第11回 単純なコストダウンの時代は終わった 企業価値を高めるロジスティクス機能の再構築

戦略性が高まるロジスティクス 世界と未来を見据えた先には

経営戦略にもかかわる物流の本質 ロジスティクス戦略が企業を変える

小澤はロジスティクスによる戦略として、まずQCD(Quality、Cost、Delivery)の向上をあげる。「もし、物流業務において同じ高いサービスレベルが提供されているようであれば、そこにQCDによる差別化というのは効果がありません。しかし、その業界内でレベルがばらついている状態で、圧倒的なQCDを提供できるのであれば、それは戦略といっていいでしょう」さらに、“できるだけ早く”という、納期短縮への要求が圧倒的にあるという現状がある。「できるだけ早く納品することでシェアをあげようとするのが、物流サービスの大勢です。そこへリードタイムは長いけれども低コストのサービスを提供し、シェアをあげるという考え方は、大きな構造の変化なのですね。他社と異なるサービスを提供するのですから、これもひとつの戦略といえるでしょう」
このように戦略性が高まってくると、物流部門で話を収めることはできない、と小澤はいう。「コンサルティングを進めるうえで、どうしても経営戦略専門のコンサルタントと共同していく必要がでてきます。私が所属するのは、ロジスティクス・ソリューション・センターですが、そういう事例では経営戦略事業部と連携しつつプロジェクトを進行します。複数の部門にわたるコンサルティングは、JMACの得意とするところですね。つい最近も、このようなプロジェクトに携わったばかりです」
お客さまである経営陣の中に、若い頃に同じプロジェクトで激論を交わした顔を見つけることもあると小澤はいう。「物流領域では、1社と断続的・継続的に長期間にわたってご相談を受けるケースが比較的多いのです。初期の担当者の方が、異動して他部署に移られ、さらに管理職・経営者となって物流部門改善のために、また一緒にプロジェクトに関わるといったこともあります。そうした人とのつながりという点でも、喜びを感じることがありますね」

強みを活かした新しいビジネスモデルの開発…… さらに先を見据える

圧倒的に高いQCDの提供、新しいビジネスモデルの先には、ロジスティクスの事業化が存在する。「ひとつは、高いサービスレベルのインフラを持っているケースでは、自社の物流だけでなく、他社の物流も担えるということです。アウトソーシング業務として受託することができるのです。例をあげると、荷主の企業が発注しているグループ内の物流子会社が、グループ外の業務を請け負うといった形ですね。ふたつめは新しいサービスメニューの設計によるビジネスモデルの開発です。こちらは、現在あるサービスにプラスして新しい提案ができるということです」小澤が手がけた案件では、グループとして保有しているIT技術に関するノウハウに加えて、新しい物流サービスを創造するというものだ。インターネットのポータルサイトで購入いただいた商品をどのようにお客さまの元まで届けるかといった例がある。その企業では、発注から配送までの工程を圧倒的なローコストで実現できるという強みがあった。このサービスを新しいビジネスモデルとし、事業化した。「すでに幾つもの企業がこのサービスを使ったシステムを採用し、インターネットを利用した販路として稼動しています。こうした事業化は、現在進行しているもののごく一部ですね」
小澤の構想は、それだけに留まらない。すでに一歩進んだロジスティクス事業の世界を見ている。「将来的には業界に共通したロジスティクスのインフラを構築するということも考えています。サプライチェーン・プラットフォーム構想といったところでしょうか。巨大な市場をもつ業界では、こうしたことは難しいのですが、1兆円以下の業界であれば十分可能だと思いますね」同じ業界内で、いち早く物流分野の抱える課題に解決策を提供し、それを事業として確立する。自社のロジスティクス改革に留まらず、業界全体の潜在的な需要に応えるビジネスだ。

ロジスティクスからSCMへ! 環境とグローバル化が新しいニーズを生む

ロジスティクス機能の再構築、ロジスティクス事業化の動きは、まだ始まったばかりといえる。これから物流事業に関わる企業は、これら多くの課題を解決して高い競争力をつける必要に迫られていくだろう。しかし、物流分野は、もっと大きな変化を受け入れることになると小澤は考える。「そのひとつが、環境への配慮を実現するグリーン・ロジスティクスですね。二酸化炭素(CO2)の削減、ゴミの排出を減らすという観点でのロジスティクスは、これからかなり本格的に動き始めるでしょう。リードタイムを短くするためにトラックでの輸送を選択する、といったことがしにくくなっています。たとえば、CO2排出量を減らすために鉄道での輸送をするけれども、トータルのリードタイムとしてはトラックを選んだ場合と同じ時間で配送できるような仕組みを作らなければならないということですね」企業に求められるCO2排出量削減は、もはや全世界的な動きであり、避けられない課題となるだろう。
「もうひとつはグローバル物流の影響ですね。世界を舞台に物を動かす場合、コスト削減が重要になりますから、いかにコンパクト化し、梱包材を省資源化・リターナブル化するかが焦点になります。包装設計技術の革新への需要が高まっていくと思います。JMACでも、このコンサルティングニーズに応えていく必要性を感じているところです」もちろん、対象が海外になることで、国ごとの特性の違いや文化背景も複雑になる。そこではその背景、特性を熟知したJMACのグローバル拠点との連携が不可欠となる。「グローバル化というのは、物も情報も複層化することに他なりません。そのうえ関わる人や国も増えます。これらの要素を一元化し、全体を見据えて最適化を行うことができる機能は、今後ますます重要になるでしょう。ロジスティクスは、自然とSCM(Supply Chain Management、サプライチェーン・マネジメント)にも繋がっていきます」この役割を果たすことができるのは、ロジスティクス機能をもった部門なのだ。世界中とつながる物と人の動きを制御し、利益を上げることができる組織といえよう。小澤には、次の段階に進んだロジスティクス物流の動きが見えている。それは、融合する世界経済を動かす血流のような物と人の流れに違いない。

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