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第98回 たえまなき経営改革実現に向けて(7) ~経営改革研修を企画する~

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

今回は、経営改革研修の企画の考え方、そして、経営改革マスタープラン策定研修の事例をご紹介します。

自社に合った研修を企画するには

自社の経営改革人材づくりに合った研修を企画する場合、いろいろと知恵を出す必要があります。経営改革の基本的な考え方や方法を学習できればよい、とする会社もあります。そうではなく、経営改革の実践までを考えた研修をやりたい、と考える会社もあります。また、研修にかける時間や予算が限られているかどうかも、企画にあたっては重要になります。

経営改革研修の対象者選定も、重要です。経営層の場合は、全員が対象となるケースが多いのですが、マネージャークラスになると、選抜方式によってメンバーを選ぶ場合もあります。その他にも、社内研修だけでなく、オープンな社外研修の場を利用する、という考え方もあります。

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上図は、事業部長や本社部長などを対象とした、経営改革人材づくりの研修企画の考え方・タイプを表したものです。横軸は、研修の有効性(成果)を何に求めるかを示しています。「実践効果少」とは、経営改革の考え方や方法、事例を中心に学習する考え方を意味しています。実践するかどうかは各自にゆだねるという考え方、とも言えるでしょう。「実践効果大」とは、自社の経営改革課題をテーマに、生データを活用して実践に結びつける、という考え方を意味しています。実践することを前提にした考えと言えます。

縦軸は、研修実現の可能性ですが、時間や予算が投入できるかどうか、という考え方を示しています。研修対象者が忙しく研修に時間を投入できない、研修予算も限られている場合は、研修企画者は大変ですが、制約がある中で知恵を絞る必要があります。逆に、時間も予算も無制限ではないが、ある程度は投入する、という考え方もあります。この場合は、経営者も研修成果をより期待しますので、研修企画者はさらに知恵出しをする必要があります。

前回ご紹介した、Nグループの経営改革研修は、経営改革の基本を学習することに加え、実践を重視した考え方で、時間・予算をかけたパターンになります。一方、一部の大手企業では、理論+ケーススタディに時間・予算をかけたパターンも目立ちます。これは、グローバル化や高度IT活用に伴い、まずは理論武装と先進事例を学ぶことを重視しているからだと考えられます。もちろん、経営改革の基本について、その考え方と事例を中心に学ぶ方法もありますが、その有効性は限定的になってしまいます。多くの場合、経営改革の基本についてのレクチャーを半日ほどで行い、そのうえで、自社の実践研修を集合合宿(1泊2日もしくは2泊3日)方式でコンパクトに進めることが多いようです。

経営改革マスタープラン研修例

K社は、複数事業を海外にも急速に展開する電子部品メーカーです。次の事業部長候補者を対象とした、経営改革人材づくりが目的です。目指す姿は、ワンランク上の経営改革人材づくり、特に高い視野に立って先を見通すことができる、経営改革人材です。ビジネスモデルを変革する事業戦略力(全体像のデザイン力)をコアとした、経営改革マスタープラン策定力を身につけることが、ポイントとされました。

事業戦略力は、仕事面における知識・スキルです。一方、全体像のデザイン力は、仕事面のみならず、経営者としてのリーダーシップ力に通じる能力です。事業メンバーを引っ張るためには、目指す方向を示す、この全体像のデザイン力(コンセプチュアル力)が欠かせません。

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上の図は、実践研修方式による、K社の経営改革マスタープラン策定の進め方を示しています。JMACの実践研修プログラムをカスタマイズした例です。

JMACの実践研修プログラムは、コンサルティングベースであることが特徴です。経営改革の基本と事例を学びながら、コンサルティング経験をベースとしたプログラム構成によって、自社の実践に結びつけることです。また、財務・事業・管理の3面の統合経営改革力を身につけることも、特徴の一つです。必要に応じて、自社のたえまない経営改革力を診断するプログラムも選択できます。

これからの事業部長に求められるもの

グローバル化や情報通信技術の進展に伴い、事業部長に求められる能力も変化しています。財務面では、グループ経営を前提とした、連結経営財務や国際財務に関する知識も必要とされます。事業投資の成長性・収益性・安定性の判断力も問われます。事業面では、グローバルとローカルの2つの立場から、競争戦略を発想できるマーケティング力が重要です。IT活用を前提とした、ビジネスモデルを発想できることも問われます。管理面では、異なる価値観をもった多様な人材をマネジメントできる人間力も、重要です。海外人材の増加、雇用形態の違い、女性の社会進出などが、その背景にあります。

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