2013年12月 164号 「R&Dマネジャーは、ぜひイノベーション論の勉強を」

2013年12月

みなさん、イマジニアリングという言葉はご存知でしょうか。
この言葉は創業者のウォルトディズニーが、自分が最も尊敬する精鋭のアーティストや
アニメーター、デザイナー、建築家などアート集団を称した造語であり、「イマジネーション」と
「エンジニアリング」を合体してできた言葉です。

イマジニアは、ディズニーのテーマパーク、ホテル、クルーズ船、その他の娯楽施設の設計と
構築を担当しており、夢を描き、その夢を形にする仕事をしています。
私は30代になった今でも、ディズニーランドに行くとどこか違う世界に入り込んだ感覚を
味わうことができ、ワクワクし、感動してしまいます。

このようなワクワク感や感動を提供する創造性の豊かなイマジニアをどのようにマネジメント
しているのでしょうか。

現ウォルト・ディズ二―・カンパニーのCEOが某TV番組で話していたのが、「自由」と「客観性」
を重視するということでした。
イマジニアに創造性を発揮させる自由な環境(Googleのオフィスのような職場)を与え、
やりたいことや夢を考えさせ、創造性を発揮させるような場を提供するだけでなく、
CEO自らが現場に足を運び、プロジェクトに対して実現可能性や商業化の観点で質問を
投げかけているそうです。

昨今の環境では、R&D現場でも効率化や成果を重視せざる得ない状況ですが、創造性と
客観性の観点でみなさんの職場を捉えてみてはいかがでしょうか。

(佐藤 実輝)


R&Dマネジャーは、ぜひイノベーション論の勉強を

業界にもよるので一概には言えませんが、
日本社会全般に、商品寿命・事業寿命が短くなってきているようです。

一つの商品・事業の成功が長続きしないことの社会的・市場的原因や顧客の嗜好特性等に
ついても考察が必要なのでしょうが、原因が何であれ、開発の現場には次の商品・事業を
生み出すことが常に求められているということは、正対しなければいけない歴然たる事実です。

このことは、R&Dのマネジメントに、従来の商品(製品・サービス)が売れているうちに、
次の商品(あるいは、商品を超えて事業という次元)の開発・企画が求められているということです。

つまり、R&Dのマネジメントの重要な仕事の一つとして、旧来のものを維持・改善する機能ではなく、
新規の事業・商品を考え世の中に出していくという機能が強く求められています。

端的に言い切るならば、イノベーションを起こすことがR&Dのマネジメントの本質になってきて
いるところがあります。


このイノベーション(イノベーションとして完結するところまですべてR&Dが
面倒みきれないという意味では、イノベーションの芽を育む)マネジメントは、
R&Dの担当者や中間管理職の経験を長く積めば高まるという特性のものではありません。

一般に、R&Dの担当者(研究者、開発者、技術者と称される人たち)は、
(その多くの人は)学生のころから理工系を専攻し、事実データに基づくロジカルな思考で
結論を見出すということを訓練されてきています。

いわゆる"理系"的な脳(時に"心"も含め)が強化されてきているのです。

イノベーションには、"理系"的なセンスで技術の持つポテンシャルの洞察
(よく言われる"技術の目利き")ができなければいけません。
その"理系"的センスが必須な要素であることは認めたうえで、
イノベーションのマネジメントには"文系"的センスがかなり重要になってきます。

幸いに、この20年ほどで、世の中の経営学者の一部の先生から、
実現場で役に立つような本が出されてきています。

元一橋大学の野中郁次郎先生の「知識創造企業」や、
同じく元一橋大学の伊丹敬之先生の「イノベーションを興す」等がその分野の代表的な書籍です。

これらの本には、イノベーションの事例とその原理・原則の洞察があります。
きちんと読めば、イノベーションの疑似体験ができるものです。
R&Dのマネジャーになった人(あるいは、いずれそうなる人)は、そういう知見を深めるべきだと
私は思います。

「イノベーションなんて勉強してできるようになるものではない。エジソン、本田宗一郎、
 スティーブ・ジョブズ、みんなそんな本を読んでイノベーションを興したわけではないでしょう」と
いう反論が聞こえてきそうです。
しかし、一部の天才的な人から学ぶのと同様に、理論化された(されつつある)原則論を学ぶこと
も普通の人にはかなり役に立つと思います。

今のプロジェクトを納期通り終わらせるプロジェクトマネジメントでもなく、
技術を進歩・進化させるテクノロジーマネジメントでもなく、
(ややおおげさに言えば)社会にうねりをおこしていくイノベーションマネジメントが
R&Dのマネジャーの役割であることを明確に認識することが重要です。

自分が育ってきた"理系"的分野だけでなく"文系"的な世界にもぜひ触れられることをお勧めします。

(チーフ・コンサルタント 塚松 一也)


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