物の人材が育ち、企業の競争力へとつながっていく。残念ながら、日本人はそういう点に無自覚だと思う。
 私はそうした危機感を2010年の初めまで2年半赴任していた中国で肌身で感じた。当時、IBMの執行役員だった私は、直下の本部長、部長クラスの中国人の採用面接を度々行った。最初に面接したのは、日本語も英語も堪能で、日本の有名企業の現地法人で現地人トップの地位にある人だった。40歳そこそこで部下は200人いるという。そんな人がなぜ辞めようとするのか。私は率直に聞いてみた。
「日本企業にはガラスの天井がある」。それが、彼の答えだった。つまり、現地人トップにはなれても、総経理(社長)には絶対になれない。総経理には本社から日本人が赴任して来て、2~3年で帰っていく。ましてや本社経営陣へと昇進する可能性はない。加えて、日本から来た人間はやり方を押しつけ、マーケットに合わせる提案を聞き入れようとしない。そう彼は言った。同じような立場にいる何人もの優秀な中国人と面接したが、皆同じことを言う。「日本企業には外国籍の人間を経営幹部に登用するシステムもモチベーションもない」と。
 日本企業は完全に人材の獲得競争に負けている。私は唖然とした。これは、日本企業内における女性の登用と全く同じ構図である。つまり、エグゼクティブへの登用プロセスが可視化されていないのだ。キャリアパスが不明瞭で、何を行えばどう評価されるのか、そのルールがわからない。女性を活用できなくて、外国人を活用できるだろうか。実際、我々の調査でも、女性活用とダイバーシティ・マネジメントの進展はほとんど同調している。

勝てる意思決定を行うために

日本企業に勤める女性が持てる力を最大限に発揮して、企業活動に貢献することが、企業を変え、社会に活力を与え、日本を蘇らせると私は確信する。多様性なくしては、ドメスティックな企業であってもグローバル化された経済競争の中で生き残っていくことは不可能だ。日本でも、M&Aが激しく、競争が激化している金融業界や一部の先進的な製造業から変化は確実に起こりつつある。
 ダイバーシティ・マネジメントを進めるには、経営トップがコミットし、ビジョンを示し、経営戦略として推進する必要がある。社内における女性や外国人の管理職比率の数値目標を設定し、社長自らが進捗状況をレビューする。同時にそれを支える業務プロセスや評価制度の「見える化」、リーダーシップ研修、フレキシブルな働く環境作りなどのシステム改革、社内風土改革を進めてこそ、ダイバーシティ・マネジメントは企業にとって大きな力となる。
「エコと成長」「収益性とマーケットシェア」といった、トレードオフを内包した目標下でのビジネス展開が不可欠な今、優秀な人材を獲得し、持てる力を伸ばし、フルに発揮させることで、スピード感に溢れたイノベイティブな意思決定のできる企業になるためにダイバーシティ・マネジメントは不可欠だ。それは、決して掛け声ではない。企業が勝ち続けるための必須条件である。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.40 からの転載です。

会社情報

経営のヒントトップ