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第86回 「営業マネージャーのための営業数字(1) ~売上高とシェアをみる~」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

営業マネージャーに必要な能力の一つに、「数字に強い」ということがあげられます。得意先を見るとき、方針を立てるとき、部下を指導するとき・・・・いずれにおいても、きちんと数字でとらえて判断・指導することが大事です。 営業マネージャーは、仕事の役割上大変忙しく、売上予算以外の数字には無頓着になりがちです。しかし、売上予算を達成するためには、他の数字も無視することはできません。計数的な目で得意先をみて、部下を指導することで、より具体的な対応ができるのです。

今回から数回にわたり、営業マネージャーが把握すべき基本的な数字について、解説いたします。今回は、「売上高とシェア」を取り上げます。

売上高のチェック項目

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売上高とシェアの関係は、上図のように示すことができ、以下8つの点をポイントにチェックします。

1.総売上高
2.エリア別売上高
3.担当者別売上高
4.得意先別売上高
5.商品別売上高
6.ストアカバレッジ ・・・ (自社取引店数÷取引対象店数)
7.インストアシェア ・・・ (4.得意先別売上高÷自社取引先の総売上高)
8.マーケットシェア ・・・ (2.エリア別売上高÷地域内需要量)

売上高をみるポイントとは

■業界の伸びに注意せよ
常に業界の伸びを意識して、売上予算や実績をチェックします。例えば、業界全体の需要の伸びが3%であるのに、自社の売上伸び率を20%アップと設定しても、達成の道筋をつけるのは大変難しいでしょう。あるいは、業界全体が10%伸びているのに、自社の伸び率目標を5%とおいたのでは、結果的にシェアダウンになってしまいます。

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■エリアごとの特性に着目せよ
上表に示すように、エリアによって需要規模や伸び率が違う場合、そのデータを正しく把握した上で、エリアごとに自社売上高の伸び率が、エリア需要を上回っているかをチェックします。特に、自社にとって重点としているエリアは、その動向を注視することが重要です。

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■得意先ごとの特性に着目せよ
エリアと同じように、得意先ごとの売上規模もそれぞれ違っています。拠点全体で売上高がどうなっているかだけでなく、自社とって重要な得意先で、売上目標が達成されているかをチェックします(上表参照)。

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■商品ごとのライフサイクルに着目せよ
商品にはライフサイクルがあり、それぞれに応じた特徴を示しています。自社商品が、どのライフサイクルにあるのかを的確にとらえることが、商品ごとえの売上高を予測するときに重要となります(上図参照)。

シェアをみるポイントとは

■ストアカバレッジで、量の管理を
「ストアカバレッジ」とは、特定地域における取引対象店のうち、自社商品の取引店数の割合です。例えば、A地区に1,000の小売店があるとして、B社の商品を扱っている600あるとき、「ストアカバレッジ」は60%です。この「ストアカバレッジ」は、取引の力関係を量として表している数字です。販売実績を継続的に維持するための条件であり、「見せかけのシェア」と言います。以上のことから、上位の企業にとっては、シェアを維持するための絶対条件です。しかし、仮に「ストアカバレッジ」を100%とったとしても、「マーケットシェア」も同様になるわけではありません。

■インストアシェアで、質の管理を
「インストアシェア」は、取引先における自社商品の売上高の比率を言います。例えば、A得意先の総売上高が1,000万円で、その中で自社商品の売上高合計が200万円とすると、「インストアシェア」は20%です。インストアシェア」20%と言っても、得意先の売上高規模(需要)によって、自社売上高も変わります。市場で有力店(通常は、大規模店)と呼ばれている店で、「インストアシェア」がどれくらい獲得できているかをチェックする必要があります。なぜならば、有力店をとれだけ押さえるかによって、その市場におけるシェア(マーケットシェア)が決まるからです。

■マーケットシェアは、4段階に分けよ
1.シェア10%未満で、業界・エリア・得意先で、商品の存在が認められていない
2.シェア10%を超えると、商品や企業の存在が認められる
3.シェア30%以上になると、安定した位置を占め、市場や得意先でプライスリーダーとなり、強者としての地位を確保できる
4.シェアが40%を超えると、ナンバーワンとして、市場における独占的地位を築く

このようなシェアの特徴は、販売店や流通チェーンの仕入政策に反映されることが多いようです。自社シェアを拡大するには、店内におけるシェアがどうなっているかをつかんだ上で、目標シェアを立て活動していくことが大切です。

(シニア・コンサルタント 笠井 和弥)

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