お問い合わせ

プラスワンの価値を目指して
~なすべきことを一人ひとりが考える~

日本軽金属株式会社
取締役副社長執行役員 石山喬氏

日本軽金属は、もともとアルミ精錬を主軸においた会社であった。その大きな事業の幹を、オイルショックで一瞬にして失ってしまった後、周辺事業(アルミ加工業)へと事業の柱を移さざるを得なくなる。しかし、そうした事業はあまりに一般的すぎて極めて儲けの少ない仕事だった。 「もっと利益率の高い仕事をしよう」「お客様と戦わない新しい分野をつくっていこう」―それは、「アルミ+1(プラスワン)」として今につながる、私たちの大きな目標だった。

徹底した横串活動

会社には、開発、製造、営業、管理など、機能を持った部門があり、部門間の壁があるとよく言われている。事業部制をとっても、事業部の中で機能別組織のミニチュアが出来上がるし、事業部間という壁もある。そうした組織の壁は仕事のスピードを落とし、会社全体を見る目を養うことの邪魔をし、お客様のニーズを拾い損ねることになる。これでは、+1の価値を生むことなどできるはずがない。
佐藤社長が就任した2001年、私たちは「横串活動」を開始した。会社の都合を考えた縦割機能の組織から、お客様に合わせた機能横断型の組織に変えていった。たとえば、「自動車BU」「電子・電気BU」という具合である。こうすると、日々の仕事が横串活動そのものになる。

通常、営業は今あるものしか売れないし、工場は今作っているものしか作れない、と言われる。しかし、それでは利益率はどんどん落ちていく一方である。今より、利益率を上げるためには、新しいものを開発していくしかない。+1、+2、+3とやっていかなければダメということだ。
そのために何をするか。営業も製造・開発も、考えることはその一点になる。「利益率アップ」という目標に向かって、営業と製造・開発が一体となって、ベクトルが集約されていくのである。開発から製造、営業までが一体となって、お客様という共通ターゲットの利益率を上げていくために皆で考えて、皆で働くのだ。
利益率の高い新しい製品を提案するために、製造も営業と一緒にお客様のところに行くし、よりコストを抑え効率よく製造するために営業もTPS思想を勉強して製造ラインへ提案をする。さらに、研究所は3カ月に1度「技術商談会」を開催して、自分たちが考えているテーマを、社長・事業部長・子会社トップの前でオークションにかける。

また、事業部の実績検討会では、営業が工場の成績を報告し、製造・開発が営業の実績を報告するようにしている。開発の進捗状況や生産性、歩留率やクレームを営業が報告し、製品別の売上やお客様ごとの利益率を製造が報告するのである。
このような場を通して事業部門ごとのつながりが強化され、研究・製造・営業の三位一体のモノづくりが行われるようになってきた。

利益を全員に見えるように示す

会社の中では、とかく「自分たちはよくやっている。悪いのは他所の部署である」という責任転嫁が起こりがちであるが、実績検討会を始めてからそうした声は聞かれなくなった。全員が経営者のような、責任感を持ち始めたのだ。これは、経営幹部を育てるいちばんよい方法でもあると思っている。

一番大事なことは、損益に対する責任を一人ひとりが持っていることだと思う。そのためには、自分が作ったもの、売ったものの利益が明確に見えることだ。「生産性が上がった」と言われても大方の人はピンとこないが、「あなたがいい仕事をしてくれたから、先月はこれだけ儲かった」と言われたら、自分たちの仕事が儲けに直結していることが誰にでもわかる。営業も開発も工場で働いているパートの人も、皆がそれを知ることで、明らかに考え方が変わってくる。「いい会社にしよう」「いいビジネスにしよう」という熱い思いは、私たち日本人の心の中に必ずあるのではなかろうか。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.19からの転載です。

経営のヒントトップ