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第5回 「部門間の連携」が良くないのは、仕方がない?

2018年12月 3日

「部門間の連携が良くない」というのは、従業員意識調査をした際、多くの会社で見られる問題意識の一つです。
「部門の利益が相反することもあるから、仕方ないよね」という方もいます。「じゃあ、全社のメンバーが交流できる場づくりやイベントをしよう」という方もいます。
ただ、「Q1.部門間の連携はスムーズである」という設問に対してYes(はい)・No(いいえ)・NA(わからない)で回答してもらうと、Yes回答は30%に達しないことが多く、No回答が30%を超える会社もあります。この場合は、現状を放っておいたり、単純なイベントを開催したりするだけでは済まない問題であるといえるでしょう。

「部門間の連携」は、まずは「コミュニケーション・情報共有」から

D社でも従業員意識調査の結果、部門間の連携が良くないということが取りあげられました。営業・開発・生産といった機能別組織間での連携や、共通顧客と取引のある事業部間での連携、管理部門と他部門との連携といった問題は、以前から疑問を感じながら、改善が進んでいなかったとのことでした。

そこで、D社では業員意識調査結果をもとに、何から改善に取り組めばよいかの検討に入り、まず以下の2つの設問に注目しました。図1のグラフは、2つの設問の結果を全社の組織階層別に示したものです。

  • Q1.他部門とのコミュニケーションは頻繁に行なっている
  • Q2.他部門との調整はスムーズである
図1 組織階層別の回答結果

「Q2.調整はスムーズ」という認識はすべての階層で低いのに対し、「Q1.コミュニケーションは頻繁」は組織上位階層で高く、下位階層で低いという結果が出ました。

下位階層には、「調整以前に他部門との情報共有ができていない」という問題意識がある一方、上位階層ではその意識が低くコミュニケーションをとっているつもりでも下位階層には伝わっていない(伝えていない?)と言えそうです。その結果として、「調整はスムーズではない」という全階層共通の問題意識になっているようです。

改善策として、
・組織の上位階層が得ている他部門との情報共有を下位階層にしっかり伝える
・下位階層を含めた他部門との情報共有の場づくりやツールづくりをする
などがあげられました。

「コミュニケーション・情報共有」すべき情報とは?

ところが、上記2つの設問の結果を部門別に見ると、部門によって回答状況に違いがあることが明らかになりました。
以下グラフは、横軸に「Q1.コミュニケーションは頻繁」のYes率、縦軸に「Q2.調整はスムーズ」のYes率を、部門別にプロットしたものです。

図2 部門別回答結果のプロット

C製造所、Z研究所、C事業部は、部門間連携のコミュニケーションも調整も両方低いので、「まず情報共有が必要」という全社の組織階層別に見たときの対策が当てはまります(ここではA事業部の状態が、ベンチマークとなります。)

B事業部は「Q1.コミュニケーションは頻繁」なのに、「Q2.調整はスムーズ」が低いという結果を見て、一緒に検討していたメンバーの一人が、こう言いました。

「B事業部は、『調整に役立たないムダなコミュニケーションをしている』ということでしょうか?」

そこで、B事業部の他の設問の結果について、詳しく見ることにしました。B事業部は新規領域を扱う部門で、比較的事業方針や目標達成に対する意欲は高いのですが、顧客に関する以下の設問で特徴的な結果が見えました。

  • Q3.顧客情報・ニーズ把握を心がけている
  • Q4.顧客に関する情報の部門間交換は活発だ
  • Q5.顧客への提供価値に関する指標を設定し活用している
図3 顧客に関する設問への回答結果

B事業部のメンバーは、顧客ニーズ・情報を把握することに努力しています。ところが、それを製造所や研究所(開発)・他事業部と共有することや、その前提となる「Q5.顧客への提供価値に関する指標」の設定がまだのようです。その結果、他部門との調整のなかで、以下のようなことが起きているようです。

  • 対製造所:「顧客からの納期が○○だから、お願いしますよ」→「いや、急に言われても、それはムリ」
  • 対研究所:「ここの仕様をもう少し△△できませんか?」→「そんな時間とれないよ、A事業で手一杯」
  • 対他事業部:「○○会社の購買△△さんから『それはA事業部の□□さんに伝えたよ」と言われたのですが、教えてください」→「その情報必要だったの? ごめん、でもこれからは先に言ってよ」

B事業部では、以下の対策に取り組むことに決めました。

  • B事業部としての事業目標における顧客への提供価値・目標を明示する
  • それに基づき、関係部門に協力してもらいたい具体的な業務項目を整理する
  • 上記2点について、関係部門への説明会を行なうとともに、フィードバックをもらう
  • 関係部門との定期的な情報交換の場を、下位階層を巻き込んで行なう
  • B事業部で決めた顧客への提供価値・目標の達成度を関係部門に定期的にフィードバックし、情報交換する

「部門間の連携」を良くするためには

「部門間の連携が良くない」という問題点については、全社で交流できるイベントをやろうという対策も必要です。ただ、従業員が、なんのために「部門間の連携」を良くしたいと思っているのかの深層を踏まえると、「顧客」に関する取組みに焦点を当てることで、D社、中でもB事業部の改善は、飛躍的に進みそうです。

図4 「顧客」に焦点を当てる

コンサルタントプロフィール

才木 利恵子

才木 利恵子

HRM革新センター チーフ・コンサルタント

1988年JMAC入社。人材・組織マネジメント領域におけるコンサルティング活動に従事。人材マネジメント領域では、小売業・サービス業を中心に、人事制度改革、人材育成体系づくり、現場・非正規社員の活躍化などを支援。また、JMAC組織文化診断(OPECS)を活用し、多くの製造業・サービス業に対して、組織風土診断・風土改革・マネジャー教育などを支援。
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