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経営層が見ている品質 「ODM/OEM/EMSを効果的に活用し、経営成果につなげる」

JQMQvol.20 201507.pdf

 日本のモノづくりは新しい局面を迎えている。例えば、

・グローバル化、低価格化の加速による、製造工場の新興国へのシフト

・日本市場の縮小に伴い、マーケットを海外に求める企業の増加

・開発設計機能の新興国への移転の開始

などである。企業によっては自社の製造工場をあきらめ、新興国の製造専業メーカーへの製造委託(EMS: Electric Manufacturing Service、OEM: Original Equipment Manufacturing/Manufacturer)の活用、一部の設計委託(ODM: Original Design Manufacturer)の推進を加速させている。

こうした委託は商品ラインナップの拡充、新興国向け商品の安価な設計・製造の実現というメリットがある反面、自社の設計力、生産技術力、品質保証力を低下させる恐れがある。

最近、電機系企業において、若手設計者の主業務が要求仕様書の作成や委託先の進捗管理となった結果、技術的なスキルを無くしてしまったとよく聞く。ベテラン設計者はEMSの生産技術、開発購買、量産立ち上げのサポート、トラブルシューティングといった業務を抱えているため、新規商品の開発に携わる時間が大幅に減ったという話しもある。

新興国のOEM/EMS/ODMは必ずしも技術力が高いわけでは無い。多少のフォローアップ業務はやむを得ないが、新規商品の開発力・技術力が落ちては元も子もない。これでは本末転倒である。OEM/EMS/ODMを活用し、経営成果、品質低下を防止するためにはOEM/EMS/ODMマネジメント、体制、人材を組織的に強化する必要がある。

そのためには、

・自社と委託先がWin-Winになるための契約作り

・委託先との開発プロセス/QMSの連動

・中長期的なアライアンス計画

・コア技術以外の積極的な技術支援・開示

・開発設計スタート段階からの協調V字評価計画

といったことが求められる。

これらのマネジメント施策とコストメリットのトレードオフの推進をマネジメントすることによって、経営成果に直結すると考える。あわせて、自社、委託先を対象として、こうしたマネジメントを推進できる人材を中長期的に育成することが求められる。

経営層にはOEM/EMS/ODMは諸刃の剣であることをぜひご理解いただきたい。

コンサルタントプロフィール

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シニア・コンサルタント 野元 伸一郎

東京理科大学大学院修士課程経営工学専攻修了後、1993年にJMAC入社。一貫して研究・開発分野のコンサルティングを実施。設計品質向上をベースにした開発プロセス革新/コンカレントエンジニアリング、プロジェクトマネジメント、技術ロードマップ構築等を数多く推進している。2012/3に北陸先端科学技術大学院博士後期課程で知識科学博士号を取得。2016/3までJMAホールディングス ASEAN推進センター長を兼任し、AEC(ASEAN経済共同体)以降を見据えたASEANビジネスのあり方、各地域別に求められる製品品質・サービス品質について、研究、事業化を行っている。

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