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第44回 「CS(Customer Satisfaction 顧客満足)の基本的考え方とこれからの方向②」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

企業がCSに取組む目的は、企業の継続的な成長の為ですが、、そのためには、常に変化する顧客の期待を把握し、全社あげそれに応える取組みを行い、他社に差別化するため「大変満足」評価を得ることが重要です。

顧客満足から顧客感動へ

まず、顧客対応の評価レベルを確認しておきましょう。顧客の期待する要求レベルに対し、どれだけ応えられたかを示したのが下図です。

mk44_1.jpg

レベル0は、顧客期待を大きく下回ったレベルです。

例えば、飲食店で注文をしてから長い時間待たされた上、出された料理が不味い経験をするとほとんどの人は、黙って去り二度とその店は利用しないでしょう。文句さえ言わないという最悪の評価を示します。

レベル1は、顧客の要求に最低限応えたというレベルです。

顧客にとって決して満足できないが、怒らせるほどではないという水準です。
おそらく、このような対応を受けた多くの人も、再度利用することはないでしょう。

レベル2は、なんとか顧客の期待を満たした水準です。

「ま、こんなものか」と不満はないが満足ではないという評価です。
CSに取組んでいる大半の企業は、レベル1もしくはレベル2の水準にあるようです。この水準にある企業は、顧客満足の前に、まず顧客が何を求めているのかを正確に把握することです。満足、不満に繋がっている要因は、価格なのか、接客対応なのか、あるいは、製品購入後のメンテナンスなのか・・・などを正確に捉え、その中身を解きほぐしていかかないと、課題も打ち手も見えません。

レベル3は、顧客の期待に応え、満足評価を与えられた水準です。

顧客にとって「期待しただけのリターンはあった」という評価です。顧客満足は、通常このレベルを指します。
しかし、顧客の要求水準は常に変化し、今の満足評価は、次の満足評価を保証しません。自社の商品・サービスはどのような特性を持っているのか、顧客はどういうことを重視して評価するのかを把握せず、満足度の高い低いだけで一喜一憂していては継続的な満足度維持は難しいです。この水準を確保できたのなら、顧客の期待を超える対応を目指していただきたいのです。

レベル4は、顧客に「すごくよかった」という評価を受けるよう期待以上の対応を提供するレベルです。

さらに、

レベル5は、顧客の期待を大きく上回るような感動がある対応を示すレベルです。

この水準の評価を得ると、多くの顧客は、「あの商品・サービスでないとだめだ」という反応を示してくれます。
CS向上に取組む大半の企業が、レベル3までは取り組むのですが、レベル4,5へ向け取組みを強化していくことは難しく、そのためには全社一体となった不断の努力が必要になります。CS取組みの大前提として、自社の顧客は誰かを明確にしておく必要があります。将来も含め、核となって取引していきたい顧客はどういう層なのかという未来へ向けた視点を持つことが大事です。

これからのCS推進のポイント

① 全部門の関わりによりシステムでCSを高める

アンケート調査やインタビュー調査を通じ顧客の声を集めることがCSの取組みではありません。マーケティングの原点である「自社の顧客は誰か」を明確にし、集めた顧客の声を分析し、組織全体としてCS向上を図るステップを描き、着実に実践し、結果を確認する仕組みとした活動推進に引き上げてください。

例えば、納期回答の正確性、欠品の最小化は、単なる運動では実現できないのです。CSは最前線で直接顧客と接している部門スタッフが行う取組みではありません。企業の全ての活動を図る「ものさし」として捉えることが重要です。

② 既成概念に囚われず素直に顧客の声を聴く

社内や業界では当たり前と認識していることが、顧客から見ると不満要因になっている可能性があります。立ち位置を顧客に置き換えて考えてみることです。それにより、違った課題や対策が見えてくるのです。

企業人なら誰でもわかっていることですが、正確に顧客の声を聴くことを実践するとなるとこれが難しいのです。CS調査票を設計する際も、アンケート項目が思いこみで作られないように、事業特性や、顧客がどういう点を重視しているのか正確に把握するため、既存顧客だけでなく将来主力顧客になってほしい顧客も含めモデル顧客を選定し事前インタビューで仮説検証を必ず実施しておくことです。

③ 企業と顧客の接点全てに目を向ける

日本のような少子高齢化社会の場合、あらゆる商品・サービスの需要が減っている中では、一人ひとりの満足度を高め、リピートオーダーを確保することが企業の命題となります。店頭、電話・ネットなどの通信、広告媒体、アフターサービスなど顧客と企業との接点は、多岐にわたります。顧客とのあらゆる接点において、最初の15秒が全体の印象を決めるという「真実の瞬間」をいかに大事にするかです。

顧客との全ての接点に目を向け、顧客が製品やサービスを利用する全ての時間帯で価値を提供し続けるライフタイムバリューを重視した顧客との関係づくり(リレーションシップ・マネジメント)が重要となります。商品・サービスを購入する顧客は、一般的に購入時の満足度が最も高い傾向があります。

例えば、新車購入のケースでみてみます。多くの自動車ディーラーは、車の購入時までは非常に手厚く接客対応をします。しかし、購入後は、時間経過とともに加速度的に対応レベルが悪くなり、顧客満足度も低下します。その結果、買い替え前の時点では、多くのユーザーが、別のディーラーからの購入を検討します。

書籍を始めとしたインタネット通信販売巨大企業アマゾンは、顧客とのあらゆる接点で以下のようなきめ細かい対応をシステム化しています。受注受付→受注受付がなされた旨の通知→在庫有無の通知→納品日の通知(在庫切れの場合には納入が遅れることの了解取付)→確定納品時間の通知→配送車到着→配送車駐車→挨拶→荷下・開梱→ダメージの有無の確認→納品書、受領証の交換→挨拶→配送車に乗って出発

あなたの会社の顧客接点におけるサービスレベルは、いかがでしょうか。

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