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第41回 デマンド&サプライチェーン発想

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

今回は自社事業の需要と供給の連鎖構造を図式化して事業ユニットの設定や事業戦略を検討するデマンド&サプライチェーン発想を紹介します。

デマンドチェーン発想

ここでデマンドチェーンとは、需要の連鎖構造を意味します。自社事業の顧客は誰か、顧客の顧客は誰かなど需要の流れを図式化して事業ユニットの設定や事業革新に役立てることをデマンドチェーン発想と呼んでいます。
次の図は化学会社E社の建材事業のデマンドチェーンです。

mg41_1.jpg

E社の需要喚起活動は、代理店への間接需要喚起と代理店の得意先であるハウスメーカー等への直接需要喚起の2つがあることを表現しています。
営業のアタックポイントは、昔は代理店中心でしたが、今は自社ブランドのシステム製品の増加もあり建築仕様の決定先であるハウスメーカーやゼネコン・設計事務所へシフトしています。このことは、「間接需要BU」と「直接需要BU」の2つ事業ユニットを設定することの重要性を示唆しています。

また、E社はシステム製品のブランドを市場に浸透させるために最終ユーザーである入居者や施主をマーケティング活動のアタックポイントとして需要喚起する顧客戦略の必要性を示しています。デマンドチェーンの見える化によって、次のような自社事業の需要構造認識や事業革新の着眼を発想することを可能とします。

・顧客(得意先)は誰か? 

・顧客(得意先)の顧客は誰か?

・デマンドチェーンの支配者は誰か

・アタックポイントはどこか?変化しているか?

・利益は還元されるか?付加価値を生む位置にいるか?

・マーケティングのアタックポイントを変更させる

・流通チャネル戦略を変える

・取引制度を改革する

・市場・顧客情報を活用する情報システを導入するなど

サプライチェーン発想

ここでサプライチェーンとは、供給の連鎖構造を意味します。
事業の川上(原材料調達)~川中(企画・製造・販売)~川下(流通・最終消費)の商品供給の流れを図式化して事業ユニットの設定や事業革新に役立てることをサプライチェーン発想と呼んでいます。

(下図 K社のサプライチェーンを参照)

サプライチェーンの見える化によって、次のような自社事業の供給構造認識や事業革新の着眼点から発想することが可能となります。

・顧客(得意先)は誰か?

・商品の輸配送先はどこか?

・サプライヤー(原材料や商品の供給者)は誰か?

・サプライヤーのサプライヤーは誰か?

・サプライチェーンの支配者は誰か? 川上か?川中か?川下か

・利益は還元されるか? 付加価値を生む位置にいるか?

・サプライチェーンコストはどの位か?

・エンドユーザー起点の需要に基づく供給を実現する

・流通コストの抜本的削減や流通在庫の最適化をする

・サプライヤーの統合や分散をする

・自社事業の生産拠点や物流拠点を見直す

・サプライチェーン全体を垂直統合する

・サプライチェーン・マネジメントを可能とする情報システムを推進するなど

K社のサプライチェーン発想

次の図は企画・製造・販売の業態であるK社のサプライチェーンです。

mg41_2.jpg

K社は衣料洋品(身の回り品)の自社ブランド品およびライセンスブランド品を、商品の素材調達から企画・製造・販売まで行う業態を特徴とする企業です。
商品の需要と供給のマッチングによって販売機会損失の防止と在庫の適正化を実現する力が事業のKFSとなる業態です。K社のような業態は、商品の素材調達から企画・製造・販売までのビジネスプロセスが長く、情報と物の流れが組織や企業を超えて発生します。

サプライチェーンを共通認識して経営改革に取り組むことが必須と言えます。K社は事業ユニットを顧客(得意先)面から「百貨店BU」、「チェーン店BU」、「専門店BU」、「直営BU」の4BUを経営しています。その上で、事業全体の営業利益とキャッシュフローを高めるために自社のサプライチェーンを強みとすべく次のような事業革新を推進しています。

① BUを意識したSCM改革
・BU別のサプライチェーン形成
・BU別の貢献利益管理による収益改革

② 店頭起点をベースにした商品の需要と供給のマッチング力向上
・実流(顧客の店頭販売数)の把握による販売・生産・在庫計画の策定
・販売・生産・在庫計画の実行・検証・是正のマネジメントの徹底
・商品アイテムの見直しと適正化

③ 流通コストと在庫の全体最適化推進
・BU別の流通コストと在庫の把握
・流通センターの統合と戦略的配置

④ 事業競争力強化のためのIT活用
・海外生産工場の生産管理システムの再構築と活用
・SCM全体の情報システムの高度化
・事業連結管理会計システムの導入活用

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