第14回 乱気流経済を勝ち抜く! フレキシブルな組織変革能力を身につけろ

スピードが強さを生む! 最適な組織性能バランスを手に入れる

企業の進む方向性を把握 どんな“組織性能”が必要か?

どの“組織性能”を伸ばして、どんな組織にしていくのか? この難問を解決するために、過去には仔細に調査を行うこともあった。調査には時間もかかり、調べるほど複雑な要素が出てくるといったことも少なくない。「取組むべき問題が複雑だ、というのが大きな障害のひとつです。組織改革にはさまざまな要素が絡み合います。まずこの複雑さを軽減し、経営者が処理できる程度に単純化することが重要だと思います」高原は“提供したい価値の変化方向”と“戦略の変化方向”という2軸による組織像で検討することを勧めている。「今、その事業はどの位置にいて、これからどの方向に向かっていくか、ということを大枠でつかむことができます。たとえば、開店したばかりのレストランがあるとします。経営者は、お客さまの喜ぶ料理を出したいと考え、理想の味を求めてきました。お客さま一人ひとりのニーズにきめ細やかに応えたい、これは“個別価値”を重視するということです。ですから“個別価値”を追求するというのが、この店の組織像です」現実にもよくある例だが、経営が軌道に乗ると、経営者はさらに事業展開することを考えるようになる。「その後、この経営者は、店舗数を増やしたいと考えるようになったとしましょう。複数の店舗で自分以外のスタッフに働いてもらうためには、料理法やメニュー、サービスの標準化が必要になります。そうしなければ、店によって提供価値が異なってしまい、品質保持が難しくなるからです。また、あまりに違うメニューが出るようでは、同じチェーン店とはいえませんからね。このように選択肢は少ないけれども、万人に受け入れやすい標準的な品質を求めることを“標準価値”を求めると表現します。経営者は、提供する品質を“個別価値”から“標準価値”に変更しているのです。これが組織像の変化を求めます。戦略としては、攻勢・展開の方向へシフトしていき、事業戦略のなかでいうと、組織像をCからAに変えることになるのです」このようにシンプルな形であれば、全体像をつかむ手がかりになる。まずは、大枠で自社の現状と目指す方向をはっきりとさせることが重要なのだ。「実際には、チェーン店という枠組みでも、ある程度選択肢がある店から、あまりない店、メニューを頻繁に変更する店、ほとんどしない店など、さまざまな戦略があります。これらの戦略を変えるときに、どんな“組織性能”を実現する組織でなければならないか、それをいち早くつかんで形にするために、このような概念が有効なのです」

“アンバランス”がポイント 事業展開と“組織性能”を一致させる

JMACは企業が組織像をつかむための診断ツールを開発し、コンサルティングに取り入れている。過去には、さらなる海外進出のために行われた組織改革に役立てた例もある。「診断ツールを実施するなかでよく見られるのは、もっと現場に任せる組織だと思っていたら、そうではなかったというような現実とのズレですね。つまり、こういう組織性能が強いと考えていたのに、実はその組織性能は発揮されていなかったということです。具体的な例でいえば、特注対応を始めた企業で実施したところ、本社からの統制が強く“価値提供性能”のなかにある放任力という要素が弱いという結果が出たことがありました。実は、“価値提供性能”は統制力と放任力という2つの要素からできています。統制力は言葉通り、本部が細部まで統制して運営してく力、放任力は、現場の担当者に決定権や選択権を任せる力のことです。これは相反する性質のもので、統制力が強ければ放任力が弱まり、放任力が強ければ統制力が弱いという関係にあります。特注対応のように、顧客のもとで話を聞きながら提案をしていく業務の場合、放任力を強めて現場の判断に任せる必要があります。本社のコストダウンや生産効率にもとづいた要求が多いと、統制力が強くなってしまい、放任力は低くなります。その結果、特注対応商品などでは、お客さまと担当の間で柔軟に判断していくことができず、競争力を失うということが起きます」
多くの経営者は、事業がうまく展開していないときには、何かが起きていると直感的につかんでいるものだ。そこへ診断ツールの結果から“組織性能”を説明すると、この事業に活力がなかったのは、こういうことだったのか、と思い直すきっかけになる。めざすべき組織像がわかれば、どの“組織性能”に重点を置かなければならないかということも見えてくる。「“組織性能”のすべてを強めることは、正解ではありません。統制力・放任力のように相反する“組織性能”の要素を強めたり、弱めたりすることで、めざす組織像に適した“アンバランスさ”を手に入れることがポイントなのです」JMACでは、数々の施策がどの “組織性能”をどう強め、どう弱めるのかを整理している。自社に必要な“アンバランスさ”が明確になれば、あとはそれぞれの施策の実施に取組めばいいというわけだ。
新規事業と既存事業とで、同じような組織構造を持ち、かつ、同じような組織管理をしているケースは多い。異なる事業には、異なる組織像があり、異なる“組織性能”、組織構造・管理が必要だと高原は主張する。事業の実態に日々触れている現場の方が、こうした問題意識を感じていることが数多くある。高原が2009年9月に行ったセミナーでは、日頃からあった違和感の謎が解けた、という声も聞いたという。

小さな変化を見逃さずに警告する フレキシブルに対応できる柔軟な組織作りを

「事業の変化は、非常に早くなってきています。以前は5年10年で起きていた変化が、最近では半年から1年で起きるといった具合です。ひとつの組織をつくっても、その仕組みのままで何年もやっていける状況ではなくなってきているのです。当たり前のことですが、状況に合わせて事業戦略を変えたのに、“組織性能”が合っていないのでは期待する効果をあげることは難しいでしょう。競合他社に出遅れてしまうかもしれません。競争を勝ち抜くために、“組織性能”をめざす事業戦略の変化に素早く合わせる、という力が、今後ますます求められていくでしょう」この変化対応スピードを、新たな競争力として注目する企業は少なくない。「組織の能力を有効に発揮できれば、新しい利益の源泉となります。あるときは、この“組織性能”を強化し、変化が起きたら、別の“組織性能”を強化するといった方法で、これまでとは違う事業展開ができるかもしれない、と私たちは期待しています」
変化タイミングを見逃さずに対応したいのは山々ではあるが、そこには課題もある。変化は頻繁にあるうえ、いつ起きるかわからないからだ。「JMACでは、早期警告を出すシステムを備えるべきだと考えています。すなわち、変化の兆しを発見してアラームを発し、最適な組織像と組織性能を実現する施策を継続的に提案することができるメカニズムを、組織構造自体のなかにもたせたいのです。私の目的は、そんな組織のあり方を実現することですね」この早期警告システムは、企業が事業戦略を実現するための強力な武器となるだろう。高原の夢は、着々と実現に近づいているという。近い未来、めざす“組織性能”に合わせて柔軟に構造を変えることのできる組織のあり方が、企業経営者たちに提示されることだろう。

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