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「品質リスク」に取り組む上での重要なスタンス

多くの企業がリスクマネジメントを経営管理手法に取り入れている。
さらに、最新のISOを含むマネジメントシステムの考え方には、システムの計画段階からリスクに基づく考え方を組み込み、組織目標の達成を妨げるリスクに対して、体系的なアプローチを確立することを求めている。

その中で「品質リスク」に取り組む上の基本的なスタンスにおいて、次の5つの視点が重要と考える。

  1. 「品質リスク」は、すべてのプロセスに存在することを認識する。
  2. 目の前の「品質リスク」に対処するという「モグラ叩き」ではあってはならない。
  3. 個々のプロセスが、関連するプロセス、全体に影響を及ぼす「品質リスク」を予測する。
  4. 「品質リスク」を個人の価値観に基づいて対処すべきではない。
  5. 想定される「品質リスク」を極小化し、極力、関連するプロセスに渡さないようにする。

1.「品質リスク」は、すべてのプロセス(活動、業務、手順)に存在することを認識する。

市場調査、営業、設計・開発、購買、製造、クレーム対応、危機管理等すべてのプロセスにおいて、従来は重要性が認識されていなかったが、現在では重要であると認識しなければならない「品質リスク」が存在する。重要な「品質リスク」の存在を認識できなければ、当然対応を誤り、とんでもないことになりかねない。各プロセスの「品質リスク」は多様であるため、組織的に対応することが必要である。

2.目の前の「品質リスク」に対処するという「モグラ叩き」ではあってはならない。

「品質リスク」への取り組みは、将来に発生する恐れのある事柄に対する未然防止活動である。目の前の「品質リスク」のみ解決(対処療法)しようとするのではなく、問題の本質(根本的原因)を明らかにし、運用面(仕組み)の改善など有効な対策を取る必要がある。そのためには、網羅的、体系的なアプローチによる取り組みが必要である。

3.個々のプロセスが、関連するプロセス、全体に影響を及ぼす「品質リスク」を予測する。

個々のプロセスが、関連するプロセス、全体に影響を及ぼす「品質リスク」が存在する。「品質リスク」を洗い出す場合、関連するプロセス、全体を俯瞰し、「品質リスク」を予測できるように、個人のリスク感度の向上と「品質リスク」のシナリオ形成・解析力などを有する人材育成が重要となる。

4.「品質リスク」を個人の価値観に基づいて対処すべきではない。

「品質リスク」の評価は、一般的には「発生可能性(不確かさ)」と「結果の重大性(影響)」の2つの関係で表される。しかし、組織として解決すべき「品質リスク」を特定するためには、次の2つのことに留意することが重要である。
一つは、「目的(期待する結果)」を共有することである。個人の価値観が多様であるが、「目的」を明確に伝えれば、対処を誤ることはない。
二つ目は、科学的根拠に基づくリスク評価である。調査、データなど、誰もが納得する「裏付け」があれば、判断がブレることはない。

5.想定される「品質リスク」を極小化し、極力、関連するプロセスに渡さないようにする。

リスクの対応は、一般的に「回避」「移転」「低減」」「保有」の4つに分類される。これにより「品質リスク」を極小化し、極力、関連するプロセスに渡さないようにすることが基本である。 もし関連するプロセスに引き渡さざるを得ない場合は、「品質リスク」情報を関連するプロセスへ的確に伝えることも必要である。

このような視点は、一見難しい「品質リスク」への対処において、それを実践する人とって一つの拠り所になるはずである。

コンサルタントプロフィール

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テクニカルアドバイザー チーフ・コンサルタント
村井重雄

IEの改善技術、測定技術をベースに様々な業種で生産効率化、コストリダクション、作業改善、業務改善、品質改善などを手掛ける。

これらの領域の経験をベースに、現在は食品業界を専門に、品質保証、品質改善、食品安全管理の体制構築、生産性向上、業務改善、環境保全体制の構築、労働安全衛生改善などを手掛ける。

【主なコンサルティングテーマ】

  • 品質マネジメントシステム構築(ISO9001品質保証システム)支援
  • 食品安全管理システムの構築(FSSC22000認証取得)支援
  • 生産管理システムの構築・運用(FSSC2200認証取得)支援
  • 全社品質保証体制の構築支援
  • 品質リスクマネジメントの取組み支援 など

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