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寺川 正浩
国内の成熟市場で成長するために

第8回 「ニーズ後追い型企業」は自社の戦略をどうつくるべきか?

 前回は、国内の成熟市場の中で消費者にもっとも近い小売業界やアパレル業界をサンプルに、新たな需要を喚起しようとする業界が人口動態、消費者行動・意識の変化をどのように嗅ぎ取って、どんな取組みや挑戦をしているかを紹介しました。

 これに対して、「ニーズ後追い型企業」は自社にとってのチャンスを逃さないために、自社の周辺業界や川下(より消費者寄りの業界)の動きを、人口動態、消費者行動・意識の変化を含めて整理していくことが重要です。ちなみに「ニーズ後追い型企業」とは、消費者行動・意識のわずかな変化に対してすぐに仕掛けることなく、少しでも確実性の高い世の中の動きに対してムダのない動きをしていく企業を指します(※当コラム内だけの定義です。詳しくは第5、6回をお読みください)。

消費者意識の変化に連動するチャネルの取組みを俯瞰する

 図は、食品関連メーカーの戦略立案に向けた整理の要約版サンプルです。

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 この図の下から追っていきましょう。まずは人口動態の変化です。その中で自社が意識すべき消費者の行動や意識の変化を人口動態の変化と関連づけて整理しています。

 次に、消費者とダイレクトに接点を持っている業界の動きや取組みを、消費者の行動や意識の変化とリンクさせて整理していくことになります。

 このケースでは、自社(=食品メーカー)のチャネルの動きや川下の動きということになります。ここで大事なのは、既存のチャネルだけでなく可能性のあるチャネルもチョイスすることです。『業種別審査辞典』(きんざい刊)でも使ってブレストしながら、すべての業界をチェックするくらいはやっておきたいところです。

 また、このコラムではマクロの動きには触れていませんが、当然政治面における各種優遇・規制や制度の変更(変更計画)に伴うチャネルやサプライヤーの動きの変化も抽出しておく必要があります。ここは忘れないようにしないといけません。

 そして各チャネルが、消費者変化に対して何をして消費者の潜在ニーズを呼び起こそうとしているか、前回の小売業界やアパレル業界のような取組みをまとめます。

 この一連の作業によって、現在の取りこぼしやこれからのチャンスを俯瞰して確認することができます。そして自社の強みと照らし合わせながら、今後の戦略立案につなげていくのです。

「ニーズ後追い型企業」でも需要創造型の取組みは可能

 たとえば、先の図のケースでいくと、「オフィス(法人企業)」チャネルはこれまでまったく無関心であった企業は見落としがちです。今回の整理によってしっかりとチャンスをあぶり出していくのです。

 まず、政治面の変化として「働き方改革」があります。これによって消費者(従業員)の生活の変化が確実に起こっています。朝型勤務が増えたり、在宅勤務が増えたり、働き方が多様化し、これまでなかったニーズが生まれています。オフィスで朝食を食べるようになったり、自宅の書斎を充実させたり、そのような変化は図の「消費者の行動や意識の変化」に整理されます。

 それとリンクして今後アクセスしていく可能性のあるチャネルとして「オフィス(法人企業)」が浮かび上がってくるはずです。オフィス需要に着目し、新たな需要を創造した事例では、オフィスグリコやネスカフェアンバサダーが有名で、働き方改革でその市場は確実に大きくなっています。

 実際、働き方改革に伴う、新たなビジネスチャンスの取込みは、すでに活気づいています。オフィス街に夕飯の買い物が楽にできるようにオフィスビルで食材キットが販売されたり、在宅勤務向けのサポートサービスはもちろん、在宅勤務向けのマンションが注目されたりなど、さまざまです。そして大事なのは、働き方改革を推進するために、各法人企業(管理部門)がそこに一定の予算を持ち始めたということです。

 早く出勤する人には朝食を無料で提供しようとする企業に、法人向けの商品・サービスを整える宅配会社が増えてきました。また、福利厚生サービスを提供する会社や警備会社は、従業員向けの健康サービスメニューを充実させています。顧客企業の社員の健診結果と病院の受診記録データから、病気にかかるリスクの高い社員を抽出して指導する企業もあるようです。さらに音楽配信企業は、労働安全衛生法の改正により新たに設けられた従業員の「ストレスチェック」に注目して、ストレス改善につながるオフィス向けBGMを充実させるなど、取引チャネルを拡大させています。

 このような整理をしていけば、自社周辺で起こっているチャンスと自社の強みとを掛け合わせたときに、「ニーズ後追い型企業」でも需要創造型の戦略や取組みが生まれても何ら不思議ではありません。後手のスタートであっても、先を行っている企業に追い着き追い越すことも可能です。

 そのためには、アイデア出しで終わらせてはいけません。きちんと定量化していくことです。そこにどれだけの市場があるのか、中長期的に拡大していくのか、採算はあるのかの数字が必要です。「ニーズ後追い型企業」だからこそ、そこは手堅く進めなければいけません。アイデアで膨らませたものを一度絞り込んで絞り込んだターゲットを再度膨らませて検討する進め方は、ターゲティングの基本ですので、ここでは割愛します。

 前回と今回で、成熟市場でシームレス化が進む中での、従来の業界概念にとらわれないこれからの消費者目線による商品・サービスの見方、そして消費者変化を読み取ってのチャンスの抽出の仕方を述べてきました。

一方、シームレス化と同時にコモディティ化も進行しています。異業種間でもコモディティ化が進み、消費者の刺激が減りはじめると、あらためて「地域」が特徴や個性を打ち出す大事な切り口の一つになってきています。次回は成熟市場におけるエリアマーケティングを取り上げます。

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コンサルタントプロフィール

寺川 正浩

ビジネスプロセスデザインセンター チーフ・コンサルタント

寺川 正浩

1997年 JMAC入社。専門はマーケティング・営業領域。戦略策定から、戦略を実現するための業務プロセスの設計、KPIを活用したマネジメントの仕組みづくりを経て、実施・定着化までの一貫したコンサルティングを行う。小売・サービス業、食品メーカー、アパレルメーカー、医薬品メーカーなど幅広い範囲を支援。共著に『実務入門 「仮説」の作り方・活かし方』『実務入門 営業計画の立て方・つくり方』(いずれも日本能率協会マネジメントセンター)、「サービスプロセス改善事例集2010」(日経BP寄稿)、「流通業の顧客戦略とCRM」(日経MJ新聞寄稿)ほか多数。


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