経営層が見ている品質 「どうする? 問題解決力の弱体化」
最近、数社の経営層と品質について意見を交わす中で、要因解析のレベルが落ちているという話があがった。品質保証実態調査結果によると、回答企業の過半数が要因解析に力を入れており、日本企業の強みの一つとして確認したものである。この確認と反するものであり、ショックを受けた。話の中で出てきた懸念点は大きく2つある。
①1点堀りの要因解析
是正処置報告書などを拝見すると、なぜを5回繰り返し、要因を深く掘っていることが伺える。
しかし、他の要因可能性については取り上げず、ただ一つの要因についてのみ掘下げている。本来であれば、
要因を縦横に広げるべきところを広げていないのである。
②類似問題の再発
品質不具合の要因対策を打っているが、再発がとまらない。よく見ると同じような問題が他のライン、設備
などで続いている。再発防止策を考える際に、不具合発生の要因をうまく解釈できず、他への類推適用可能性
を検討できないでいる。
上記の背景として、品質不具合の是正処置報告のあり方に問題が見られた。「是正処置報告書の様式には真因までの要因解析展開のみを記載するようになっており、それ以外の可能性は記載できない。さらに問題発生からごく短時間で報告書を提出する必要がある。その結果、真因として妥当そうなものを最初から絞り込み記載することになる。また、現場を巻き込んだ議論も十分に行えず、管理職中心の検討となっている」との話である。これでは再発防止に向けた他への類推適用を検討できるはずもなく、先のような是正処置報告書の作成が必要な情報を所定の様式に埋めるだけのルーチン処理となっていないだろうか?是正処置報告書のあり方を考え、当面の対処報告と再発防止策とをしっかりと分けた上で、必要な時間と人員を確保し、問題解決にあたるべきではないだろうか?
コンサルタントプロフィール
シニア・コンサルタント 松田 将寿
早稲田大学大学院修士課程国際法専攻修了後、1994年にJMAC入社。
製造業を中心に24年の経験(生産領域コンサルティング12年、戦略領域コンサルティング12年)を持ち、国内外(外は現地企業・大学なども含む)、大企業~中小企業など幅広く支援を行っている。
品質カテゴリーに関しては、経営・事業戦略への組込み、経営体質作り(改善・改革の骨格)として捉えて支援している他、品質マネジメントシステム、品質保証・品質管理の側面から組織・機能連携、外注戦略、業務改革なども支援している。
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