第2回 「あいさつ」ができる職場、できない職場~職場の相互理解と尊重の第一歩をどう踏み出すか~
人事制度・組織活性化

今回は、経営の要請を受けた第一線の職場の状況を現場目線で見ていきたいと思います。前回と同じ場なのですが、目線が変わるとまったく異なった風景が見えてきて、組織マネジメントの難しさがうかがわれます。
ここでは、現場の状況を担当層と管理職層の2階層の視点から見てみたいと思います。初めに、業務を推進する担当層からは以下のような実態が垣間見えてきます。
これまで多くの企業の担当層の方々から話を聞く機会がありました。いろいろな業種のいろいろな業務についている方々ですが、異口同音に発せられる言葉が「毎日仕事が忙しい」のひと言です。
確かに現場を見ていると、とりあえずは目の前に見えている仕事をこなしていくというのが精一杯で、これだけで1日が終わってしまうというのが実態という職場が数多くあります。こうした職場では、少し先を見た改革課題への取組みや自己啓発は、気づいていても優先順位が低くなって後回しになってしまいます。そのうちに、どんどん視野が狭くなっていき、"後回し"とは、"やらない"ことを意味する言葉になってしまいます。
職場の活性化を企図したボトムアップ活動も多くの企業で行われています。ボトムアップ活動は、業務を一番よく知っている担当による取組みであり、参加者がそれなりの問題解決スキルを有していれば成果も得られる活動です。ところが、これらの活動は当初は物珍しさもありそれなりに盛り上がりますが、同じ活動を長く続けていると「慣れ」が「飽き」になり、さらにはボトムアップで解決できる問題に限界が見え始め、得られる成果も限定的になってきて、やがて「形骸化」してしまいます。ところが活動が停滞気味になってきても、大義名分があるのでなかなか止めることができないで、ズルズルと引きずってしまいます。
このように活動が半殺し状態になってしまうと、活性化活動が非活性化要因になってしまうという皮肉な状況をつくり出してしまいます。
こういった状況の中で、現場でもただ耐え忍んでいるだけではなく、少しでも状況を打開しようと知恵を働かせています。ところがこの知恵の働かせ方を誤ると制度・仕組みの裏読みといった現象が発生してしまいます。
典型的な裏読みを目標管理精度の現場の例で紹介しましょう。目標管理制度とは、組織の業績と現場の業務を結びつける業務管理の仕組みとして非常に有効な制度だと思うのですが、現場ではやるべきことはわかっても、その重要性、意味合いなど深層までの理解となると限界はあるものです。すると、形だけ整えようとして図1に示すような裏読み状況が発生することがあります。
制度を設計する際にもこういった裏読みを想定し対策を打ちますが、現実的には限界があります。このような形でせっかくの制度の意図どおりの運用がなされていないといった状況に陥ってしまっています。
こういった現場の状況を読んだみなさんは、「これはひどい職場だ。けれどこの職場にも管理職はいるはずだ。管理職はいったい何をやっているんだ」といった感想を抱かれるのではないかと思います。ところがそういった現場の管理職に目を向けると、そこには担当層以上に悲惨な状況が浮かび上がってきます(図2)。
最近では、中期経営計画の展開、業務プロセス改革、○○システムの導入、ISO、目標管理制度など、さまざまな取組みがトップダウンで展開されています。現場では既存の業務で忙しい中で、これらの取組みに対する大なり小なりの対応が求められてきます。これだけでも煩雑なのですが、さらにこれらの施策の展開タイミングが重なると現場はアップアップの状態になってしまいます。
これらの施策は課員全員で推進するものなのですが、その責任は管理職に課せられます。おまけにここ数年はコンプライアンス、メンタルヘルスなど繊細さが求められるマネジメントへの要請も追加されてきています。さらに追い討ちをかけるように、"残業削減一律30%!!"といった要求も降ってきて、「片や働け、片や働くなとは......、いったいどうしろと言うんだ」と混乱に輪をかける状態に陥っています。
組織としての意思決定の迅速化をねらいとした組織のフラット化も最近の動きです。経営層までの意思決定のステップを減らし、意思決定を迅速化しようとするものですが、この結果、中間の管理職が面倒を見る部下の数が増大してきています。
前項の管理対象の増大×管理対象人数の増大で、本来求められるきめ細かい現場のマネジメントが難しくなっています。
さらに追い討ちをかけているのがプレイヤー兼務であるという役割です。少数精鋭の組織の中で「オレは管理職だ」とふんぞり返っていたのでは組織内の仕事は進みません。勢い管理職も一部担当としての仕事が求められてきます。ところが1日の労働時間には限りがあり、プレイングの時間が増えると当たり前ですがマネジメント時間が減ってきます。一方で前述したように第一線の現場での組織マネジメントの負荷がどんどん増えていく中で、マネジメントに必要な時間が割けなくなってしまいます。
また、プレイングマネジャーを認めてしまうと管理職本人は面倒なマネジメントを嫌い、慣れたプレイングに逃げ込んでしまうこともあり、結果としてマネジメントがおろそかになってしまうという弊害も発生しています。
さて、これまで組織マネジメントがうまくいかない実態を紹介してきました。いかがでしたでしょう。この状況が当てはまらないことが望ましいのですが、残念ながら多分いくつかの状況は当てはまってしまったのではないかと思います。
それでも安心してください。どんな状況でも必ずやりくりの道はあります。本コラムの後半ではこのやりくりの具体策を明らかにしていきます。
次回はやりくりの大前提として、マネジャーに持っていてもらいたい基本スタンスに触れたいと思います。
チーフ・コンサルタント
1985年 JMAC入社。新事業開発を振り出しに、事業戦略立案、マーケティング領域の支援経験を経て、人材マネジメント領域のコンサルティング・教育を行っている。人材マネジメント領域においては、人事制度、人材育成体系、組織活性化などの仕組み構築のほかに、泥臭い第一線組織における組織マネジメントのあり方を深く研究・考察。そこから得た知見をもとに、現場における目標設定、コミュニケーション、業務改革、OJT、評価などの組織マネジメント運営支援を幅広く行う。人材マネジメントの立場からの企業・組織の業績貢献、改革推進でも大いに活躍している。
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