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JMAC品質経営研究所だより Vol.18
マレーシアプラントツアーを通し、その国の文化や考え方の違いを痛感!

  • 生産・ものづくり

宗 裕二

多様な人種や宗教の従業員で成り立つマレーシア工場

 レーシアの地方都市にある工場を訪れたことがある。18-1.jpg
その地方都市には日本人が一握りしかおらず、都会的な高層マンションと長屋のような建物とが混在し、情緒豊かな昔ながらの市場があると思えば、日本の大型スーパーマーケットも営業しているといった具合だ。

 日本企業のマレーシア工場では、中華系やマレー系の従業員が多く働き、数名の日本人が管理者、技術者として働いている。宗教もイスラム教、仏教、ヒンズー教など多様だ。

 私達は仕事で来ているので、限られた日程内に工場内の現場を直接見て回り、問題点を発見してレポートを書かなくてはならない。現地の言語は分からないので通訳さんを通じて現場の担当者に確認しながらプラントツアーをする。

 たまたま、今回の通訳さんは、この工場の従業員でイスラム教徒だそうで、宗教上の理由から握手をしてくれなかった。勿論丁寧に握手できない理由を説明をしてくれた上で拒否された。なるほど、そうゆうものなのかと理解し、大きな違和感はなかった。

国が変われば文化を理解した上で配慮しなければならない問題がある

 からスケジュールに従って現場を回り始めたところ、途中で通訳を担当してくれていた従業員が急にフラフラッと倒れてしまった。大丈夫かと心配したが、「ラマダンの影響でしょう」と周りの従業員は言う。

 工場を訪れたその時は、丁度イスラム教のラマダンの最終日に当たってしまったようで、敬虔なイスラム教徒である通訳担当の従業員は断食期間の最終日であったのだろう、体力の限界が来たのだと思われる。

 工場を歩いて回ると相当な距離を歩くことになり、結構体力がいるのだが、何も食べていなければ、それはきつかろう。どこでも同じように行われるプラントツアーでも、国が変われば文化を理解した上で配慮しなければならない問題が在ることを痛感した。品質はその国の文化を知らなければ語れないと自分で言っておきながら、何とも勉強不足であった。

その国の文化として「二級品」が流通することには意味があり、背景がある

本企業の工業製品は、工場から出荷する際には良品を出荷するのが当たり前であって、二級品や、格落品といった概念はあまりない。ただし一部、食品などでは二級品、三級品などの格付けをして販売する場合もあるし、「訳あり品」とうたって、安く販売する場合もある。

 しかし、工場から出荷する製品は「良品」のみを出荷するのが当たり前の概念であるし、完成品ではなく、部品として使用される製品の場合はなおさらである。

 18-3.jpgところが、ここマレーシアでは、「二級品」として流通する場合があるようだ。勿論、市場でどのように扱われるかを企業が統制することは出来ないが、工場から出荷する際には、企業としてのブランドを守るためにも、「二級品」なるものを出荷するわけにはいかない。  従って、良品以外の製品、半製品の確実な廃棄がとても重要になる。一般市民の安全に関わる製品の場合はなおさらである。

 しかし、その国の文化として「二級品」が流通することには意味があり、背景があるはずである。もっと深く勉強しなければならないとも感じた。そこにはとても合理的で納得できる考え方があるのかも知れない。色々なこと知れば知るほど勉強しなければならないことが増え、楽しみが増える。

 昨年は全く海外に出られなかったし、恐らく今年も難しいかも知れない。早く、コロナ禍から抜け出し、多くの健全なる刺激を受けながら、仕事をしたいものである。

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