2016年6月 192号 「技術者の志はどこに?発見力」

2016年6月

去る6月9日(木)、東京コンファレンスセンター・品川に於いて、
「第20回 開発・技術マネジメント革新大会」が開催されました。
約250名の方々にご参加いただき、大盛況のうちに終了することができました。
ご参加いただきました皆さま、誠にありがとうございました。 

技術者の志はどこに?発見力

RD&E領域のコンサルタントの職について、25年くらい経ちます。
コンサルタントになった当初は、前職の研究所での開発の目線から、
コンサルタントとしての目線になることに必死でした。
そして今は、開発現場の技術者の皆さまの開発行為のイノベーションに
今なにができるかを必死に考えています。

今回は、いくつかの開発の現場での声をご紹介しながら、
技術者の志はどこに行ったのか、そして、そのキーとして「発見」ということを
考えてみたいと思います。

■入社して、5、6年をむかえたある技術者の心の声

メーカーに入社して、開発や設計部門で何年か過ごした。忙しい毎日を送っている。
ある程度の仕事も任せてもらえるようになってきている。そこで、ふと考える。
 ‥自分は、何をやりたくてここにはいってきたのか
 ‥新入社員で開発部門に配属されたときの、あのときめき・感動は、どこへいったのか

設計や開発のナレッジ(技術、知識、進め方)は、ある程度身についてきている(気がする)。
そして、いよいよ自分の開発した物が世にでる。
 ‥うれしい!でも、自分はどこに向かっているのか。ずっと、これを作り(開発)続けるのか

お客さまは難しいことをいろいろ言ってくる。でも、それにもうまく対応できるようになってきている。
 ‥こんなことをいつまでやっているのか

仕様どおりの設計開発ができるようになり、ちょっとした技術で、ほめられた(社長賞ももらった)。
40歳、50歳になって、課長になって、うまくいけば、部長になって。
あるいは、室長になって、研究所長になって。
 ‥それでなにになるのか

と、忙しくも充実している日々の中、心のささやきが秒速でよぎる、こと。ないですか。

■お客様さまはどこに

話は変わりますが、日本女性の美しい髪をつくるシャンプーやヘアケア製品でも、
それを開発している人がいます(研究者とか技術者とか言われる人たちです)。
日本人の髪の美しさは世界でも有数です。そこで、タイのお客さまに向けたシャンプーの開発を
担当することになったという技術者に話をうかがいました。
素材は日本のものとそう大きくは変わりません。いくつもの処方を作り、製造プロセスを組み立て、
タイの女性に使ってもらいます。日本とは洗髪習慣も異なります。日本よりも、都心部(バンコク)
と農村部での生活習慣の差が大きいです(洗髪頻度や水質など)。
そんな中、さまざまな試行錯誤をして、またタイのお客さまの声を聞いているなかで、ひとつの
発見がありました。日本の女性は、それほど重要視していないけれど、タイの女性たちは、
とても大切にしている、ある「フィーリング」でした。それは、うまく言葉にできないけれど、
一番近い言葉では「ふんわりした柔らかさ」に近いものでした。その技術者の方は、お客さまの
「これ」というポイントが見つかったときは、えも言われぬ感動を覚えた、と言います。
お客さま第一、という言葉がありますが、技術者の魂を揺らし、志を刺激するものは、お客さま、
あるいはそのお客さまの先の本当に使っているお客さまにあるのではないでしょうか。

同じような話を、イタリアのコーヒーメーカーが日本に進出したときにも聞いたことがあります。
メカニカルな課題を乗り越えたときに感動するのではない、コーヒーマシンを置いているお客さま
の先のお客さまを想定して物作りをし、そこで、お客さまが作り手のことも一切考えずに、無垢な
気持ちで思わず「いいね」と言ってくれたときにこそ感動するのだと。

数年前、インドでコカコーラのあるCMが話題になったことがあります(日本では放映されていませんが)。
インドとパキスタンは当時対立状態にありました。そのインドとパキスタンの双方に「互いが見える
窓のようなマシン」が設置され、指令どおり双方が同じ動作(たとえば、手を合わせる)をすると、
双方にコーラが出てくる。それを繰り返すことで人々がつながっていくというストーリーです。
商品を創るということは、お客さまが喜んだり、お客さまがつながったり、お客さまを幸せにする。
それを「発見する」ことに、技術者の志をびりびりと刺激するポイントがあるのでは、と考えます。

これは何なのか。
マーケティングや製品戦略が良かった?短期間で新しい商品を開発できるプロセスがあった?
それもあるかもしれませんが、一番は、技術者のマインド、志、そして、お客さま、あるいは、
お客さまのお客さまを第一に考える姿勢と行動が大きかったのではないでしょうか。
この瞬間が、技術者魂にぐっと響くのではないでしょうか。

■技術者の志への刺激は「お客さま第一での発見力」

技術者魂や志への刺激は、新しいお客さまに会うことによる新しい発見と解決へのチャレンジです。
そこでの製品に対しての新しい様々な問題「こんな風にお客さまが使うとは、こんなことが起きるとは
思わなかった」という発見、そのようなときに刺激が起きるのではないでしょうか。

「問題が起こると腕まくりしてがんばる技術者がいるんです」と言うマネージャーがいます。
それは、どちらかというとネガティブな表現として使われるのですが、それ、別に悪くないですよね。
お客さまについて離れず、お客さまのお客さまを第一に考え、問題を早く発見する。

「管理中心」から、「(問題)発見を仕事の中心にもってこよう」と、今我々は、問いかけています。

皆さんの志は、何で、刺激されますか。ゾクゾクしていますか。


(シニア・コンサルタント 中村 素子)