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中国の「人材力」の活かし方
~蘇州工場での体験を通して~

HOYA株式会社
PENTAXオプトデバイス事業部事業管理部部長 (前)豪雅光電科技(蘇州)有限公司董事総経理  三冨 和弘氏

豪雅光電科技(蘇州)有限公司は、HOYA・オプティクス事業部の生産会社として2003年5月に設立、2004年7月より生産を開始した。設立当時、タイ工場に赴任していた私は、生産開始直後の10月に副総経理として着任。待ちうけていたのは、カメラ付き携帯電話用レンズの量産化という難問だった。日本の母体工場で量産化技術が間に合わず、もはや中国で量産化するしか道はなかった。中国で採用した従業員のほとんどは新卒だった。半数以上は採用後、日本とタイで研修を受けていたが、モノづくりの経験は半年もなかった。そうした人たちとともに、日本で不可能だった量産化の立ち上げに挑んでいくこととなったのである。

人づくりを起点とする

中国工場立ち上げの起点は人づくりだった。5Sの徹底など社会人としての基本教育から始めなければならなかったが、中国の人は非常に勉強熱心で、教育訓練は人材定着の面でも効果が大きい。ただし、年間400万人の大学受験者に1番から400万番までの順位がつく社会にあって、中国では、人には当然能力差があり、能力のある者にチャンスが与えられることを公平と考え、その選抜が公明正大に行われることを公正と考える。そうした点を考慮して、第一期生の中から20名を選抜。現地の教育機関と共同で開発したプログラムを用いて「初級管理者教育」を実行していった。

同時に、量産化に向けての真の原因究明が続けられた。2005年2月、HOYA中国工場に最初の春節(旧正月)がやってきた。中国では春節に休みを与えなければ、会社に来る者はいなくなると言われている。しかし、ここで工場を止めるわけにはいかない。日本人も全員休まず出社し、総経理自ら毎日、一人ひとりにお礼を言いながら酒肴料を手渡し続けた。「正直に会社の状況を説明してくれて、赤字なのに総経理が無理してキャッシュを手渡してくれた。この人たちは本気だから自分もできる限り頑張ろうと思った」―― 後に一期生の一人はそう語っていた。このとき、私は「やって見せ、言って聞かせて、させてみて...」という山本五十六の言葉は本当だ、と思った。全員の懸命の取り組みによって、不良の発生は減っていった。

日本の仕組みは置いていく

やらせるばかりでなく、やってくれたときは経済的報酬で報いなければならない。進出3年目になると、せっかく育ててきた中堅社員を引き抜かれることがあった。一期生が4年目を迎える年、貢献度により大きく差がつくような賃金制度を考えた。日本のように一律15%アップでは、彼らの公平感に反する。昇給原資15%を、均等に配分するのでなく、メリハリをつけていく。この賃金制度が功を奏し、人材の流出に歯止めがかかっただけでなく、自然と理想的なピラミッド組織ができていった。

金銭的に報いたら、次はポジションである。日本人は基本的に職制をもたず技術・管理のアドバイザー役となり、ラインの生産部門の長は現地の人にやってもらう。日本人駐在員と中国人管理職のミッションを明確に分けることで、管理職への道が開けていることが見えてくる。チャンスを与え、メソッドを与え、仕事を与え、それに応えた者に報いていくことができれば、どこの国にあっても組織はうまく回っていくのではないか。

安価な労働力としてではなく、「人材力」という視点で中国を見てほしい。ブレのない方針をもちながら、広めに網を張って彼らを受け止めてみてほしい。日本でやろうと思ってできなかったことを中国で実践してみてほしい。そのとき日本の仕組みは日本に置いておく。中国の人たちに新しい仕組みが受け入れられたら、その仕組みを日本に逆輸入してみる。そうした時代になっているのではないか。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.34 からの転載です。

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