第13回 将来の成長に繋げる! 需要を掘り起こす拡販戦略

抜本的改革でどんな環境下でも対応できる 全天候型の営業戦略をめざす

真のニーズ喚起を実行する ソリューション発想という視点

『案件創出型営業』を遂行するには、従来の視点・方法を抜本的に変革しなければならない。この新たな営業スタイルで、もっとも重要となるのが『案件創出』……それは顧客ニーズを喚起することだと、青木はいう。「つまり、お客さまが何に困っているかを把握する、ということですね。ここで求められる視点こそが、ソリューション発想です。今までお客さまに提供してきたのは、“製品”を軸とした『売り込み提案』というべきものです。けれども、真のニーズ喚起には、『顧客』を軸とした課題解決の提案を行わなければなりません」
ひとつの市場のなかでも、自社にとっての直接的なお客さまに限らず、さまざまな登場人物が存在するものだ。そのなかで、青木は5つのCの重要性を強調する。「まずは、自社(Company)、直接のお客さま(Customer)、競合他社(Competitor)ですね。それから、お客さまにとってのお客さま(Customer's Customer)と、お客さまにとっての競合他社(Customer's Competitor)を加え、5つのCです。とくに、Customer's Customerの存在は重要です。お客さまの利益の源泉はその先のお客さまが決めています。つまり、Customer's Customerのニーズを押さえた提案がポイントなのです。つまり、お客さまにとって利益の源泉は何かを考え、競合他社に打ち勝てるようなニーズ喚起の提案ができれば、案件化につながりやすいということになります」そのためには、この5Cの変化・動きを捉え、お客さまの需要や経営課題を理解できていることが必要となる。
「顧客・市場の情報を充分に収集し、そして、その情報から想定される課題を抽出し、解決策を提案していく、このサイクルを習慣化することが重要です。これこそが、受注への種まき活動といえます」

案件創出型営業を可能にする 実践的な研修で営業革新

はっきりとした形でなくとも、営業改革の必要性を感じている企業は少なくないだろう。だが、その方向性を、『案件創出型営業』と定めたとしても、それをどのように導入・定着させていくのかとなると、大きな変革であるだけに容易には着手できない面もある。
JMACでは、企業の要望に合わせて実践化研修方式でのプログラムを提供している。「最近行ったある企業での事例です。110名の新人から中堅営業社員クラスに数回のフェーズで実践化研修を実施し、そこで現在担当中のお客さまへの初期提案書を作成してもらいました。一人最低1つを作成するという条件でしたが、複数提出した方もいたので、全部で146になりました。そこからお客さまに本当に提案可能なものを選び出し、実際には97の初期提案が実施できました」その後、研修のフェーズは、初期提案の反応からお客さまへのニーズ再確認、聞き取りを反映し内容をさらに向上させて、本格提案へと進んだ。研修開始後約1年経ち、その企業では12件の受注が成立したという。「この研修では、最初のグループが次の段階に進むと、新たなグループが初期提案書の作成を開始します。段階的に、順次、次のグループが研修を開始しているわけです。この12件という数字は、最初のグループがあげた成果なので、時間の経過とともに受注件数は増加していくと予測できます」最初のグループも、12件の受注で営業が終了したわけではない。成立しなかった提案への聞き取りから、切り口を変えた新たな提案を行うサイクルに入っている。その成果が形となるのは少し先のことになるが、それも将来の受注の一部となることだろう。
研修自体が、すでに種まき活動の一環として組み込まれている。こうした方法によって、研修を受けながら、営業部門の社員は『案件創出型営業』のノウハウを身につけていくことができるのだ。

今こそ大胆な経営的決断を! 部門改革を越えた戦略の転換へ

このような大胆な営業活動の転換は、現場レベルの努力・実践だけでは実を結ばない、と青木は強調する。「抜本的な改革だからこそ、経営トップ・幹部層がその重要性を認識し、先頭に立って推進しなければなりません。組織的かつ計画的な推進によって初めて、戦略が行動化されるのです。そして、景気動向に左右されない全天候型の『案件創出型営業』が実を結んだとき、持続的な営業成果が生まれます」
また、経営判断の役割は、評価方式についても同じ重要性をもつ。「もともと、営業成果は本質的に時間がかかりますが、現在の経済環境ではなおのことです。短期的な成果のみを追求しすぎないように、営業部門のモチベーションを維持する仕組みも大切です。短期成果評価主義は適用しにくいので、先に述べたような営業活動のプロセスをポイントで評価するなどという仕組みの方が向いているでしょう。たとえば、実際に訪問できて営業先担当者の名刺をいただけた、初期提案書をプレゼンすることができた、などのドキュメントで見える活動プロセス単位で評価をしていきます」逆にいえば、営業活動として曖昧な部分を許さないということでもある。営業プロセスを可視化し、管理職が営業実態を管理する。戦略の行動化の一例といえるだろう。こうした評価制度は、やはり経営層の支持なくしては実現し得ない。
市場へのアプローチを通じて提案から受注までを実践するのは、営業部門である。しかし、拡販戦略を実施するとき、あらゆる面で部門を越えた経営判断が必要となる。「営業部門革新のキーは、経営陣の大胆な決断にかかっています、今をチャンスと考え、営業改革を推し進め、営業戦略と行動を有効に結びつけていけるかどうか、そこがターニングポイントとなるでしょう」青木は、『案件創出型営業』によって切りひらく持続的成果の実現の可能性を信じている。

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