第7回 人と組織の力を引き出すファシリテーション〜会議改革が企業の効率化と体質強化を促進する〜

山田 豊 (やまだ ゆたか) チーフ・コンサルタント
製造業の技術部門をはじめ、幅広い業種、分野における業務改善や、組織の活性化に関する多くのコンサルティング実績を持つ。特に、「個人」や「集団」の可能性を最大限に引き出しながら、改革を推進するファシリテーション型のコンサルティング支援を得意とする。近年は、「会議改革」を切り口とした全社的な改革推進をはじめ、ファシリテーター養成、コーチング支援などを中心に、研修およびコンサルティングをリードする。

ファシリテーションが組織を変える “人”の力に注目が集まる時代

改善活動は “人”の時代へ

最近、“ファシリテーション”という言葉を耳にする機会が多くなった。ビジネスだけでなく、教育・学習や社会的活動の場など、幅広い分野で使用されている。本来、ファシリテーションとはどのような言葉で、どんなスキルを指すものだろうか。山田は、「人間が集まったとき、その場に設定された目的の達成を促進することを、ファシリテーションと呼ぶことが多いようです」と説明する。「もともとファシリテーションとは“促進”という意味です。集団での活動を促進する人をファシリテーター、そのための機能をファシリテーションと呼びます。以前はパネルディスカッションなどの進行役をコーディネーターと呼んでいましたが、今はファシリテーターと呼ぶことが多くなっており、さまざまなシーンで使われているのです」
コミュニケーション・スキルであるファシリテーションが、ビジネスの場で登場してきた背景には、「“人”、に焦点が当たる時代になったことに関係あります」と山田はいう。「バブル以降、ビジネス立て直しの必要性などから、プロセスを見直して品質維持や効率化を目指すという動きがありました。企業のなかの手続きや制度が整備されてくると、今度はそこで人の力を発揮できなければ、新しい付加価値は出ないという点に関心が集まったのです」そこで、人の力を伸ばすスキルとして2000年頃から企業でのファシリテーションが注目され始めた。

イノベーション・トライアングルで見る 大きな改善活動のサイクル

ファシリテーションよりはやく注目されたキーワードに“コーチング”がある。ファシリテーションと同じ“人”の力を伸ばすためのものだが、両者の違いを山田は「コーチングは1対1、ファシリテーションは1対多(グループ)を対象とする」と表現する。「先にコーチングが普及していくなかで、ビジネスの現場では1対多という場もあることに意識が広がり、ファシリテーションが注目されました」いずれも“人”に注目したアプローチだが、こうした改善・改革のアプローチにはサイクルがあると山田はいう。
JMACでは、改善・改革アプローチとして“イノベーション・トライアングル”をよく用いる。企業、経営者が注目する部分は、このトライアングルの上で順番に起きているという。「イノベーション・トライアングルには、製品を直接的に改善する『プロダクトイノベーション』、手順や手法を見直す『プロセスイノベーション』、そしてそれらを生み出す人の意識と行動を変える『マインドイノベーション』の3つの要素があります。80年代の改革は、製品の品質を向上しようという動きでした。90年代になって起きた業務手順の見直しによる効率化などが、プロセスイノベーションにあたります。今は人の活用に焦点が当たることが増えてきています。このように時代によって注目を浴びる部分が循環しているのではないかと思います」この背景にはIT化により、生身でのコミュニケーションの機会が減ったことも関係しているだろう。

日本企業が長く抱える会議の問題 ファシリテーションが解決に導く

“ファシリテーション”“ファシリテーター”という言葉は、日本ではずいぶん認知度が上がってきた。時には単に会議をまとめる仕切役と誤解されている場合もあるという。しかし、海外企業では一般的な用語として使われているようだ。
日本のビジネス界で、ファシリテーション・スキルを持った人材を活用した例として、山田は日産自動車株式会社CEO、カルロス・ゴーン氏の手がけた改革をあげる。「ゴーン氏といえばコストカットなどの活動を思い浮かべる人が多いのですが、その他のものとしてCFT(Cross Functional Team)活動があります。これは部門間で連携した小集団活動なのですが、異なる部門の人たちが集まって建設的な改善活動ができるように、小集団には必ずファシリテーターを置くこととしたのです。これは効果的な活用方法だと思いましたね」このほかにもGeneral Electric社(GE)では、マネージャーにはファシリテーション・スキルの習得を必須条件としている。
「様々な企業でお話を伺うと、多くの企業は会議に問題意識を持っています。ファシリテーションは業界を限定しません。あらゆる企業で役立つことが期待できます」

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