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お客様の向こうに世界を見る
~真のグローバル化を目指して~

株式会社NTTデータ
代表取締役副社長 山下 徹氏

外に向かって視界を開く

それには何が必要か。

私は、「外に向かって視野を広げていく」ことが、非常に重要だと考えている。

"Think global, act local" という言葉がある。日本のある地方のお客様であっても、競争相手は世界中の企業である。だから、活動はローカルであっても、常にグローバルを見なければ、お客様にベストプラクティスを提供することはむずかしい。

もちろん今、目の前にいるお客様を見ることは仕事の原点である。そこから、もう一つ視野を広げて、その向こうに存在するいろいろなものを見ていく。そして、日本のお客様に世界一のサービスを提供する――これが、「グローバルITイノベータ」の原点なのだ。

内なるグローバル化を果たす

しかしながら、我々の仕事は、専門の技術や市場ごとに細分化されているため、ともすると視野が狭くなりがちである。人材異動がむずかしく、悪くすると井の中の蛙に陥りかねない。そうした殻を破っていくには、経営陣がなるべく多く職場を回って風穴を開けていくことが必要だと思う。

極端な場合、同じシステムの中でも、営業部門と開発部門ではほとんどコミュニケーションをとっていないというケースもある。こうした現状に対して、職場間の横の連携(知的共有)を積極的にとっていかなければならない。そのため、他部門や協力会社の人たちと協働できるようなチームをつくるなどの工夫を促している。一つのテーマについて全社から有志を募ってチームをつくるくらいの身軽さが必要だ。

昨年、そうして全社から人が集まって、行動改革WGというチームがつくられた。メンバー全員非常に熱心で、期待以上の動きをしてくれている。そこに集まったメンバーが口にするのが、「こういう交流の場が今までなかった」という言葉だ。溜まったマグマが噴出すように、彼らは自主的に集まって徹底的に夜中まで議論する。自分と同じ考え方や同じ思いを抱いている同士を発見して感激している若手もたくさんいる。

考えてみれば、我々が若手と呼ばれていた頃は、上司と部下の間にも同僚同士の間にも、自然発生的なアンオフィシャルなコミュニケーションの場が頻繁にあった。そこで、上司の思いや、仲間の志しを聞くこともできた。しかし、今はそうした機会が全くと言っていいほどなくなっている。

だからこそ、チームをつくって意識的に風通しをよくすることが求められるのだ。部長クラスで実施したビジョン研修でも、「最近、こうした議論をしなくなった」と、大変な盛り上がりを見せたほどである。

とにかく大事なのは、「混ぜ合わせる」ことだ。グローバルというと、自ら海外に進出することと誤解されがちだが、我々が目指しているのは「内なる国際化」に近いものがある。自らの仕事の"際"を取り払い、混ぜ合わせて、内なるグローバル化を果たすことで、会社の文化や風土といったものが変わっていき、本当の改革が果たせるのではないだろうか。

こうした会社のビジョンを、会社の隅々にまで浸透させ、社員一人ひとりに理解してもらい、行動してもらうには、やはり直接、経営陣が現場に向かって繰り返し語りかけることが大事だと思う。

その先にこそ、真の「グローバルITイノベータ」の姿が見えてくるのではないかと考えている。

※本稿はJMAC発行の『Business Insights』Vol.17からの転載です。

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