2016年5月 191号 「ソリューション志向の事業開発」

2016年5月

熊本地震で被災された皆様、そのご家族の方々に、心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧をお祈り申し上げます。 

ソリューション志向の事業開発

新事業開発において、近年のコンサルテイングの現場で感じた変化をお話したいと思います。

1.ソリューション、サービス提供をより志向している

 これまでエレクトロニクスから、素材、医療機器から、食品、日用品など、様々な分野で
新事業開発のご支援をしてきました。昨年度も4テーマの新事業開発を企画構想段階から
ご支援しましたが、これまでの単純なモノ売りではなく、サービス提供を含めた
ソリューション志向の新事業テーマが、業種を問わず顕著に増えてきています。

 これは商品企画・技術開発ネタとしてはいくら有望でも、モノ売りだけではビジネスプランに
したときに、なかなか事業の採算が合わなくなってきているという実態が背景にあります。
「いいものを沢山つくれば、それが売れて儲かる」というのは、製造業が最もよかった時代の
ことで、今はこのリニアモデルは通用しません。
 そこで、モノ売りだけにこだわらずにビジネスとしての価値を最大化する検討を行うことは
大いに結構ですが、同時に懸念もあります。それは、ソリューションやサービスを論じる際に、
ものづくりへのこだわりを捨てて、工場の膨大な製造間接費や固定費の配賦負担からの逃げ口上
として議論されているケースを散見することです。


2.真のソリューション実現とは

 モノだけに拘ってしまい、お客様目線での価値提供がおざなりになるのは本末転倒ですが、
サービス提供という言葉で、最初から自社のものづくりを捨てる前提の議論をするというのは筋違いです。
 なぜならば、ものづくりがなければ、真のソリューションは実現できないからです。サービス提供のみの
ソリューションは、最初に思い付いた時点では競争力があっても、競合に容易にキャッチアップされて
しまうでしょう。ビジネスモデル特許がありますが、ビジネスモデルそれ自体は特許にはなりません。

 例えばGoogleの検索サービスです。この広告収入によるビジネスモデルは、形だけ真似しようとすれば
容易に真似することができます。意外に知られていない事実ですが、Googleは世界最大規模のサーバー
メーカーでもあります。Googleの競争優位の源泉は、この自社開発のサーバー、ものづくりにあります。
 情報検索サービスは、日々増大するネットの膨大なデータを蓄積するストレージサーバーが必要であり、
データセンターの拡張・維持のための固定費と電力消費が発生します。Googleはこのサーバーの設計・
ノウハウは門外不出としているため、推察にはなりますが、一般的な汎用サーバーでサービス提供する
場合と比較して、Googleの自社開発サーバーははるかに低消費電力、少ないスペースで稼動し、
なおかつ拡張も容易な設計がなされているものと考えられます。よって、同様のサービスを提供する競合
とは、サービスの品質面だけでなく、事業の利益率でも圧倒的な差が出てくるわけです。


3.これからの新事業開発に求められるもの

 このように、ソリューションといっても、ものづくりによって容易にキャッチアップされない仕組み
を仕込むことが重要です。
 工場の話を先に出すとどうしても製造制約や固定費の話が頭をよぎり、ソリューションの議論が
やりにくくなるのは事実ですが、自社のコアコンピタンスから離れたソリューション提供には真の顧客価値は
宿りません。ソリューションを志向することや、サービス提供の要素を取り込むことは非常に重要ですが、
ものづくりから目を背けずに、ものづくりの強みと両立させる、一段高いレベルでの検討が必要でしょう。


(チーフ・コンサルタント 高橋 儀光)