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第6回 仮説・検証ツール 〜仮想カタログの作成〜

1.カスタマーフォーカス(Customer Focus)

 この言葉は、欧米のテクノロジーマネジメントの領域ではなじみ深い言葉です。顧客を定義し、顧客の潜在ニーズを引出し、そこから技術課題解決を図ることを目的にしています。
 JMACのRD部門では、20年ほど前からこれを提唱し、もっとも使われてきた手法です。以下にコンサルテイング手順を示します。

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 事業の中核を占めるのが「自らのビジョン」です。ビジョンが"単なる金儲け"のようなものだと"力強い思い"に発展しない感じがします。われわれの描く事業の顧客は誰か、真のニーズ・貢献価値は何か、など心の底から納得できるものが必要です。そして、それに対してどう差別化して提案するか、技術課題をどう解決するか、売れるストーリーは何かなどのシナリオ化が必要です。
 JMACでは、このときの先行技術開発テーマの抽出をとくに重要視しています。そのためには先出しジャンケンで顧客に提案し、そこからリバウンドを拾い、技術開発テーマを検討します。

2.仮想カタログの作成( Creating a Virtual Catalog )

 下図にフォーマットを示します。

col_mot_06_02.png

 構造は点線より下が顧客に示す部分で、上の部分が社内説明用です。社内では、事業の目的がまず大切で、「なぜこれを事業化・商品化するのか?」をシンプルに記述する必要があります。前提条件は事業が成り立つ条件のことで、法規制の変化や制約条件がある場合は記述します。左側の列にあるのが、顧客価値を訴求する項目で、セールスポイント、セールストーク、コンセプト、顧客メリットを記述します。最下部は差別化ポイントで、特許優位性や自社の強みを記入します。右側の実現方法は、技術、コスト、売り方が入ります。
 これらを想定顧客に実際に提示して、顧客との議論から潜在ニーズや背景を検討します。実際の場面では、初回はまずニーズを聞くのが精一杯ですが、ここらか顧客との関係の第一歩がスタートします。
 JMACの通説では、自らの提案がないままにお客さまのニーズを理解しようとしても、
・声の大きいお客さまに振り回される
・過剰な努力目標(仕様)により困難な開発を強いられる
・結果的に、一品開発となり効率が悪くなる
という事態に陥りがちです(これは、代々コンサルタントに受け継がれてきたキーワードです)。

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