第4回 中国ビジネスで生き残れ!〜巨大なアジア市場を攻略する〜

右:富永 峰郎 (とみなが みねお) チーフ・コンサルタント
経営戦略を専門とし、事業構造・収益構造・組織構造から構造改革を提言。企業価値向上を実現させる。大手から中堅企業まで個々の企業特性に合った重点突破を立案し、実践行動につなげる仕組み作りを得意としている。また、最近では、M&Aや戦略提携、企業再編、人材流動化など、一企業内の自前の資源にこだわらない改革や、中国・アジアのクロスボーダーの事業改革に焦点を置いた取組みをしている。


左:銭 剛 (せん ごう) コンサルタント
日本と中国にまたがる改革(日中クロスボーダー改革)をテーマに、日系企業の中国現地法人の経営改善・工場改善や中国大手企業の戦略づくりに取組んでいる。日系企業の中国戦略の見直し、アジアにまたがる物流改善などの実績に加え、中国大手流通企業におけては業態開発を含む小売経営力強化、日本生産技術の導入したモノづくり改革などの経験を有する。

生産拠点から消費する市場へ! 成長するアジア

アジア拠点再評価の動き 日本企業のアジア戦略は次の段階へ

中国をはじめとする巨大なアジア圏。アジア戦略の重要性を認めない日本企業はないだろう。その背景には、アジアの成長、その質的な変化があると、企業の中国・アジア展開をサポートしてきた富永はいう。「かつては、中国・アジアといえば、部品や製品をつくるための生産工場という位置づけでした。しかし、現在のアジア、なかでも中国は巨大な人口を抱える一大消費市場の位置づけへと変わっています。つくる拠点としてだけではなく販売する市場として、中国・アジアをどう攻略していけばよいのか?それが大きな課題となっています」(富永)中国・アジアが急成長を見せ、海外売上の構成からも、いまや北米市場と肩を並べている。
その一方で、これまでアジアの生産拠点が持っていたローコストという利点にも変化が起きている。「経済成長の結果、人件費をはじめとするコストも上昇し、以前ほどの優位性はありません。アジアの生産拠点に新たな役割を付加するのか、移転・撤退を選ぶのか?日本企業は、これらの拠点に再評価を行い、戦略を練り直す必要性にも迫られているのです」(富永)
だが、そこで多くの経営者たちはいま迷っているそうだ。経営的な判断をできるだけのアジア現地の有意な情報を持っていない、また判断するモノサシを持っていないことが理由になっていると富永はいう。

激化するシェア獲得競争 希薄になる日本企業の存在感

日本企業の多くは、ビジネスの展開にも慎重で確実性を求める傾向が強い。しかし、アジア市場で起きている市場獲得競争は、日本企業の決断を待ってはくれない。欧米企業、現地企業の急速な成長により、アジア現地では、想像以上に日本企業の存在感が薄くなっているようだ。中国現地の事情に詳しい銭によれば、そこには欧米企業と日本企業の戦略の違いがあるという。「2〜3年前からウォルマートなどの大手スーパーマーケットが中国市場に積極的に参入してきました。彼らの店舗展開は非常に早く、各店舗を黒字化するよりも、あるエリアを席巻することを優先します。反対に、日本企業はひとつのモデル店舗を成功させ、徐々に展開していくやり方です。どちらが正しい、優れているというものではありませんが、現在の中国市場では大胆な展開を選ぶ方が、戦略的な効果は高いといえるでしょう」(銭)
この現象は、店舗展開に留まらない。現地でのビジネスには、優秀な人材の確保が必須だ。人材の獲得競争でも、日本企業は後手を取っている。「企業風土の差もあり、現地の人材からは、日本企業はダイナミックな展望に欠けると見られています。人材教育はきちんとしているので、新卒者には一定の人気がありますが、ビジネスの核となる中堅以上の人材は、日本企業の将来性に魅力を感じていないのが現状です」(銭)

欧米型グローバル・スタンダードの限界? アジア標準が必要

そこに、アジアならではの事情が加わる。日本企業のこれまでの海外事業は欧米中心で展開されてきた。欧米での成功ノウハウをそのままに、アジアでの展開を行おうとしても、うまくいくと限らないのだ。富永は欧米指向のグローバル化のアプローチに限界を感じ取っているという。「欧米諸国では、成熟した社会システムや確立された市場を持っており、そのパイの取合いが海外展開のポイントでした。けれど、多くのアジア地域ではまだ市場そのものが形成されていません。潜在的な需要と、成長しつつある消費者たちは存在していても、先進国と同様の製品・サービスを購買するだけの受け皿ができていないのです。そこは欧米とアジアの大きな違いですね。アジアでは、国・地域毎に異なる成長のステージや地域特性に合わせてオーダーメイドのやり方を構築していくことが求められているのではないでしょうか」(富永)それぞれの事情に合わせて最適化を行う、それはJMACが得意とし、これまでクライアントをサポートしてきた手法とよく似ている。「だからこそ、アジア市場でご提案できることは多いと実感しています。アジア現地それぞれの状況に合わせた、オーダーメイドの解決方法を提供できます」(富永)

 

ページ上部へ