ビジネスインサイツ60
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このように「変わってきた」という手応えがないと、ど んな活動でも停滞してしまう。西方氏自身は、本プロジェ クトの「手応え」に対して常に敏感になっていたという。 「現場が変わっていく実感がないと、絶対に失敗すると 思っていました。日々、どう進化しているか常に検証した がっていたと思います。事務局との「適度な距離」を保ち ながら、上がってくる情報には常に敏感でした。ずっとア ンテナを張り続けていた感じです(笑) 」 (西方氏) 事実、定例の報告会は月に 1 回ということになっては いたが、 事務局や JMAC で 「これは今相談しないとマズイ」 ということで相談がもちかけられると、西方氏はなるべく 時間を割いて話を聞いていたという。 JMAC にとっては、支援と現場がかみ合った状態にし つつ、さらにそのレベルを上げていくことがカギだった。 松田は「活動支援のギアの上げ方とアクセルの踏み方に は、気を遣いました。しかし、西方さんは『ここは今は成 果が出ていないけど、これでいい』などと皆の前でピシっ とおっしゃるので、現場も納得するのです。それに小林さ んも板井さんもタスクフォースとしてすばらしい活躍ぶり でした。チーム力の発揮が大きなポイントになりました」 と振り返る。 そして現在、西方氏は真の意味で効果が発現していると 実感できるのは、工場の改善発表会だという。若い従業員 たちが科学的なデータに基づいて「こうしたらこのような 成果が出た」という発表が目白押しに登場するのである。 「2011 年当時と比べ、すべてにおいて良い数値が出て いて、 トリプルゼロの継続でもかなりの成果を上げました。 発表会をのぞいてみると、 現場ががんばっているからこそ、 良い数値が出ていることを本当に実感できます」 (西方氏) 2011 年に設定した目標については、確かに一定の成果 を得ることができた。しかし、すべてのものづくり企業が そうであるように、ポーラ化成工業を取り巻く市場環境も 急激に変化している。内部的には 2014 年に工場を統合し たため、現在は海外も含めた外注の品質問題、原価問題に 取り組んでいる。西方氏自身は、とくに設計段階での不具 合の早期発見において、上流設計を同社が実施し、途中か ら何段階にもなる外注に依存している場合、実生産のどの 程度手前で「打ち手」を出せるかが、非常に難しいという ことを認識している。 「これからの市場環境で、品質保証の投入コストと得ら れる成果の適正値など、まだまだ解答が見えていないこと もあります。内部的には『マイスター』などのキーマンが 育ってきたので、維持・継続という面では大丈夫だと思い ます。ただ、これからの顧客オリエンテッドできちんと分 けた取組み、サプライチェーンやバリューチェーンの問題 も含めて、次の改革フェーズのキーワードをあげて取り組 んでおります」 (西方氏) 現場が変わったという実感、成果を出す自信、維持・継 続していく仕組みは、次の改革フェーズでも大いに生かさ れるだろう。厳しい市場環境下でも、同社の卓越した開発 力・技術力・ものづくりの現場力は、新しい「お客さまの 感動」を生み続けるに違いない。
市場環境の変化に対応する 次の打ち手に挑戦していく
体 質 改 善 は、 人・ 現 場・ 組 織 を 育 て ていく経営者の信 念があってこそ!
担 当 コ ンサルタントからの一言
自律的運用がスムーズにできる体質づく りを !
品質問題は体質問題でもあり、 その「体質を変えたい」という声を耳にします。 それには、意識・考え方など体質改善だけでは足りず、目的達成のためのアプ 変えることが必要です。結果、現場で「おかしさ、リスク」を察知、伝達、組 ローチ(科学的問題解決、組織的な動きを規定するシステム改善)とセットで 織で考え対処する自律的運用がスムーズにできるような体質づくりが可能にな ります。このためには経営者が自分の信念に基づき、一定の成長(熟成)期間 をとって一貫した考え ・ 姿勢で人 ・ 現場 ・ 組織を育てていくことが必要です。 ポー ラ化成工業ではそれがうまくできたのだと考えます。
松田 将寿
シニア・コンサルタント
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