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第73回 実行評価システムを改革する

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

今回は、実行評価システムに必要不可欠な「迅速な検証」と「先行見通し」を高める考え方・方法をご紹介します。

Y社の実行評価システム

前回ご紹介したY社は、複数の商品群を持つ大手食品メーカーです。 同社の実行評価システムは、全社、各事業部、各部門の3つの組織階層で運用されています。 経営成果と現場成果の数値実績は、月次を中心に評価されています。 また、施策の実行度評価は月次で、戦略の実行度評価は四半期に行われていました。

経営企画室および事業部門・予算管理部門の経営管理関連メンバーは、実行評価システムについて次のような問題を認識していました。

・経営成果の実績把握が翌月7日ごろと遅く、スピード感に欠ける
・実行に伴う検証が不十分である
 ・・・生販一体損益やチャネル別損益が見えていない
・現場成果を経営成果につなげる仕組みがなく、現場の経営貢献度が見えない
・戦略と施策の実行度評価が個別で、整合性に欠けている
 ・・・中計のどこが達成できて、どこが達成できていないかが見えていない
・今後の見通し・先行予測を支援するシステムが十分でないため、対策が後手となる
・各部門マネージャーの経営管理力を向上させる必要がある

Y社実行評価システムの改革ポイント

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経営管理関連メンバーは、自社の意思決定と業績向上に役立つ実行評価システムにするために、上図に示す3つの改革ポイントを、社長に提案して具体化しました。

1つ目の「経営成果と戦略・施策の迅速な検証と先行見通し」とは、次のことを指しています。
 1.経営トップおよび事業部長・部門長は、月次・四半期・年の単位で実行評価システムを運用する
 2.経営成果の実績把握は、日次処理の徹底などにより翌月3日以内にする
 3.前回述べた中計戦略と年度施策の整合性を、月次・四半期等の運用フェーズで確認する
 4.経営成果の見通し・先行予測を可能にする、シミュレーション・システムを導入する

2つ目の「現場成果と施策の迅速な検証と先行見通し」とは、以下のことを意味しています。
 1.各部門長および第一線メンバーは、日次・週次・月次の単位で実行評価システムを運用する
 2.現場成果の実績把握は、リアルタイム処理を徹底する
 3.現場での施策の実行度合いを週次で意識し、月次検証する仕組みにする
 4.現場成果の見通し・先行予測を高める、モニタリング・システムを導入する

3つ目の「現場成果と経営成果の関連づけ」とは、次のことを指しています。
 1.各部門のQCDに関する現場成果が、どの経営成果(売上・コスト・利益やキャッシュフロー)に関連づけられるかを明確にする
 2.現場成果と経営成果の関連づけは、年計策定段階で目標展開の形で行う
 3.運用段階では、経営成果を示す各部門の管理会計レポートに現場成果を関連づけて明示する

以上の改革ポイントを実現するには、管理会計システムの改革やITの有効活用が欠かせませんでした。 また、経営各層の経営管理力の向上は、経営計画策定力を合わせて行うことが重要でした。

実行評価システムの2つの視点

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実行評価システムは、PDCAサイクルの「DO・CHECK・ACTION」に該当しますが、過去と現在の成果実績、及び戦略・施策の実行状況を把握して、計画に対する検証を迅速に行い、将来の見通しを得ることが本質です。 このような実行評価システムを構築して運用するためには、2つの視点が必要です。 一つは人の能力、もう一つはIT活用です。

人の能力とは、計画に対する実績・実行の検証力、そして検証を踏まえた今後の先行見通し力です。 若い時から、この検証力と先行見通し力を身につけることが大切です。

IT活用は、迅速な実績・実行把握、スピード発揮に有効な手段です。 また、今後の戦略・施策の実行に応じた、成果のシミュレーション・ツールです。 グローバル&グループ経営の時代には、ITを有効活用した実行評価システムが欠かせないことも、留意しておくことが大切です。

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