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お客さまの声をトリガーに業務改善を推進する
~業務プロセスまで包含した新たなCS~

株式会社NTTPCコミュニケーションズ
執行役員ネットワーク事業部バリューサービス部長 小原 英治氏

当社は、ネットワークやデータセンターなどのインフラを軸に、ネットワーク機器・各種サーバの提供からネットワークの保守・運用まで幅広いサービスを提供している。1985年、NTTの民営化と同時に設立した当社は、業界の中では古参にあたる。ドッグイヤーといわれるほど激しく変化するIT業界の中でフロントラインを走り続けた結果、個人商店の集合としての組織運営になっていた。さらなる業容の拡大に向けて、組織としてのルール整備に取り組み始め、CS活動推進規程も作りはしたが、なかなか魂がこもらなかった。CS強化を打ち出す石田守社長の陣頭指揮のもと、経営基盤を強化すべく事業部を横串で貫くタスク制が発足。その一つとして、CSタスクを立ち上げた。1年前の4月のことである。私はその推進役を仰せつかった。

VOC(Voice Of Customer)を業務改善までつなげる

我々は、CSタスクの活動にあたって、「業務改善につなぐ」ことを考えた。つまり、お客さまが発している苦情・ご要望などを集め、それをコントロールする(ISO10002で規定しているやり方)だけでなく、その裏側にあるビジネスプロセスを変えていく。これらのお客さまの声をトリガーとして、業務プロセスを見直す。それが、我々が目指すCS活動の姿である。
活動を始めて6カ月、2003件のお客さまの声が集まった。内、苦情は42件で、その他ほとんどがご意見や問い合わせである。その中に、「請求書に入っているサービス名(内容)がわかりづらい」というものがあった。よく請求書を読めばわかるのだが、一般のお客さまにとっては確かにわかりづらい。調べてみると他のサービスに関しても分かりにくい。そのため、毎月の請求書を発行した直後から、しばらくの間、そうした問い合わせが増えることがわかった。こうして、全商品について請求書の見直しが行われた。請求書の発行を開始して以来、始めてのことだった。

お客さまのお叱りの声に対応することは、当然、重要である。個人レベルのミスによるものも多く、そうした対応は比較的迅速に進む。しかし、見え隠れするお客さまの小さな声の中に、会社全体のシステムに関わるような大事なことが、隠されているのではあるまいか。たとえば「パンフレットをください」という問い合わせについて、「なぜ、パンフレットが欲しいのか」と深堀りしていくと、「まだサービスとしての情報発信が足りない」という課題が見えてくる。そうしたフィードバックを事業部門とタスクチームが連携を取りながら行っていくことで、今、見えていない些細なお客さまの声が見えるようになるのだと思う。

苦情を真の「宝」にするために

とはいえ、VOCの中でも特に苦情を社内に上げるには勇気が必要だ。「怒られる」「告げ口に見られる」といったリスクを現場は考える。そうした思いを汲み取って、会社をよくするためにVOCを記録し社内に上げてくれている人たちに、いかに報いるか。それには、情報をバックヤードにまでフィードバックし、バックヤードが改善されたという結果を出すことだ。

お客さまの苦情の根っこの問題は、システム全体、会社のしくみそのものにある。これを直せば、苦情を集めてくる営業マン一人ひとりにとってもハッピーなことなのだ。
現場のお客さまに接しているフロントラインから上がってくる苦情は「宝」である。彼らが拾ってくる苦情は、彼らのバックヤードにいるメンバーのプロセス改善の材料となる。共通認識を持つことで、小さいが大切な苦情を見つけることができるようになるのだと考える。

こうしたCS活動を推進していくことで、使命感ややりがいを社員一人ひとりが実感できる。これは、CS推進の大きな狙いの一つだ。そのことによって、業績が上がり、利益が上がり、さらに継続してお客さまに新しい満足を提供するための工夫の余地が生まれてくることを信じて、今後も活動を続けていきたい。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.23 からの転載です。

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