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第8回 経営改革の推進に必要な視点は何か~ 財務・事業・管理の3視点 ~

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

経営改革の全体像を認識して推進せよ

経営改革とは「企業や事業の経営を改革(チェンジ)する意思決定と行動」と定義づけました。では、企業や事業の経営の全体像は、どのような視点でとらえたらよいのでしょうか?
私は、JMACの諸先輩から、「経営は、財務・事業面・管理の3側面から見るとその全体像が明らかになる」と教わりました。以降、この3つの側面を「経営改革の3視点」とし、業種・業態を超えて様々な企業や事業の経営改革支援に適用してきました。これら3視点は、経営改革の全体像を認識し改革活動を推進する上で、きわめて重要な役割を果たしています。それぞれの意味や内容は、私なりに解釈し、活用していますが、詳しくは今後この知恵ぶくろの中で触れていきたいと思っています。今回は、この3つの視点について、簡単に説明をしておきましょう。

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財務目標による改革推進と財務戦略の実行を

財務とは、企業や事業の経営活動の原資であり、また経営活動によって生み出される経営成果を意味します。一般的に財務と言うと、営業利益をはじめとする利益が思い浮かびますが、キャッシュフロー経営が注目される現在、現金収支がますます重要な時代を迎えたと言えるでしょう。財務は、人間の体で言えば血液に相当し、これが不足すると経営が立ちいかなくなります。

経営改革にあたっては、最終成果である経営成果として財務目標を設定し、その実現を事業・管理の両面から図ることが肝要だと考えています。また、中長期的には、目指したい「財務構造(財務モデル)」と戦略を策定する「財務戦略」の重要性が増しています。

事業戦略と事業運営を連動させる

事業は、企業の存在価値および経済価値の源泉であり、企業の命と言えるものです。経営改革の中核を占めると言ってもよいでしょう。私は、事業とは、市場・顧客に対する商品およびサービスの提供、それに向けた運営を通して、「顧客満足の高い価値」を創出することで、成り立っていると考えています。したがって、事業面からの経営改革は、事業を戦略面と運営面に大別し、相互に関連づけながら推進していく方法を、企業の皆さまに推奨しています。

事業戦略面での経営改革では、企業戦略においてその企業がどのような市場・顧客にどのような商品・サービスを提供することで、社会に貢献するかを示す「事業領域」の改革に取り組まなければなりません。つまり、事業構造をいかにして築き、実現していくかという「事業構成」の改革への取り組みが中心となります。また、「事業領域」の改革に加え、「個々の事業の運営方法(オペレーション)」に対する戦略的方向づけも肝要です。これは、事業戦略の一環として、その戦略の実現方法を示す「事業モデル」を明確にすることです。「事業モデル」は、本来、事業の利益やキャッシュが還元できる事業の仕組みを指しますが、ITの進展や経営資源のアウトソーシング活用に伴い、その重要度がますます高まっています。

事業運営面からの改革は、前述の事業戦略を具体化・実行するもので、組織・システム・人の3視点からのビジネス・プロセス改革を行うものです。メーカーであれば、研究開発、購買・生産、マーケティング・営業、物流・アフターサービスなど、機能領域における改革が対象となります。どんなに立派な事業戦略を立てても、その戦略を実現する力となる事業の運営力(オペレーション力)が不足していれば、経営成果は達成できません。この事業運営面からの改革は、グローバール化、アウトソーシング、ITなどの発展によって、広範で時間を超えた機能連携改革の時代に突入しているだけに、その実行が急がれると言っても過言ではないでしょう。

人のマネジメントと経営管理システムを改革する

ここで言う管理とは、コントロールではなく、事業や部門を超えた全社的な立場から、事業面を支える会社の基盤(インフラ)となるマネジメントを意味します。マネジメントは、「企業の経営体質」を表しているとも言えますが、その中核をなすのは、「組織と人に関するマネジメント」、そして「経営管理システムに関するマネジメント」、この二つです。「組織と人に関するマネジメント」とは、組織の構造と運用、人材資源の採用と開発、組織と個人の活性化、組織風土・企業文化などです。一方、「経営管理システムに関するマネジメント」は、中期計画および短期計画の策定と実行評価の仕組みを内容とする経営管理システムを対象としています。両者を、財務面や事業面と関連づけながらとらえ直すと、企業内部の課題とも言える経営体質問題が浮かび上がってきます。経営改革の推進にあたっては、マネジメントの考え方と仕組みを改革することによって、企業の経営体質を変革することが必要不可欠なのです。

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