第2回 経営計画リコンストラクション 〜実効性の高い革新シナリオ〜

中西 博紀 (なかにし ひろのり) チーフ・コンサルタント
経営・事業の戦略・統合に加え、マーケティング戦略や新規事業戦略、業務改革、BPRの経験も活かした幅広く豊富な実績をもつ。製造業、サービス業の経営戦略、事業戦略、ビジョン・中期経営計画策定と、実践行動につなげる仕組みづくりの支援を主な領域とする。経営診断を軸として、経営者に密着した中長期の一貫した支援により多くの事業で高い成果を出している。

変化の多い時代を泳ぎ切れ! 経営計画再構築の必要性

戦略なき中期経営計画を改革! 経営計画の質がいま問われる

経営計画のない企業は存在しない。しかし、「きちんと活かしている企業は多くはない」と中西はいう。「特に中期経営計画の重要性に気づいている経営者は少ないのです。私の手がけた案件では、後継者に悩む企業、自らの壁を乗り越えられない老舗企業、市場の成熟によって成長が難しい企業などさまざまなケースがありました。そのいずれにも共通しているのは、経営者が3年後の自社の姿を明確に描けていないということです」これまで、企業の多くは厳しい状況下で事業や業務のリストラクチャリング・リエンジニアリングを進めてきた。しかし、経営については手つかずで、旧態依然とした形式のままという企業も多い。「経営計画を革新するポイントとなるのが、実効性の高い中期経営計画の存在です。それには曖昧なイメージではなく、3年後の自社への道筋が見えてくるような具体性のある計画を策定する必要があります。経営計画そのもののリストラクチャリング、策定プロセスのリエンジニアリング(=リコンストラクション)が重要なのです」

経営陣が見失った実態 自社の“核”とは

中期経営計画が無実化してしまう原因として、中西は「経営陣が自社の実態を把握できていない」ことをあげる。「企業には、それぞれ“核”と呼べる部分があります。たとえば、時代を先取りした自社製品が、強い市場競争力につながっていると考えている企業があるとしましょう。しかし、第三者から見てもそれが“核”であるとは限りません」時代の変化や競合他社の成長などの影響を受け、かつて“核”だった事業や製品とは違う部分が現在の“核”となっているケースはとても多いのだという。誤った認識のもとに作られた計画では、期待通りの成果を出すことは難しい。「経営陣のもとに正確な情報が集まる機能が弱かったり、競合他社と自社の比較ができていないなどといった理由が考えられます。経営陣は、収益面という数値に表れてから『どこかに問題がある』と気づくのです」

経営を評価するために必要な視点とは

つかんだ実態は、正しく評価しなくてはならない。加えて、経営陣には全体を見わたして経営を評価することを求められる。「けれど、経営陣にとっても全体を見て評価をすることは難しいのです。どうしても事業や収益など、一部に注目してしまいがち。全体を見わたすには、客観的で定まった“視点”が必要になります」定まった視点を持つ効果は、いくつかある。まず、一定の基準で経営への評価を継続的に行うことができる。次に、経営陣の評価基準も共通化されるので、議論のための土台とすることができるのだ。JMACでは、そのための具体的な方法としてイノベーショントライアングルを用いている。「これは事業構造面・収益面・事業運営面の3つの視点から経営を評価するという考え方です。適切に実態の把握・評価ができれば、課題は自ずと見えてきます」ここまで足並みを揃えて、初めて“リコンストラクション”をスタートできるのだ。

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