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イノベーションこそ、成長と進歩の原動力
~成長し続けるためのクリエイティブ・マジック~

3M社
欧州・中欧・アフリカ地域担当 副社長 ポール・D.ロッソ氏

先端技術は、しばしばマジックと区別がつかない。私たちがやっていることは多くの人にとってマジックのように見えるらしい。しかし、マジックのように見えるものも、実は私たちなりの発見であり、革新である。「世の中に存在しない製品の開発」を志向し、新しい世界を切り拓き、より安全で快適な世界をつくり出す。そしてお客様に笑顔をお届けする。そうした信念のもと、3Mは、1902年創業以来、今日に至るまで、5万種類を超える製品を開発してきた。

成長と進歩の原動力

イノベーションこそ、成長と進歩の原動力であり、それをお客様と共に成し遂げようというのが、私たちのビジョンである。そして、100年以上にわたって、これを支えてきたのが4つの信念である。
1つ目は、「製品を改善する」こと。改善を続けることによってお客様の問題を解決することができるという確固たる信念である。2つ目は、「プロセスや製品を学び、改善・改良をするために好奇心を持つ」こと。新しいことを学ぶという開かれた気持ちを持って仕事にあたるということだ。3つ目は、「退屈でつまらない市場にも、過去になかったような爆発的拡大機会が眠っている」という信念である。たとえば会社発祥のビジネスである研磨材製品は、実は105年経った今でも、日本でもっとも急成長している商品のひとつである。そして4つ目は、「低成長は人口動向・経済・価格などが原因のように見えるかもしれないが、ほとんどの場合はイノベーションの欠如とリーダーシップの弱さが原因」という信念である。強力なリーダーを養成しながらイノベーションを続けることで、いかなる環境の中にあっても勝ち抜いていけると信じている。

イノベーションを育むために

イノベーションとは、偶然の産物ではなく、原則と実践が複雑に組み合わされて、はじめて生まれるものである。これを達成するのは、すべて人であり、そうした人に対して、権限の委譲と奨励を与えるのがリーダーである。言い換えれば、リスクを取りながら学ぶことを許す環境をつくるのがリーダーの役割なのだ。

3Mは、ニッチ市場でいくつかの成功製品を創出している。成功する製品とは、プロセス、カルチャー、そしてインスピレーションの3つを併せ持ったものであり、この三者が一体化したとき、エキサイティングな製品が誕生する。お客様が「ワォ」と叫びたくなるような感動と興奮が生まれる。そうした製品は、単にお客様の声を聞いていただけでは生まれない。あったらいいなという視点から作り出し、顕在化されていないお客様のニーズに対応することが、平凡な製品とすぐれた製品との違いを分ける。境界線をもっと広げ、イノベーションを通じて、つねに新しい標準を実現するのが私たちの目標なのだ。

私たちは、イノベーションを育むにあたって、謙遜、正直、勤勉さを重視している。もちろん、個人の創造性は尊重していかなければならないが、同時に機能横断的なチームワークは不可欠である。私たちは共有の重要性を歴史を通じて学んできた。そして、多くの技術はインフォーマル(非公式)なプロセスを通じて共有されている。エンジニアは、自由時間を持っていてその時間を使って自分が好きなプロジェクトを研究することができる。これを3Mでは「15%ルール」と言い、その活用によって多くのイノベーションがもたらされてきたのである。
「常識的な人は自分を周囲に合わせる。非常識な人は周囲を自分に合わせようとする。したがって、すべての進歩は非常識な人が起こす」バーナードショーのこの言葉は、まさにイノベーションのあるべき姿を示しているように思える。
個人の創造性を自由な風土で育み、それを共有し、リーダーシップをもって規律と両立させていく。そうして、世の中に夢をもたらすマジックを、イノベーションによって実現し続けていきたい。

※本原稿は、9/11弊社主催の『JMAC-i トップマネジメントフォーラム』でロッソ氏が3M社エグゼクティブ・カンファレンスメンバー、住友スリーエム代表取締役のお立場でご講演された内容をまとめたものです。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.26 からの転載です。

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